皆さんこんにちは、サイクルベース名無し管理人です。いつもアンケートへのご協力ありがとうございます。今回のアンケートのお題は「BB30」でした。
ところで「BB30」って何? という方のためにおさらいしておきたいと思います。BB30とは「直径30mmのスピンドル」と「プレスフィットタイプの大径ベアリング」を用いるボトムブラケットの規格の一つで、2000年にキャノンデールによって発表されました(
http://www.bb30standard.com/)。ベアリングは圧入(プレスフィット)されるため、伝統的なBBシェルとは異なり、シェル内にネジ山が切られていません。このためフレームメーカーは製造コストを抑えられると言われています。ライダー側のメリットとしては、30mmという太いスピンドルによる高い剛性感、狭いQファクターによるダイレクトなペダリング感、システム全体の軽量性、等が言及されることが多いようです。
一方デメリットとして、砂や土埃がベアリングに付着してクランクスピンドルを傷つけたり、耐水性も悪く、ゆえに錆にも強くはなく、高い頻度でのメンテナンスが要求されている点。また、クランクの脱着の際にハンマーで叩かざるをえないことが多く、BBシェル部やベアリングへのダメージが懸念される点。定期的なベアリングの交換作業自体もフレームへのダメージに繋がる点等が挙げられるようです。
しかし最大のネガティブは何と言っても「BB部からカチカチと異音が聞こえる」というものでしょう。ネットを見ているとこの報告は非常に多い印象があり、しかもその異音はなかなか解消が難しいものであるように見えます。
この異音、カチカチというクリック音(clicking)から、ギシギシ、キーキーという大きな音(creaking, squaling)まで様々な種類があるようですが、「最初の100kmから200kmくらいは問題なく乗れていたが、ある日突然カチカチ言い出した。ヒルクライムしたら鳴り出した。立ち漕ぎしたら鳴り出した」というほぼ共通の傾向が見られます。
このように、何か先進的な感じはするものの、気難しそうな感じもするBB30。実際どれくらいの方が使っている、あるいは使ったことがあるのでしょうか。また、この有名な「BB30異音問題」はどのくらいの確率で発生するものなのでしょうか。そういうことをこのアンケートで知りたいと思ったのでした。
それでは結果を見ていきたいと思います。なお、明らかに論理的に矛盾した回答についてはアクセスログを精査の上、除去した上で再集計しました。
(クリックで拡大します) | BB30の普及率:5人に1人が使用経験あり
最初の質問でまずBB30の普及率をお聞きしました。約25%の方が使用経験ありと回答されています。非常に多い、とは言えないものの、決して少ないとも言えない数字だと思います。Wiggleなどが扱うBoardmanバイクなど、比較的買いやすい価格の完成車にもBB30が搭載されていることも普及理由の一つでしょうか。なお、この設問では細かい聞き方はしませんでしたが、BB30の拡張規格であるPF30等もBB30に含むものという前提でお聞きしました。
先にも述べましたが、BB30規格はメーカー側にとってフレームの製造コストを下げられるメリットがあるせいか、廉価版の自転車にも積極的に投入されているようです。ただ、前述の「BB30異音問題」が原因で、今後BB30を搭載する完成車は減ってくるような気がします。メーカー・ショップ共に、サポートコストを考えるとこのまま売り続けるのは難しい規格かもしれません。
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(クリックで拡大します) | BB30でのトラブル:約30%と高い発生率
次にBB30使用経験者の方に異音等のトラブルが発生したかどうかをお聞きしました。Q1で使用経験ありと回答された方は135人、Q2の回答者は137人ですが分析に影響のない誤差です。約三割の方がトラブルを経験されています。多いですね。非常に多いと思います。これは、一種の故障と考えるとリコールが必要な多さではないでしょうか。BB30という規格に、設計上の瑕疵があるか、あるいはBB30規格が要求する高い精度にメーカーが応えられていないことを意味しているように思えます。
ところでBB30で異音等の問題を経験された方。その後、どうされましたか。あの手この手で異音と決別できたのでしょうか。どのようにして解決できたのでしょうか。それともBB30-BSAコンバーター等で、従来側のBBシステムに戻したのでしょうか。サイクルベース名無しに最近新設されたCBN Bike Forumsでも、この問題を扱うスレッドがあります。ぜひ皆様の体験談を共有していただけると幸いです。 |
(クリックで拡大します) | 異音の原因:クランクは関係なさそう?
