JRもしくは東武日光駅を起点・終点とする90kmほどのコースです。特に新緑の季節と紅葉の季節がお勧めです。
奥日光に行くために通過するいろは坂の上りは、特に面白いわけでもなく、クルマも多いので避けたいのですが、輪行を考えた場合には仕方ありません。下り側の第一いろは坂は紅葉の季節には紅葉ががキレイですから、それでよしとすべきでしょう。
前半
http://route.alpslab.jp/watch.rb?id=38f5ed672378daf310453f9e555c6622後半
http://route.alpslab.jp/watch.rb?id=17e583fc7db015bf4024a952177398a9このコースの見どころは、一般車両通行止めになっている小田代が原から中禅寺湖畔の千手が浜までの9kmほどの区間です。この区間だけで一日ボケーっと過ごすのも、かなり贅沢かも知れません。
で、今回は真夏に行ってみようということで、2009年8月16日に行ってみました。
日光駅から早速、ダラダラ登坂となります。
10kmほど行くと、第二いろは坂の起点である馬返しに到着。ここからは一方通行なので、引き返すことは不可となります。しかし、第二いろは坂は平均勾配が6%弱の普通の坂です。400mほど上がります。
そのあと、トンネルを1kmほど走りますが、自転車が通行できる歩道(人が歩いているのを見たことない)が付いていますのでご安心を。歩道に刻まれた無数の自転車の轍の跡が、うす暗い中でまるで亡霊のように浮かび上がります。
標高1270mの中禅寺湖畔を抜けると、竜頭の滝を巻くように登坂します。この滝も紅葉の名所で、その時節にはカメラオヤジが大挙押し寄せ、スゴイ機材でパシパシ撮影に励んでいたりします。
登坂が終わるとともに戦場ヶ原が現れます。紅葉の時期になると、この道路は交通量が膨れ上がり、おまけに狭い片側一車線に停止する連中も。「自分以外は皆、風景。自分以外の連中がどうなろうと、オレは興味ないスィ~」と言わんばかりの傍若無人ぶりは、実は老若を問わないというのが、こういうのを見るとよくわかります。
途中で右折して、標高1460mの光徳牧場を経て、山王峠を目指します。平均勾配7.5%程の坂を300mほど登坂します。ところが・・・。
先日の台風9号の大雨による崩落で、通行止めとなっていて、頑丈なゲートで林道の起点がしっかり封鎖されています。ここから先は全くの自己責任ですが、迷うことなく脇から入りました。峠まで行けるかどうか、確認してみましょう。気をつけなければならないのは、野生の王国と化している道路でクマに出くわすこと位でしょう。
案の定、動物の糞が原形をとどめたまま点在しています。猿の糞がほとんどだと思われます。クマのそれは、見当たりませんでした。これまで、この林道は何度か走っていますが、糞が転がっていた記憶がありません。ほんの一週間で、野生の王国になってしまうんですねぇ。完全に貸切道路と化した山王林道ですが、クマのテリトリーを無音で登坂する自転車というのはキケンなので、ときどき歯笛を鳴らして上ります。それにしても、クルマが一台も来ない、というのは、いいですねぇ。
山王峠に到着すると、登山道から上ってきたハイカー4人と会いました。どうやら静謐の湖、切込湖・刈込湖に行くようです。
少し先、旧・栗山村と日光市の境界まで行ってみました。ここまでの間では崩落現場は無く、全く問題なく走ることができました。ここでバックパックに入れてあったバナナを食べたのですが、強い日射しでホットバナナになり果てていました・・・。
路上に鎮座する猿のうんこに注意しつつ、逆戻りして下ります。戦場ヶ原の国道に出たら右折し、湯滝のレストハウスを目指します。ここは湯川の釣り客や、ハイキング、登山の起点にもなっており、駐車場が有料で400円ほどですが、自転車は無料です。ここでおにぎりを買おうと思ったのですが、正午を前にしてすでに売り切れていました。仕方なく、パンコーナーで三種類ほどパンを購入します。湯滝レストハウスという位ですので、湯滝という滝を見ることができます。
