皆さんこんにちは! 第50回アンケートへのご協力ありがとうございました。今回のテーマは「ツール(工具)」でした。アンケートテーマをご提案いただいたGrasshoppererさん、また、選択肢作成にご協力いただいた皆様、どうもありがとうございました。とても有意義なアンケートになったと思います!
設問は以下の二つでした。
1. 以下の中で、あなたがサイクリング時に携帯しているものを教えてください。携帯ツールに付属しているものでも構いません(複数選択)
2. 以下の中で、あなたの自宅にある工具を教えてください(複数選択)
早速、結果を見てみましょう。
以下の中で、あなたがサイクリング時に携帯しているものを教えてください。携帯ツールに付属しているものでも構いません(複数選択) | タイヤレバー | 93 % (479) | チューブ | 87 % (447) | ヘックスレンチ(アーレンキー) | 86 % (440) | ポンプ(空気入れ) | 85 % (437) | パンク修理用パッチ | 68 % (348) | プラスドライバー | 61 % (312) | マイナスドライバー | 44 % (227) | ミッシングリンク(KMC以外でも可) | 34 % (176) | チェーンカッター | 33 % (168) | Co2ボンベ | 32 % (166) | バルブ変換アダプター | 24 % (125) | ニップル回し | 17 % (86) | トルクスレンチ(T25等) | 15 % (75) | ガムテープ | 12 % (60) | タイヤブート | 11 % (54) | 予備タイヤ(TU) | 7 % (37) | ペンチ | 5 % (25) | シーラント | 3 % (17) | 予備タイヤ(WO, TL) | 2 % (10) | ペダルレンチ | 1 % (7) | チェーンウィップ | 1 % (3) | その他 | 15 % (77) | 投票数: 3776 投票者数: 514 | | まず出先に持って行くツール類を見て行きましょう。このアンケートの結果で何がわかるかというと、多くのサイクリストが、不測の事態に対して、どの程度のリスク意識を持って備えをしているのかということです。メカトラブルのリスクに対して準備がゼロで良いわけはないですし、逆に、完璧な準備をして出かけるとなるとカンパニョーロ大道具を背中に背負ってでかけるハメになるので、どのあたりの装備が現実的なのだろう、ということがわかると思います。
この結果を見ると、まずパンク修理に必要な工具が上位にきているのがわかります。それと、自転車に多く使われるヘックスボルト(六角ボルト)を回せる携帯工具。これだけは最低限持っておく必要があるのは間違いないでしょう。
ドライバー類はディレイラーの調整で使うことが多いと思います。変速の調子が悪くなっても走れることは走れるので、あえて出先では調整しない、という判断をする人はこれを持たない。という姿勢も読み取れます。
次に、ミッシングリンクとチェーンカッターが来ています。チェーンが切れる、という現象は、発生頻度は非常に少ないと思いますが、発生してしまえば走行が不能になる大きいトラブルです。それを考えると、チェーン切れ対策をしないのは考えられない、という人もいると思います。気温35度の日に、半径10km以内に水の自動販売機がない場所でチェーンが切れたら。山道でチェーンが切れたら。ツーリング中に切れたら。そう考えると、せめて軽量なミッシングリンク系パーツを持っておいたほうが良いような気もします。重いチェーン切り、またはそれが付属する携帯ツールを持つかどうかは悩ましいところですね。
出先にどんなツールを持って行くか? という問いには、唯一の正解はないと思います。ロードなのか、MTBなのか。都市部を走るのか、山道を走るのか。走行予定距離は20kmなのか、80kmなのか、160kmなのか、200kmなのか。何日間、帰宅しないのか。背中のポケットに入れておくのは、2000円なのか、20000円なのか。等々、自転車を楽しむスタイル・パターンによって最適解が変わってくると思います。とはいえ、最低限必要な工具は何か、初心者は何から揃えたら良いのか、このアンケートから参考になることは非常に多いのではないでしょうか。
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以下の中で、あなたの自宅にある工具を教えてください(複数選択) | ペダルレンチ | 82 % (337) | ヤスリ | 79 % (327) | ワイヤーカッター | 76 % (314) | クランク外し工具 | 67 % (277) | ロックリング回し | 65 % (270) | BB取付工具 | 51 % (212) | ハブスパナ | 51 % (211) | トルクレンチ | 45 % (187) | パイプカッター | 43 % (177) | レベルゲージ(水平器) | 39 % (161) | フレ取り台 | 24 % (99) | センターゲージ | 20 % (84) | チェーンウィップ | 20 % (84) | サスペンションポンプ | 15 % (61) | タップ+ダイス(汎用) | 12 % (48) | スポークテンションメーター | 10 % (43) | ヘッドセットプレス | 7 % (29) | マスターリンクプライヤー | 7 % (28) | エンド修正工具 | 6 % (24) | クラウンレースインストーラー | 5 % (22) | ヘッドセットリムーバー | 5 % (21) | クラウンレースリムーバー | 5 % (19) | スターナットセッター | 4 % (17) | ディレイラー直付けゲージ | 2 % (8) | スポークネジ切り機 | 2 % (8) | BBタップツール | 2 % (7) | BBフェイシングツール | 1 % (6) | BB30圧入ツール | 1 % (5) | クラウンレースフェイシングツール | 1 % (3) | スポークカッティングマシーン | 0 % (2) | シートチューブリーマー | 0 % (1) | ヘッドチューブリーマー | 0 % (1) | その他 | 36 % (148) | 投票数: 3241 投票者数: 413 | | 次に皆さんが自宅で所有している工具を見て行きましょう。「どんな工具を持っているか」は、見方を変えれば、「どんな作業を自分で行っているか・行えるか」を反映しています。また、自宅で行う作業は「相対的に必要性・頻度が高い、難易度が低い」ことを意味しているとも言えます。
そう考えると、ペダルを自分に合ったものに交換したり、ワイヤーを定期的に交換したりといった作業に必要な工具が上位に来ているのは、なるほどと納得させられますね。概ね、表の下に行けば行くほど頻度が低く、難易度の高い作業になっているように思います。
スプロケットやクランクの交換作業は、かなり多くの皆さんが自宅でされていることが伺えます。コンポの乗せ換え程度なら自分でやる、という方が多いのでしょう。
それ以前の段階、すなわちフレームにヘッドワンを圧入したり、圧入面をきれいにさらったり(フェイシング)、ネジ山をきれいに立てなおしたり(タップ)といった作業は、かなりマニアックな領域にあることも伺えます。
そもそも「なぜメンテナンスの作業を自分で行う必要があるの?」という方もいらっしゃると思います。そこで、著名な自転車メンテナンス本を手がけているアメリカのメカニック、Lennard Zinn氏の言葉を紹介したいと思います。
「自分のマウンテンバイクを自分でメンテナンスしたくなる理由は数多くあります。まず、正しい作業を行えるのなら、他の誰かに依頼するより安く済みます。これは生活のために自転車に乗ったり、明確なサポート手段を持たないライダーにとって間違いなく重要な要素です。そうした人々にとって自分でメンテナンスすることは必要不可欠です。 収入が上昇し、自分の自転車をメンテナンスするための必要な時間が減っていくにつれ、このことはあまり意味がなくなってきます。もしあなたが非常に良い給料を得ていて、かつ自由になる時間が限られているなら、自分で自分の自転車をメンテナンスすることにはあまり経済的な有効性がないかもしれません。しかしそれでも、単にお金を節約すること以外の点で、自分で自転車をメンテナンスすることに楽しさを見いだすことがあるかもしれません。定期的に自転車を持って行ける信頼できるメカニックがいない限り、自分の自転車のスムーズな動きと清潔さをあなた自身と同じくらい気遣ってくれる人は他にいません。また、地元のショップが繁忙期に入ると、ショップよりも早く自分で修理できるようにならないといけない状況に陥るかもしれません。トレイルで発生するメカの不具合を自分で修正するスキルを身につけておく必要もあるかもしれません。 不具合というものは必ず発生するものです。世界で最も優秀なメカニックに自転車を診てもらっていても、です。ライドを終えるまで持ちこたえてくれるかどうかが自分で判断できないパーツや、それが難しそうな場合は自分で修理することができないパーツがあると、ライドの愉しみが奪われてしまうのです。」("Zen and the Art of Mountain Bike Maintenance" 5th Edition by Lennard Zinn, Introduction "Why do it yourself?" より)
つまり、単に安上がりだから、時間がかからないから、ではないのです。楽しく乗りつづけるためには、ある程度は自分でできたほうがいい、ということだと思います。また、自分の自転車のことをいちばんわかっているのは、自分以外の誰かではなく、自分自身であったほうがいい、ということでしょう。
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「自転車に乗って、楽しむ」マインドと、「自転車を調整したり、組み立てる」マインドは、非常に異なっています。しかし、両方とも楽しめると、「自転車の楽しみ」が広がり、「自転車の世界」を深く探検できるのは間違いないと思います。両方楽しめたほうがお得です。また、既に数々のメンテナンスを自分で行っている皆さんがご存知のように、メカいじりはそれ自体の楽しさ・面白さがあります。自転車の機構・仕組みの理解も広がり、自分がその全てを把握しているマシンに乗ることで得られる絶大な安心感・充実感は、何物にも換えられないものがあるのではないでしょうか。
それでは皆様、今回もアンケートへのご協力ありがとうございました!
[管理人@サイクルベース名無し]