しかしBB30規格で多く報告されている「異音」の原因は何処にあるのでしょうか。フレーム本体(BBシェル)の精度が出ていないからでしょうか。クランクが良くないからでしょうか。ベアリング等のスモールパーツが良くないのでしょうか。組み付けが良くないのでしょうか。現在でも「これが原因だ!」という統一的見解は存在しないようですが、BB30規格のクランクを製造しているメーカーは多くはないので、アンケートの質問に向いていると思い、使用クランクについてお伺いしてみました。
但し、アンケート開始前から「FSAがトップワンになるであろう」という予測を立てていました。理由はGossamarやSL-KといったFSA製のBB30クランクを搭載した完成車が非常に多い印象があったからです。この設問の結果から読み取るべきなのは、不良発生確率の高いBB30クランクメーカーはどれかということではなく、そもそもBB30の異音はクランクの良し悪しに関係があるのか? ということです。どのメーカーのクランクでもまんべんなく異音絡みのトラブルが発生しているのであれば、クランクの銘柄・モデルはBB30異音の直接の原因ではないという仮説を導き出すことができます。
結果を見ると、FSAは予想通りダントツですが、BB30規格提唱者のキャノンデールがリリースしているクランクであれ、FSAに次いで高いBB30クランクシェアを握っていると見られるSRAM製のクランクであれ、同様にトラブルが発生していることがわかります。左の棒グラフは恐らくBB30クランクのシェアそのままであり、BB30不良発生率とは関係がないような気がします。左の表から、FSA製のBB30クランクは外れが多い、という結論を導き出すことはできません。ちなみに今回のアンケートでのBB30のトラブル経験者は43人、このQ3の回答者は58人と、非常に大きな誤差が出てしまいました。このことからも、特定のメーカーのクランクが良くないという結論を出すことはできません。しかし、「どのメーカーのクランクを使っていても問題は発生する」ということはまず間違いないようです。クランクのメーカーは、異音とはあまり関係がない、ということです。 |
(クリックで拡大します) | BB30はどれだけ支持されているか
最後に、現在BB30を使っている、という124人の方に、今後もBB30クランクを選ぶかどうかをお聞きしたところ、なんと146人もの方から回答をいただきましたどうもありがとうございます、ってココ喜ぶところではないですね。22人も多いです。ロボットが回答していたり、特定の設問だけ回答される方もいるので、論理分岐を使えない当サイトのナンチャッテアンケートシステムではこういうことがよく起こります。
でもまあ、大体の傾向がわかればそれで良いのです。「今後も積極的にBB30を選ぶという人」はわずか10%に留まりました。BB30はあまり人気がない。それははっきりわかりました。 |
BB30がいくら高剛性かつ軽量で、Qファクターが狭いという魅力があっても、カチカチという異音に耐えてまで、あるいはいつ異音が発生するかわからないリスクを抱えてまで積極的に使いたいとは思わない。そういうユーザーが多いということでしょうか。
私自身はBB30フレームを所有していませんが、知人にBB30の使用者がいます。その方も異音問題に直面し、ある日私の家にバイクが運ばれてきました。異音を解消すべく様々な処置を試みましたが、結局問題は解決していません。その時私はBB30に関する情報をネットで探しまくったのですが、「原因は間違いなくこれである」という見解や、「この対策を施せば異音は完全に解消する」という決定的な解決策を見つけることができませんでした。
BB30規格が提唱されてから10年以上が経過し、私の知る限りBB30の異音問題は少なくとも2006年頃には既に北米で報告されています。すると、もう六年も経っているのに、なぜヘンな音がするのかわからない、どうしたら治るのかもわからない、という状況が続いていることになります。ほとんどの人が、最終的にはメーカーにフレームを交換してもらったり、交換を拒否されたり、アダプターを使ってBSAやITA規格の伝統的なBBに戻したりしています。よく考えると不思議な状況です。
このBB30異音問題、多くの方が苦労した・あるいは現に苦労されていると思います。「私はこのようにしてBB30異音問題を克服した」という報告を、CBN Bike Forumsの
このスレッドでお待ちしています。皆様の貴重な体験談をお寄せ下さい。
それでは皆様、今回のアンケートへのご参加、どうもありがとうございました。重ねてお礼を申し上げます。
[管理人@サイクルベース名無し]