国道を逆戻りして、途中、小田代が原への道に入ります。この道路は、一般車両通行不可で、リモコン動作する鉄のゲートで封鎖されています。東武バスが運行する低公害ハイブリッドバスと、関係車両だけがリモコン操作によりゲートを開けて、通行することができます。自転車はそのコントロールの埒外で、脇から自由に出入りすることができます。
この道は本当に気持ちのよい道です。1993年以前は、一般車も通行出来たそうなのですが、小田代が原をかすめて、中禅寺湖畔に至るこの道が、観光道路として非常に人気が高かったであろうことは容易に想像できます。こんなところにまでガツガツと、クルマが押し寄せていたんですねぇ。
小田代が原の入り口の回転柵(シカ害防止)を回して中に入り、ベンチに腰掛けて先ほど買ったパンを食べます。花畑のような小田代が原の花の季節はほぼ終わりを迎えています。日射しは強いのですが、空気はすでに秋のそれです。奥日光の夏は短い。あっという間に紅葉の季節になってしまうでしょう。
小田代が原の先の弓張峠までわずかに上り、その後、緩めの坂を下って150mほど高度を下げると、中禅寺湖の西岸に出ます。千手が浜という名のこの場所、静かです。東岸側の賑わいとは違う平穏な空気が漂います。ハイブリッドバスでたどり着いた人々や、ハイキングルートを辿ってきた人々が、のんびりした時間を過ごしています。
まるで自転車の貸切道路のようなこの道を走ると、ちょっと濃いサイクリストに出会うことがあります。この日も数名のサイクリストを見かけましたが、ロードバイクは見ませんでした。
千手が浜をあとにして登坂し、もう少しで弓張峠というところで、自転車を押している中年ご夫婦を見かけました。奥様の自転車は両国の老舗、いちかわRiver Oneのミキスト車、旦那さんのは一瞬で判別することはできませんでした。話をお聞きしたかったのですが、ここは峠の先で乗って下ってくるのを待とう、という作戦をとることにしました。
で、軽快に下ってきたご夫婦にお話を伺って、思わず「えーッ!!」と声をあげてしまいました。な、何と旦那さんが74歳、奥様が72歳!!
「いや~、夫婦で色々やったけど、自転車が最後まで残ったね」
「そうねぇ、膝に優しいのよね」
「オレはもうすぐ自転車歴60年だよ」
・・・
「これは丸石エンペラーだよ、40年前の」
「えっ、40年前!?」
「まあ、何年かに一度オーバーホールして、色も自分で塗っちゃったんだよね」
「だから無印なんですか、へぇ~」
「あと、輪行は片倉シルクの22インチ車、むかーしのだけどね」
「えっ、22インチですか?」
「80歳までは走りたいって思ってるんだけどね」
「私たちは自転車に乗りたくて多摩湖サイクリングロードの近くに移り住んじゃったのよね」
・・・
延々、こんな調子で話が盛り上がってしまいました。22インチ輪行車とは、通人的大先輩です。若草色のフラットバー・ランドナーとピンク系のRiver Oneのご夫婦を多摩湖CRで見かけたなら、それは多分、ご本人達です。
貸切状態の道路を、しゃべりながら三人横並びでしばらく走り、今では使われていない駐車場でお喋りすることができました。これはもう、ジテンシャサイコー!!お互い自転車を交えて写真を撮ってお別れしました。奥様は、
「またどこかでお会いしましょう」
と。
ものすごい大先輩に元気をもらってしまったようです。
気分良く第一いろは坂を下ります。第一いろは坂は見事な紅葉を今年も見せてくれるでしょうか。
下界に降りたら一気に暑くなってきたので、隠れ家のような憾満ヶ淵の茶屋で小倉ソフトクリームを食ってから日光駅に戻りました。
評 価→★★★★☆
(大先輩に会えたことを考慮すると5star)