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2013-02-20 [特集] 東京大阪キャノンボール挑戦レポート by Tossy PART 3


 
Tossy  2013-2-20 19:29
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2013-02-20 [特集] 東京大阪キャノンボール挑戦レポート by Tossy PART 3

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【走行編 静岡駅前〜東京日本橋】

静岡駅を過ぎたところで、夜明け前特有の強い眠気に襲われた。
こんなところで事故を起こしては元も子もない。ロングライドでは記録よりも完走よりも無事に帰ることが最優先だ。
サークルK清水楠新田店でレッドブルを買ってその場で飲み干す。カフェインの効果が現れるまで外で5分ほど仮眠し、目が覚めたので再出発。

興津中町交差点のすぐ先で右折し、駿河健康ランドの脇を抜けて太平洋岸自転車道に入る。
空が紺色からオレンジに変わり、長い長い夜がようやく終わる。ライトの電池はギリギリ持ってくれたようだ。



主ルートでは寺尾交差点でバイパスを渡るが、今回はスマル亭先の砂が堆積した区間を避けて西倉沢交差点で反対側へ渡る。
生活道路を抜けるためスピードは出せないが、朝焼けの中の情緒溢れる街並みは心を癒してくれる。由比駅前からは信号の少ない県道370号経由。

蒲原駅を過ぎた先の陸橋で東海道本線を越え、富士由比バイパス側道を通って反対車線の歩道に出る。ここは本来もう一つ先の陸橋を渡るはずだったのだが、間違えて遠回りしてしまった。
新富士川橋を渡り、道の駅富士でトイレ&水補給休憩。
靖国交差点で車道に復帰して東進、江川交差点で左折して吉原駅前までの回避ルートを辿る。



富士山よ、俺は帰ってきたぞ!

沼津までは松並木沿いの単調な道。もう脚が限界に近付いているが、何とか気合で30km/h以上を維持する。
国道1号線に合流すると、バイパスとの戦いは終わりを告げる。あとはもう走りなれた道を走るのみ。
伊豆箱根鉄道をオーバーパスしてしばらくすると、道は緩やかに上り始める。

ここまで400km走った後に現れる最大のボス、箱根越えだ。

ギアをインナーに入れ、ローソンニュー箱根店前で呼吸を整える。自転車乗りは私以外誰もいないようだ。
時計を見る。8時20分ちょうど。
「行くしかない!」そう心の中で唱えてから、目の前に立ちはだかる巨大な壁に向かって走り始めた。
スタートしてすぐ、「おらああぁぁぁぁ!!!」という雄叫びと共に真っ赤な自転車に追い越される。
驚いて顔を見ると、地元在住のキャノンボーラーざく(@two_six_one)さんである。
ローソンニュー箱根店の店内に姿を隠し、私の出発を見ていたらしい。
アミノバイタルプロを頂き道中写真や動画を撮ってもらいながら一緒に上る。


(ざくさん提供)

私は上りが得意だ。とはいえ、さすがに400km走った後の箱根は中々辛い。
サラ脚なら45分程度で上れるところを、59分かけて何とか登頂した。



エコパーキングでトイレを済ませ、芦ノ湖へ。まだ朝と言うことで車も人も少ない。
途中、mutsu-papaさんが箱根ライブカメラのキャプチャを撮っていて下さった。


(mutsu-papaさん提供)

服装までは判別できないが、この時間帯に他に自転車乗りがいるとも思えないので恐らく私だろう。

上り返してからは距離の短い旧道を下ったが、途中から今までにない猛烈な眠気に襲われた。
意識が飛びそうになり、ハンドルを握っていることすら危うい。
だがここは標高800m、気温0度の山中。道端で横になれば仮眠が永眠になりかねない。

まずは下山しなければ。
「右カーブ!次、左へアピン!」
「路面に段差あり!注意しろ!」
と実際に声に出して確認しながら下る。頬を叩いて思いっきり叫んだりもした。周囲に人がいたらどう考えても危ない奴だと思われただろうが、居眠り運転をせずに下るにはこれしか方法が無かった。

