購入価格 ¥120
馬鹿野郎!ドリンク剤で気合を注入だと!?
今週は学期末の仕事と某政権のごとくいつまでも居座り続ける梅雨前線のためにトレーニングから遠ざかりがちだったが
そんな短い期間のうちにも、世の自転車乗りの間には腑抜けた空気が充満してしまったようだな。
どうやらここは、この悪い流れが心の奥底まで沁み渡ってしまうよりはやく、俺の体験談で断ち切らなければならないようだな・・・
あれは今日のことだ。
今週は自転車通勤が2回できただけで、それも直行直帰のみ。
それ以外は車通勤だったため休み足だったはずだが、
休みすぎた時の常で「回らない、力が入らない、心拍上がらない」の三重苦に苛まれていた。
それでも、今週たった一回になりそうな、俺の聖地・白糸巡礼を前に無様な走りは許されない。
そう思った俺はおもむろに愛車のRNC7をコカコーラの自販機の前に停め、リアルゴールドを購入した。
エネルギーを注入・エネルギーを炸裂
とある。
ビタミンB群とアスパラギン酸のはたらきだそうだ。
120円の何の変哲もないドリンクだが、少し効いてる・・・気がする。
疲れたときに脳がリフレッシュする、ちょっと強めの甘さ。
ビタミンB本来の色という、どぎつい黄色の液体。
100mに一本くらいは立っているコカコーラの自販機で買える手軽さも手伝って、
気合を入れたいときにしばしば愛用している。
デヤァァァーーー!
ビタミンB群とアスパラギン酸が俺の肝臓に働きかけ、グリコーゲンを炸裂させる。
しかしこの日の吹き下ろしは強烈で、いつもはインナー×8~9枚目あたりで30km/h近く回すところが
20km/hをようやく超えるのが精一杯という有様だった。
いつもは俺の踏力の全てをしなりとともに受け入れてくれる愛車のRNC7が、
あたかもこれ以上ペダルを回すことを拒んでいるような錯覚さえ起こしていた。
心が折れた・・・つもりはないのだが、ひさしぶりにタイムも30分を下回ってしまう体たらくで
なんだか不完全燃焼で下山。
もう少しで下り終える、というところでふと見ると、向こうからあるショップチームの集団がやってきた。
1、2・・・10人はいる。なかなかの大集団だ。バトルをしながら上り始める。
あぁー、楽しそうだなぁ・・・
―――モウイッポンイッチマエヨ―――
悪魔の声が聞こえた気がした。
え?白糸アタックをもう一本?
・・・無理だ。
サイクルスポーツ7月号「常識破りの驚ヒルクライム術」で習得した「ひねりダンシング」によって、ふとももの筋肉は死んでいる。
それに、帰ったら仕事が・・・
しかし理性とは裏腹に、気がついた時には俺はもうすでに再び山頂を目指し走り始めていた。
初の「一日二白糸」は、思ったほどには苦しくはなかった。
しかし、よほど乾いていたのだろう、山頂で満たしたボトルはすぐに空になってしまったし、
心拍は一本目は150~160あたりで推移していたところが、上り始めてすぐに160に達しそのまま下りてこない。
踏む筋肉が死んでいるので、出力が上下する走りは即、失速・タイムロスにつながる。
心拍160超のシッティングで、破綻しないギリギリの出力を維持し続ける走りとなった。
しかし・・・2分、1kmくらいだろうか。それくらい先にいるであろう先刻の集団の存在が、俺の心を奮い立たせた。
4km地点で4人ほどをパス。どうやらもうひとつ、先に集団がいるようだな・・・
ギャギャギャギャーーーン!!
淡々と、しかし全身の力を振り絞って加速する。
「あれ?さっき下ってませんでした?」
「二本目とか・・・信じられん。まさにイリュージョンだ・・・」
後方で感嘆の声が聞こえる。
どうやらこの白糸の地に、また新たな伝説を刻んでしまったようだな・・・
結局、大きく先行していた先頭の一人には追い付くことができずゴール。
驚くべきことに、タイムは一本目「30分2秒」よりも2分余りよい「27分55秒」だった。
心拍とテンションは高い、苦しさの割には心拍がハネ上がる、こんなに無理して俺の心臓は大丈夫かしらん・・・
この感覚は、レースで出し切っているときに近い。
そうか、いつもの30分弱TTも、2本いけばここまで追い込めるのか。
俺は今更にして悟った。
俺に足りなかったのはビタミンBやアスパラギン酸ではない。気合だったのだ。
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価格評価→★★★☆☆(まぁ普通。お手軽。普段使いにも◎)
評 価→★★★★☆(なんだか元気が出る気がする。)