皆さんこんにちは!
今年最初のアンケートへのご協力ありがとうございました。
今回のテーマは「エアロ効果」。皆さんの投票結果をベースに、空気抵抗全般について一緒に考えをめぐらせみましょう!
Q1. あなたは「エアロ効果」に興味がありますか?まず最初に、今回のアンケート結果の意味について確認です。
これは、「主観的にはどう思いますか?」ということですね。
皆さんがどれくらい「エアロ効果」に興味があるのか、空気抵抗軽減効果を狙った(とされる)パーツを、どの程度信用しているのか、どのパーツが「実際に効果がある」と思っているのか・・・
一定の科学的根拠を基に回答された方々もいると思いますし、反対に、理屈は深く考えたことがないけれど実際に使ってみてこう思った、という方々、両方の回答結果が混じっていると思います。まず、それを念頭に置かれてくださいませ。
そのため、今回のアンケート結果はそれ自体が意味のある数値というわけではなくて、「エアロ効果」について考えるにあたって、非常に有益な「叩き台」になるということが言えると思います。
そもそも皆さんは「エアロ効果」に興味があるのだろうか、ということですが・・・
約3割の皆さんが、「エアロ効果」にはそれほど興味がないようです。興味がない理由はきっと様々でしょう。空気抵抗のことはよくわかっているけど、普段、時速18km/hでゆっくりポタリングするのがメインだから、DHバイクで下るのがメインだから、そもそも「エアロ効果」なんて都市伝説みたいなものだと思っているから・・・でも、興味を持つのは無料なので、今回はちょっとだけ一緒に興味を持ってみましょう。
Q2. パーツの形状によって空気抵抗はどの程度軽減されると思いますか?世の中には「エアロ効果」を謳った製品が数多く存在しますが、61%の方々がそうした効果に対して概ね肯定的で、27%の方々が、どちらかというと懐疑的。
懐疑的になっても、おかしくないんですよね。たとえば、エアロ効果を謳ったシューズカバー。これ「だけ」を着用して、たとえばフラットバーハンドルのMTBに乗ってもナンセンスなわけです。でも、雑誌やインターネット上の様々なメディアは、「とにかくエアロだからいいよ!」という不正確なメッセージを発信することがあるし、それに「踊らされた」人々がわけもわからずエアログッズを買ってしまう・・・そうした風潮に対して「それは違うよ」という人々が、27%の懐疑派の中には結構いるんじゃないかな、と思ったりもしますが、どうでしょう。
結局、「エアロ効果」について、私たち全員が正確な理解を持っているわけではないし、「エアロ効果」自体はちゃんと有効なものっぽいけど、きちんと考えて適用しないと、あんまり効果ないよ、と思っている方が多いんじゃないか。上の二つの設問の結果からは、そういう「悩めるサイクリストたち」の姿が浮かび上がってきませんか。
Q3. あなたが高く評価するエアロパーツはどれですか?(複数選択可)そんな悩める皆さんが、でもとりあえず、これは効くヨ! と答えてくれたのが、以下の結果なわけです。
これは、単純に考えて、「効果の大きい順」に並んでいると言えると思います。一つ一つ見ていきましょうか。
DHバー今回、最も高く評価されたアイテムがこれ。「最も効果が大きい」=単体での効果が大きい、と解釈すれば、最もコストパフォーマンスが良いエアロ効果アイテムであるとも言えるでしょう。
実際、DHバーを使用すると平均時速が2km/hとか3km/hも上がった、という話はよく耳にします。原理的には、ライダーの前方投影面積が小さくなる、ということだと思いますが、前方投影面積の削減のみを考えれば、それは別にDHバー特有の利点ではないですよね(下ハン持つのとどう違うの、ということです)。
DHバー特有の利点は、「ロードバイクの科学」によれば、突き出た拳が空気を切り裂いて横に逃すところにもあるそうです(腰の周囲に空気が集まらないようにする)。また、ハンドル一般の話として、ハンドル位置の高低よりも横幅の大小のほうが、空気抵抗には影響があるんだそうです。
ディープリムホイールこれも費用対効果が良さそうです。ところで、なぜ「ディープ」だと良いのか? これは恐らく、「ディープだから良い」わけではなく、ディープリムだとリムを流線型に近い形状に仕上げることができ(流線型だと、後方に逃げた空気の渦が減る)、かつ、リムハイトが高い=リム剛性が高まる=少ないスポークで組める=空気をかき乱すスポークの数を減らせる=故にエアロ効果がある、ということなのでしょう。また、「ディープ故に良い」(リムハイトの「高さ」それ自体が良い)という点もあるらしく、それは横風を受けたときに抵抗が減るからだそうです。
以上は、私が「ロードバイクの科学」を読んで思った「ディープリムホイールのエアロ効果」ですが(p.26-30)、もし「その解釈は違うよ」という方がおられたら、ぜひ突っ込みをお願いします。それにしても、「ロードバイクの科学」は何度読んでもおもしろいですね。「なんですかその本?」という方は、
ここからレビューを読んでみてください。
ディスクホイールディスクホイールがなぜ空力的に有利か? それは「スポークが外部に晒されていないから」のようですね。スポークはやっぱり空気をかき乱して、渦をつくり、抵抗を生み出してしまう。だから、スポークは少なければ少ないほど良い。可能なら、見えないほうが良い・・・というわけで、ディスク。でも横風でハンドルが取られて危ないので、前輪では使用しない、というわけですよね。
エアロスポークスポークは少ないほうが良い。さらに、エアロ形状だともっと良い。ノーマルスポークとエアロスポークの関係は、クラシックリムとディープリムの関係に似ていますね。「ロードバイクの科学」によると、むかしはブレード形状が主流だったものの、現在は楕円形のものが多いそうです。そのほうが、空気の渦ができにくいのかな?