何とか下り終えて三枚橋のセブンイレブンに駆け込む。
心身ともに限界が近づいていた。時間的にももう24時間以内の完走は難しい。
iPhoneでフォーラムを開き、震える指でタッチペンを操作し書き込む。
「三枚橋まで下りてきましたが、心身共にかなり消耗しているのでここで大休止を入れようと思います。」
苦渋の決断だった。

24時間を切れないと確信した今、次に目標とすべきは「完走」の二文字。
そのためにまずはきちんと食料を補給することにした。
肉まんとレンジで温めるタイプのラーメンを買い、貪る。
後から見返してみると、藤枝のなか卯から100kmの間まともに固形物を食べていなかった。せいぜい残ったパンをかじっていた程度である。
そんな補給で体力が持つわけがない。恐らく寒さと眠気から正常な判断力を失っていたのだろう。
ラーメンを汁まで飲み干し、モンスターエナジーでカフェインを摂取して日なたでひと眠りする。

15分ぐらいは眠っただろうか?
体中が痛いが、頭は随分すっきりしている。
記録はともかく、とにかく東京を目指そう。軽くストレッチをして、再びサドルに跨って走りだした。
箱根でエネルギーを使い果たした脚はもうまともに回ってくれず、平地でも26km/h程度の巡航が限界だ。
小田原、二宮、大磯を過ぎ海沿いのR134に出る。平塚から湘南大橋を渡ってしばらく走ったところでの信号待ちで、交差点名が目に入る。
「茅ヶ崎駅南口入口」
茅ヶ崎は私の地元だ。
ここで一つの誘惑が生まれる。

(もういいんじゃないのか?)

身体は限界だ。あちこちが痛い。いや、むしろ痛まないところの方が少ないぐらいだ。
もう今更どれだけあがいても24時間は切れない。
仮にここでリタイアしても、みんな賞賛と労いの言葉を掛けてくれるだろうし、ましてや誰も咎めはしないはずだ。
家には風呂も、温かいご飯も、やわらかい布団もある。
簡単だ。フォーラムに「リタイアします」と書き込んで左折するだけでいい。

信号が青に変わる。

私は交差点を直進した。

止める理由はいくらでもあった。
ただ、今さら止めるのは自分に負けた気がして癪だったのだ。
そんなちっぽけな意地のために、ボロボロの身体を引きずって60km走る。
馬鹿馬鹿しいと言われようが、最後までやり遂げてやろうじゃないか!
気が付けば、わずかに残っていた眠気はどこかへ消えていた。

遊行寺の坂を上ってバイパスと合流し、セブンイレブン横浜東俣野町店で最後の休憩。
水をボトルに詰め、オレンジジュースを飲み干す。
しばらく走ったところでこちらに手を振る影が。2chで挑戦を見た方が応援に来てくださっていた。
ウイダーインゼリーと鳩サブレを頂き、ちょっと言葉を交わして再出発。
踏切は南回りの回避ルートで通過し、横浜の街を抜ける。
横浜駅前で出発からちょうど24時間。

R1からR15への抜け方はやや複雑だが、今回は青木橋交差点の歩行者信号で反対車線に渡り、商店街を抜けて15号に入ってみた。他にもみなとみらい経由などいくつかの方法があるが時間帯や交通量などで選択するといいだろう。
川崎まで来ると残り20km余り。あとは事故に気を付けて走るのみ。



ついに東京都までやってきた!心の中で雄たけびを上げる。

気が付けば巡航速度が32km/hまで上がっている。
一度は終わった脚が息を吹き返したようだ。
立会川のあたりでカメラを向けている人がいる。手を振って通り過ぎる。もしかしてmutsu-papaさん?

