SHIMANO DURA ACE R55C3 ブレーキシュー カーボンリム用
購入価格 ¥ WH-7850-C24-TUに付属
馬鹿野郎!「このブレーキシューはすり減るのが早くてクソ」だの「小銭を撒きながら走っているようなもん」だの、 お前はブレーキシューの半分はやさしさでできていることを知らないのか! 確かに耐久性の高いシューは魅力的だ。しかしそれはリムに対する攻撃性の裏返し! すり減りやすいシューは自分が傷つくことでリムを守っている心優しい子なんだよ! 俺がここまで言ってもインスタントで効率的な価値観が蔓延したせちがらい現代社会を変えることは難しいだろうから、 どうやらここは俺の体験談を語らなければならない流れのようだな・・・
あれは俺が愛車の LOOK 586 UD のブレーキシューを、カーボンリム用からアルミリム用に交換していたときのことだ。
俺「ブレーキシューの交換めんどいなぁ・・・それにカーボンリム用のシューって、すり減るのが早いんだよなぁ・・・」
その瞬間であった。 俺の作業を黙って見つめていたたけしの表情が一瞬にして豹変し、上腕二頭筋が荒々しく隆起した。 たけしの拳は俺の顎を的確にとらえ、俺は玄関の宙を舞った。
たけし「馬鹿野郎! もしアルミリム用のシューでカーボンリムを運用したら、 リムへの攻撃性に加えて急制動時に癒着するなどの致命的な問題が発生するんだぞ! じゃあカーボンリム用のシューならつけっぱなしでアルミリムもいけるかといえばそうではなくて、 もしそんなことをしてしまえばアルミリム片がカーボンリムをやすりのごとく削っていってしまうだろう。 けちくさいこと、不精なことを考えるくらいなら、カーボンリムなんか川に投げ捨ててしまえ!! どうやらここは、俺の幼いころの体験談を語らなければならない流れのようだな・・・」
俺はたったあれくらいの何気ない一言で殴られたことに少々納得がいかなかったが、たけしが長い話を始めそうな流れだったので玄関からみかんを持ってきて、こたつにもぐりこんだのだった。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
あれは昔、このあたりに自転車乗りの間で「鬼」と呼ばれる男が出没していたときのことでした。 毎日、どこからともなく暴れ者の鬼がやってきて、自転車乗りという自転車乗りを隅々までちぎり、罵倒し、剛腕パンチで吹っ飛ばすという悪行の限りを尽くしておりました。 そんなある日、この鬼の悪行をなんとかできないかと話し合っていたところ、あるショップで一番のマッチョが言いました。
マッチョ「なんだい、鬼だって?俺様の脚力があれば、こわいものなんてないぜ!俺様に任せろ!」
これにショップの客たちは、そうか頼んだぞ、あんただけが頼りだ、と送り出したのです。 あくる日、やってきた鬼にマッチョは言いました。
マッチョ「おい!鬼!好き放題暴れているようだな。 しかしそれも今日までだ、俺と勝負して、もし俺が勝ったら、二度とこのあたりを走らないでもらおう。」
ヌウゥゥゥーーーンッ!
マッチョは、こん身の力で平地をカッ飛ばしました。しかし、鬼はそれにあっさりと追いついて言いました。
鬼「ムムッ!なかなかの脚力だ。でもまだまだだな。」
デヤァァァーーーッ!
鬼は53×11の漢ギアを猛烈な勢いでブン回すと、マッチョはあかつきの空に霞んで見えないところまでチギられてしまいました。
鬼「ガハハハハハ!俺が最強なんじゃ!相手が悪かったな!!」
その日の晩、頼みの綱だったマッチョもやられてしまって、どうしたもんかとショップの客たちが集まって話し合っていたところ、目つきの鋭いクライマーが言いました。
クライマー「フフッ、どんなに鬼の脚力が強くても、パワーウエイトレシオで見れば大したことはないはずです。私に任せてください。」
これにショップの客たちは、それはいい作戦だ、しっかりやってくれ頼んだぞ、と送り出したのです。
あくる日、目つきの鋭いクライマーは、山のふもとの木陰に隠れて鬼を待ち伏せしました。 そして鬼がやってくるのを見つけると「えいっ!」どんぴしゃりのタイミングで鬼の前に躍り出て、アタックを開始しました。
鬼「ムムッ!どうやら上りで俺に勝負を挑む気のようだな!」
デヤァァァーーーッ!