少スポーク数のホイールこれは上でも述べましたが、スポーク数は少なければ少ないほど空力的には有利。科学的な根拠は、空気の攪拌の結果発生する渦が少ないので、抵抗も減る、ということでしょうか。そして、スポーク数を減らすと、スポーク一本あたりにかかる負担が大きくなりますから、リムに強度が必要になる。そのため、リムは必然的にハイトが高くなってくる、というわけです。Open Proのようなハイトの低いクラシックリムで少スポーク組みをやるのは剛性面で危ない場合もあるそうなので、くれぐれも慎重に・・・
TT用ヘルメットグランツールでヘルメットの着用が義務付けられる前から、タイムトライアルでは専用の流線型ヘルメットが使用されていましたよね。形状を考えてみると、Zipp 404 のリムや、楕円形エアロスポークと似ていますね。涙滴形状に近い流線型だと、空気を上手に逃してやれるんでしょう。ちなみに、ノーマルヘルメットにも整流効果があるみたいですね。
エアロフレーム順位が低いのは、費用対効果的な順位が高くないということなのでしょう。「エアロ効果を体感したい!」という方が、最初に導入を検討すべきなのは、エアロフレームではない、という意味だと思います。ただし、「チリも積もれば山となる」的な発想で(バイクの軽量化と同じ発想ですね)、総合的に高いエアロ効果を得たいと考えている人は、フレームにも当然こだわるべきでしょう。最近では、TTバイクではないけれど、エアロ形状のフレームも出ていますよね(サーベロなんか有名ですよね)。また、エアロ形状のタイムトライアルバイクが、ケーブルを内蔵するような構造になっているのは、決して「やりすぎ」ではないと思います。むしろ、ケーブルを露出させるような構造のTTフレームは、設計の意図がよくわからない、ということになると思いますが、どうでしょうか。
エアロ形状のボトルトライアスロンの人はよく使っているのではないでしょうか。あるいは、TTバイクで、単独で速く走行することを目指す人。最優先アイテムではないけれど、逆に、エアロフレームにこだわるような人なら、ボトルが普通の丸い筒型だともったいないのかもしれません。
シューズカバーバックルやストラップなど、シューズ表面のゴテゴテが空気を妙な具合に攪拌して抵抗の渦をつくりだす、それを防ぐことを目的としたアイテムですよね。費用対効果は決して高くはないのでしょう。なら、無視できるアイテムかというと、そうでもないのだと思います。高価なTTフレームに乗っていながら、フラットペダルでシューズが靴紐のスニーカー、なんていうのは、お金の使い方が間違っているということになります。
まとめ:様々なナンセンスさて、上記の様々な点を考慮すると、以下のようなケースはちょっとした「ナンセンス」に分類できるのかもしれません。
■DHバーを使用しているが、手のひらを「ぱー」のカタチにして乗っている(そんな奴いねーだろ!)
■DHバーを使用しているが、腰に巻いたウエストバッグが横に垂れている(たまに見かけます)
■DHバーを使用しているが、腰に浮き袋をはめている(そんな奴いねーだろ!)
■GIANTの最新TTバイクに乗っているが、ウィンドブレーカー上下を着ている(そんな奴いねーだろ!)
■10万円のカーボンディープリムと、10万円の「奇跡のシューズカバー」とで悩んで、後者を買った(即クーリングオフすべし!)
■横幅が肩よりもなが~いフラットバーのバイクに、Zipp 404とかEaston EC90 AeroとかBora Oneを装着する(「Boraケー」ならOKだけど)
ま、そんな人ほとんどいないでしょうけどね(笑)
また、空気抵抗の軽減効果は、速度域で相当変わってくると言われます。
世間では、「時速35km/h以上で効果がわかる」とか、「いや40km/h以上じゃないとわからない」とか、「50km/hより上の世界ではじめてわかる」とか、いろいろなことが言われます。
でも、いろいろな感想があっていいと思います。35km/hから60km/hまで、2km/h刻みで、私たちが容易に参照可能な風洞実験結果のデータが、全ての製品について存在しているわけではないのですから、皆さんがどのような場所でどんなふうに乗っているときに、特定のディープリムホイールが良いと思ったのか、あるいはたいしたことがないと思ったのか、という主観的・定性的なデータは、本当に有意義なんです。私たち「素人のサイクリスト」がレビューを書く意義の一つが、そこにあると思うんですね。
メディアが言っていることを、何の反省もなしに鵜呑みにすると「耳年増」になってしまいます。私たちに必要なのは、他人が言っていることを盲信することではなく、科学的に考えたり、あるいは自分の感覚を信じて、それを適切な言葉に置き換える努力をすることではないでしょうか。
ところで。やむなく単独で走行しているという方も多いと思いますが(自転車に乗る友達がいないから、トライアスロン選手だから、TTスペシャリストだから、等々で)、集団走行って楽しいんですよ。恐らく、上にあげたどのアイテムを買うよりも、友人知人と「列車」を組んで、先頭交代をしながら走ったほうが、効果的なんじゃないでしょうか。集団走行未経験の方には、特にオススメしたいです。集団、といっても、二人からでもだいぶ違うと思いますよ。ぜひやってみてください!
さて、今回のミニアンケートの結果は如何でしたか。
近日中にまたアンケートを実施しますので、ご期待ください。
それでは皆様、今回もご協力ありがとうございました!