田町駅前でCAAD8に乗るローディーと目が合う。お出迎えに来て下さったぱしふぃこ(@pa4fik0)さんだった。
銀座の歩行者天国を回避するために芝五丁目交差点を左折して日比谷通りに入る。
都心部らしく渋滞がひどいが、もう記録を狙っていない今は焦ることもない。流れに身を任せてのんびり走り、大手町交差点で右折。頭の中ではエンドロールが流れている。
日本橋交差点で左折して小さな橋を渡る。

2月10日15時35分 ── 出発から25時間45分── 525kmの旅路の終着点、日本国道路元標前到着。

終わりは本当にあっけないものだった。
「やっと終わった」と「もう終わってしまった」が交錯する何とも言えない気持ちに包まれる。
休日の午後、浮足立つ銀座の街にボロボロの自転車乗り。シュールな光景だっただろう。

ぱしふぃこさんとみぞやん(@mizoyan01)さんに出迎えられ、暫し談笑する。



完走記念写真を一枚。
いつの日か、24時間を切って笑顔の写真を撮りたいものだ。


【エピローグ】

日本橋出迎えてくれたお二人と別れた後は、新橋駅から輪行で帰宅した。
車中では改めてフォーラムやTwitterを通して寄せられた応援を読み返し、静かに感動に浸っていた。
社会に何の利益ももたらさない、自己満足の極みとも言えるこのチャレンジを、これだけ多くの人が応援してくれていたのだ。
電車は本当に速い。全てのメッセージを読み終える前に、電車は茅ヶ崎駅に着いていた。

走り終えた直後から全身を襲っていた筋肉痛は四日で抜けた。
なかなか止まらなかった咳も一週間も経たずに治まり、身体はすっかり元通りになった。
しかし、「大阪から東京まで走りきった」という満足感と「24時間以内にゴールできなかった」という悔しさは心の中に残っている。
今回の反省点は休憩時間が長過ぎたり間隔が短過ぎたりする部分があったこと。せっかく水分消費量が少ない冬場なのだから、更に補給回数は減らせたはずだ。そして、もっと早いうちに仮眠をとっておけば猛烈に眠くなることもなかった。
キャノンボール達成には走力が必要だ。これは間違いない。しかし、走力だけでも達成できない。計画性とそれを忠実に実行する力を持っているか否かで明暗が分かれるのだ。

いつか24時間を切ってやる。


【あとがき】

キャノンボールは間違いなく身体に悪い。お金も時間も浪費するし、場合によっては危険ですらある。
しかし、そういった数々のリスクを越えてチャレンジしたくなる魅力があるのも間違いない。
万人に勧められるものではないが、もしチャレンジしてみたいと言う方が現れればそれに対する支援は惜しまないつもりだ。

何かの役に立つかは分からないが、資料として今回使用した機材について。
フレーム:メーカー不明、25年ぐらい前のクロモリフレーム
コンポ:シマノ10速ミックス、フロント46/36T・リア12−27T
ペダル:PD-5700
ホイール:MAVIC アクシウム
タイヤ:コンチネンタル ウルトラゲータースキン23C
サドル:Fizik パヴェCX
バーテープ:Deda バーテープ 上ハン部分にはMTB用スポンジグリップを巻き込んでいた
フロントバッグ:オーストリッチ リベロバッグ
サドルバッグ:TOPEAK エアロウェッジパックM 予備チューブ二本入り
ボトル:カンパニョーロボトル750ml×1
基本的に信頼性重視。パンクを避けるためにやや重いがゲータースキンタイヤを使った。クランクは中速域の使い勝手を優先してシクロクロス用のFC-CX50。これは素晴らしい。30km/hぐらいの速度域でもカセットの美味しい部分を使える。歯数差が少ないので変速時の繋がりもスムーズ。
サドルも乗り心地重視の選択。しかし、終盤はこれでも尻が痛くなった。500kmも走って痛くならない訳が無いと言えばそうだが。
フロントバッグはiPhoneとパナソニックの5400mAhのモバイルバッテリー、ちょっとした補給食入れとして活躍。重いものを入れると垂れ下がりやすいので、触角STIじゃないとタイヤと接触するかもしれない。

その他の資料も置いておく。

ルート前半 http://yahoo.jp/ilXAmg


ルート後半 http://yahoo.jp/H0z_y5


Twitter実況のまとめ http://matome.naver.jp/odai/2136116243176189501

レシート達(コンビニ分のみ)



最後に、支援金を支給してくれたマスター、そして様々な方法で私を応援して下さった全ての方に心からの敬意と深い謝意を表して筆を置くこととする。

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