分が悪いと思った鬼は、近くの一番大きな木をめがけて、力いっぱい体当たりをしました。 メキメキメキッ!目つきの鋭いクライマーは倒れた木の下じきになって、のびてしまいました。
鬼「フハハハハハ!どんな手を使おうとも、俺をやっつけようなどと無駄なことはやめるんだな!!」
その日の晩、これなら何とかしてくれると思った目つきのクライマーもやられてしまって、これでおしまいだとショップの客たちは集まって頭を抱えてしまいました。
次の日。
いつものように鬼が補給食を買いに、ある山のふもとの農協に押し入りました。 そこにはやせ細って顔色の悪い小さな子どもがいました。 小さな子どもは、農協に押し入ってきた鬼を見ると、言いました。
子ども「いいなぁ。僕も鬼さんみたいに大きく強くなりたいなぁ」
鬼はあっけにとられてしまいました。 だって、今まで、疎まれ、怖れられたことこそあれ、「いいなぁ」とか「鬼さんみたいになりたい」なんて言われたことがなかったものですから。
子ども「僕は今こんなだけど、大きくなって病気が治ったら、ロングライドイベントの ツール・ド・国東に出るんだ」
鬼「ロングライド・・・」
鬼さんは考え込んで、補給食も何も買わずに農協を出て行ってしまいました。
数年後。
その年の ツール・ド・国東のゴールには、後ろに小さな子どもを連れた、鬼の姿がありました。 叫び声も怒号もあげることはありません。 猛烈で無慈悲なアタックもかけません。 鬼らしくなく、コースは最も短い城下町散策コース(20km)でした。 しかしそこには、今まで誰も見たことのない、優しい笑顔の鬼の姿があったのです。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
たけし「それで、その鬼は言ったのさ。 『レースに出るなら、勝利の喜びは鮮烈だ。しかし、自転車の楽しみはそれだけじゃない。 支え、誰かの役に立ち、心を通わせる喜びがあるんだ。それまでの俺は、本当の自転車の楽しみってものをたったの半分も知らなかったのさ』 ってね。どうだい、いい話だろ」
俺「いい話はわかったけど、鬼ってw」
たけし「つよし、ひでおさんの名前、知ってるだろ」
俺「ああ、ひでおさんの名前は『おにづか ひでお』 ―――あっ、じゃあ、その鬼って、ひでおさん」
たけし「ひでおさんは自分では絶対に語らないけどな。 あっ、この話、俺がしたのは内緒にしといてくれよ」
俺「自転車の喜びは優しさ、か。 じゃあ、すり減りやすいカーボンリム用のブレーキシューは、リムへの優しさでできているといっても過言ではないのかもしれないな」
俺はそう言って、ブレーキシュー交換の作業に戻ったのだった。
------------------------------------------【要点をまとめます】------------------------------------------
WH-7850-C24-TUに付属のカーボンリム用ブレーキシュー。
586UDに引き続き、numero_neroさん形式で。 DURA ACE R55C3(アルミリム用)との比較。ブレーキアーチはSHIMANO ULTEGRA BR-6700です。 左の数字がDURA ACE R55C3(アルミリム用)、右の数字がDURA ACE R55C3 (カーボンリム用)です。
【ドライ時の制動力】10/8 アルミリム用よりやや弱い利き。 平地ではアルミリム使用時よりも余裕を持った走りを、 下りでは控えめなスピードでの走りをするようになった。 レース用機材として考えると何か違う?(笑) あと、急制動とまでいかなくても、ちょっと強めにブレーキレバー握ると「キィィィーーーッ!」とカン高い音で鳴きます。
【ドライ時の制動コントロール性】10/10 制動力を度外視してコントロール性を評価するというのも変な話な気もしますが。 「止まれる範囲で」比較するなら、コントロール性は互角です。 急に利くなど、変なクセはありません。
【ウエット時の制動力】10/5 5、もっと低く評価していいかも。とくにスピードが上がったり、下りだったりすると恐怖。 利きません。雨の日は乗るべきではない。万が一、途中で降られたら、ゆっくり帰りましょう。 シュゴォォォッ(感触:ザラザラザラ・・・)というシューもしくはリムが削られる感覚も精神衛生上よろしくない。
【ウエット時の制動コントロール性】評価不能 とにかく止まることを考えてレバーを握るしかない。 コントロール性もなにもあったもんじゃないです。
【耐久性】10/7 まだセット使い切ってないのですが、減りはアルミリム用よりも早いようだ。 まぁほら、ブレーキシューの半分は優しs(以下略)
価格評価→★★☆☆☆ (シューだけで約2000円。アルミリム用だと700円くらい。ブレーキシューだけでこの値段かぁ・・・という気は正直する) 評 価→★★★☆☆ (まぁカーボンリム使いたければ仕方なし)
|