栄枯盛衰 ~おごれるマッチョは久しからず。おごれる筋肉も久しからず~momochi_gyugund 2014-1-2 21:46 4846 hits momochi_gyugundさんのすべての写真 フォトギャラリーTOP 馬鹿野郎! 「自転車乗りに筋トレは不要」だの「筋肉に対する愛情が不足している」だの、 どっちも同じ自転車乗りなのにどうしてそんなにいがみ合っているんだ! 原発しかり、TPPしかり! 同族を2つに分けていがみ合わせるのは、もっと大きな問題から目をそらさせ不満のはけ口とする 為政者の常套手段であることを、俺たちはいい加減歴史から学ばなければならないんだよ! こんなことを言っても「それとこれとは話が別」「そんなの関係ねぇ」と切り捨てられるのがおちだろうから、 どうやらここは俺がバーベルを上げようとして筋肉がつって1週間痛みに悶絶したあの話を語らなければならない流れのようだな・・・ あれは例年より早い木枯らしが吹いた11月下旬、職場の忘年会での出来事だった。 何かにつけて俺をライバル視している数学教師かずおが俺を煽る音頭がこだまする。 かずお「n杯飲めて~n+1杯飲めないわけがない! つよしのちょっといいとこ見てみたい! そ~れ、帰納法!帰納法!」 わけのわからない音頭に意識朦朧となった俺はついつい飲み過ぎてしまい、 日ごろから運動を欠かさない健康優良児にもかかわらずなぜか病弱な俺は、 このときの不節制と夜風の冷たさが原因で風邪をひいてしまった。 ゴォーホッ!ゴホッ・・・ぐふっ!! 痰の絡んだ苦しげな咳が、福岡の夜空にこだまする。 俺の常で、ひとたび風邪をひくと、短くても2週間。長ければ1か月以上、激しい咳に苦しむことになる。 風邪をひいても2、3日であっさり治ってしまう人もいるが、うらやましいと同時に信じられないような気持ちがする。 今回は初期に安静にしたのが功を奏し、なんとか咳を2週間で鎮めることができた。 しかし2週間を安静にした結果、あれほど走り込んだ夏の貯金は見るかげもなくなくなってしまい、 2週間ぶりに LOOK 586 UD を駆って白糸TTに出かけた俺は、「自転車に乗るのがうまい体力バカ」から 「自転車に乗るのがうまいだけの、ただの人」に落ちぶれてしまったのを悟ったのだった。 白糸のふもとの農協に、レジ打ちのバイトの女子大生のうわさ話が耳寒く響き渡る。 女子大生A「積み上げるのにはあんなに努力をしたのに、失ってしまうのは一瞬なのね・・・」 女子大生B「どうやらこれではロードバイク辻斬りではなく落ち武者ね」 女子大生C「みつひででいいわよあんなやつ、みつひでで・・・あっみつひでが来たわ」 そこで俺は例年よりオフに入るのを1か月ほど前倒しし、 例年より早く筋力トレーニングをはじめるべく、仕事帰りに母校のトレーニングルームに通い始めたのである。 ウリャーーーッ! どこかの謎の運動部員の気合がこだまし、バタフライマシンにつけられた50kgほどの重りが上下する。 俺「ガハハハハハ!気合だけは一人前だが、まだまだフォームがなっていないな! そんなに腕の力に頼っていては、肝心の大胸筋に効かせることはできないぞ!」 俺は謎の男が轟音とともに12レップを終えるのを見届けると、おもむろに同じマシンに座り、55kgに重りをセットし直した。 デヤァーーーッ! 俺の気合に呼応して55kgの重りが上下する。 稼働域の大きいスムーズなフォームで12レップを終えると、俺は悠然とバタフライマシンを離れた。 しかし、次の瞬間、信じられないことが起こった。 謎の男はバタフライマシンを、「14」つまり、70kgに設定し、12レップを完遂したのである。 ここのバタフライマシンの重りは、14の目盛りでオレンジに色が変わる。 つまりこれは、マッチョと非マッチョの分水嶺なのだ。 興奮のあまり意識朦朧となった俺は、現役時代の記憶を呼び覚ました。 50㎏以下は「もやし」 60㎏以下は「パンピー」と呼ばれたこと。 そして70㎏を超えると「マッチョ見習い」としてやっと一人前の扱いを受けることを。 この男―――どうやらこの俺に勝負を挑んでいるようだな!! ここで退いたら男じゃねー!! ヌオォォォーーーッ!! 俺は一世一代の気合をほとばしらせ、野球部時代の筋肉全盛期に扱っていた「15」の目盛り、 つまり75kgに全力の大胸筋隆起を炸裂させた。 しかし薄くなってしまった俺の胸板がかつての圧倒的存在感を示すことはなく、 俺が大胸筋に込めた力みは諸刃の剣となって俺自身にかえってきた。 要するに無理したら大胸筋がつったのである。 ウギャァーーーッ いつの間にか誰もいなくなっていたトレーニングルームに、 助けを呼ぶこともできずひとり痛みに悶絶する俺の嗚咽がこだまする。 年齢相応。 年寄りの冷や水。 栄枯盛衰、おごれるマッチョは久しからず。おごれる筋肉も久しからず。 今の俺を風刺する数限りない言葉たちが俺の脳裏にこだまする。 俺は悟った。 俺はもうかつての俺ではないと。 勇気を持って認め、そして必ずや不死鳥のごとく夏には復活を果たして見せると決意したのである。 |