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馬鹿野郎!!
みんなトレーニングに没頭するあまり大切なものを忘れていないか?
確かに自転車競技はトレーニングは大切だ。トレーニングは決して裏切らない。
世のほとんどの草レースは、レースなんか行わずに、その年の走行距離で着順をつけてもいいくらいだ。
しかし、自転車と私生活はまさに車の両輪、自転車の前輪と後輪なんだよ!!
今から俺が語ることをよく聞いて、自分の生活を振り返ってみろ!そして、答え合わせをしろ!!
それは、俺がヒルクライムレースに出始めたころの話だ。
俺はショップチームの練習会に参加し、日々雄大に広がる山に戦いを挑む日々を送っていた。
当時の俺には、師と仰ぐ人物がいた。
ひでおさんといって、めがねをかけていて平均的日本人的な風貌で、日ごろはどちらかといえば気弱といえるほどに腰が低いのに、
ひとたび山を目の前にすると野生のオーラを全身から放ち、見る者を圧倒するほどの存在感で圧倒的な走りを皆に見せつけるのだ。
デヤァァァーーー!!!
ひでおさんの気合が板屋の木陰にこだまする。
それとともに縦方向に力強く盛り上がった大腿四頭筋からほとばしる鮮烈なダンシングが、赤い水玉をまとった背中を躍動感あふれる動きで突き上げている。
俺は強い。そして、何人たりとも俺の前に出ることは許さない―――その背中はそう語っているようだった。
この背中に追いつきたい。そして、叶うならば、前に出たい。その先には、どんな世界が広がっているのだろうか?
ヌォォォォォー!!
俺の野球で鍛え抜かれた大胸筋が力強くCAAD8を揺さぶる。
170cm62kg、体脂肪率15%の筋肉質な俺の体は、野球をするにはいいが、自転車、とくにヒルクライムをするにはまだまだ無駄な肉が多すぎた。
筋肉の量だけなら負けていないであろう、俺の太腿がありったけの力を絞り出してひでおさんに追いすがるが、
ひとつ、ふたつ―――カーブを抜けるごとにその背中は遠ざかっていった。
このままではひでおさんに勝つことは―――いや、追いつくことすらできない―――
俺は、ひでおさんに追いつき追い越すため、トレーニングメニューを組み直した。
まずは平日は毎日2時間の早朝トレーニング、土日祝日は昼食をはさんで午前午後の二回トレーニングすることにした。
そして、2年の年月が流れた。
確かに俺の体は2年前と比べると絞られ、ヒルクライムに不必要な肉は落ち、さらにパワーも上がっている。
しかし、ひでおさんはさらに速くなり、なんと差はさらに開いていたのだ。
いったい何が違うんだ―――さらにトレーニングを増やし、さらに追い込んだトレーニングをしないと駄目なのか―――
しかしこれ以上は、時間、肉体、精神ともに無理だ―――
ある日、練習後の山頂で、ひでおさんは俺にこう語りかけた。
ひでおさん「つよし君、最近頑張ってるみたいだね。でも、そんなにトレーニングを詰め込んでつらくないかい?」
俺「つらいです・・・でもひでおさんのようにヒルクライムが強くなるためには、もっと努力しないと・・・」
ひでおさん「僕ははトレーニングは週に3日しかしていないよ。他の日は仕事も頑張るし、夜は行きつけの店でピアノを弾くこともある。お遊びだけどね。
お遊びといえば、この赤い水玉ジャージ。レースに出れば、僕より速い人なんてゴマンいるよね。それでも、シャレだよ、シャレ。
自転車も仕事も人生も、やりたいことやったもん勝ち。楽しんだもん勝ちなのさ。
どうかな、つよし君に足りないのはトレーニングに対する情熱でも練習量でも強度でもなくて、私生活のバランスと精神的な充実なんじゃないかな」
まさに青天の霹靂、俺は目からうろこが落ちた思いだった。
俺はこの二年を振り返った。
振り返ればトレーニングに次ぐトレーニングで、このコースのタイムが向上したこと以外には何一つ楽しい思い出がない。
もっと社会に出て、もっと人と関わって、遊びも自転車以外の趣味も色々な体験をすることによる精神的な充実が足りなかったのだ。
俺は、幼いころ、夏休みの宿題をおじいちゃんに尋ねていた時のことを思い出した。
俺「じぃじー、『井の中の蛙、大海を知らず』って、どういう意味?」
おじいちゃん「狭いところにばかりいると、広い世界のことはわからない、という意味じゃよ。
『山の中のクライマー、世間の楽しさを知らず』とも言うな。
つよしも大きくなったら、広い世界に飛び出して、大きくはばたかなければならんぞ」
そうなのだ。
そしてその追い詰められた精神が心を狭くし、追いつめ、自転車選手としてはもちろんひとりの人間として成長に悪い影響を与えていたのである。
俺に必要だったのは心のゆとりによる精神的な充実だったのだ。
ひでおさん「つよし君、実は来月から、僕は東京に転勤することになった。
だから、これを君に託そうと思う」
俺「こ、これは!!ひでおさんがいつも着ていたマイヨグランペールと・・・
『図説 自転車少女』じゃないか―――!!」
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要点をまとめます。
速い人が着てレースを走れば、それはこれほどかっこいいものはない。
しかし私のような着順に絡めない自転車乗りでも、ヒルクライムに対する情熱さえあれば、
着て楽しんでいいと思うのである。
ファッションアイテムとあなどるなかれ。
生地はとてもいいものと思われる。裏地のタグにはmade in italyの文字がまばゆく光る。
肌触り、着て軽い感じ、速乾性、防臭性、すべて最高である。
ファスナーは途中までしかなく、タイトなデザインと相まって若干脱ぎ着がしづらい。
しかし全面ファスナーにしないことで、フィット感と耐久性の向上をねらったと推測する。
(全面ファスナーのウェアは伸びたり型崩れしたりしやすいそうだ)
どちらかというとタイトなデザインで、
S:胸囲90-93、ウエスト:84-87、ヒップ:93-96
M:胸囲94-97、ウエスト:88-91、ヒップ:97-100
身長170cm、体重60kg、チェスト91cm、ウエスト73cm、リーチ174cmの私はサイズSを選んだが
横幅はジャストフィット、しかし縦が少々短い。
お約束のポーズをとると、おへそがちらりしてしまう。
まぁこのあたりはイタリア人と日本人の平均的な体形の差だろうか。
Mサイズだったら、おへそは出ないだろうが、横がぶかぶかで、せっかくのレースフィットが台無しだっただろうな・・・
とにかく、完全にレースを前提としたデザインである。
実は、長いこと「赤い水玉ジャージが欲しい!」と思っていて、
ショップに行っては探し、インターネットで検索し、という日々を送っていたのだが、なかなか見つからなかった。
この商品の名称には「赤い水玉」も「マイヨグランペール」も入っていなかったからであろう。
購入に際して、最後まで引っかかったのは「BIANCHI」のロゴである。
言うまでもなく私はBIANCHI乗りではない。次の新車はBIANCHIにしなければならないのだろうか。
しかし結局、「他にない」という理由で、購入を決意したのである。
それから約1年後、ルコックからツールドフランスの公式ジャージが発売されているのを知るのであるが・・・
価格評価→★★★☆☆(お高いけど)
評 価→★★★☆☆(この柄が欲しかったから)