購入価格 ¥980
まったく、どいつもこいつも!
「明日やろうは馬鹿野郎」とか「明日できることは今日やらない」とか
年末年始の忙しさや寒波を言い訳にした軟弱野郎ばかりだ!
そんなことを繰り返していると、いつか取り返しのつかない後悔に見舞われることになるぞ!!
お前らに「一生の別れ」というものがわかるか?
断わっておくが、俺が言いたいのは大切な人が亡くなったとかそういうことだけを言っているのではない。
どうやらここは、俺の過去のあの体験を話さなければならない流れのようだな・・・
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あれは俺がひょんなことからいずみさんと出会い、一緒にショップ主催のヒルクライムの練習会に参加した時のことだった。
「はじめてヒルクライムをするなら、これを読んでおくといいよ」
とショップの店員から渡された「ヒルクライムバイブル」でヒルクライムの基本的な走り方は頭に入っている。
スタート地点である「梁山泊」跡地に着くと、もうすでに先客がいて、猛アタックの真っ最中だった。
ヌオォォォーーー!
俺と同じくらいの年齢に見受けられたが、俺はその迫力あるヒルクライムに完全に気おされていた。
その足は決して太くはないながらも力強く引き締まっており、
たとえチタンの棒で殴ったところで逆に棒の方が折れてしまうことが容易に想像されるほどだ。
胴体は逆に力士のように力強い筋肉でよろわれていた。
いずみさん「彼は隣町の『WINサイクルズ』のエース、なおき。通称『カトリーヌなおき』よ。」
俺も走りたかったが、彼が走っている以上俺が走っても無様な姿をさらすのは明らかだったので、
登り口にすら近づけず、ずっと見ているだけだったのだ。
なおきという男は俺のほうに近づいてくると、こう言った。
なおき「おい、お前!勝負しようぜ!!」
俺「でも俺、このコース走ったことないし・・・」
その瞬間、俺は背後にただならぬ殺気を感じた。
バカヤロォォォーーーーーーー!!!
轟音とともにいずみさんの鉄拳が俺の顔面をとらえ、俺は自転車もろとも数メートル吹っ飛ばされ宙を舞った。
いずみさん「そうやって悩んでいるだけでも時はどんどん過ぎ去っていくんだぞ!
今のこの一瞬は残された人生の中で一番若い一瞬じゃないのか!!
俺はいずみさんの一撃で目覚めた。
そうだ。ウジウジ悩んでいる今も、時は流れている。
もし今日、怖気づいてヒルクライムせずに帰ってしまえば、それは今日という日は無かったのと同じだ。
そして、今日という日は、二度と帰ってはこないのだ。
その後、いずみさんは大切な人のことを話してくれた。
その人は、決して勝ち目のないヤンキー軍団相手に一人立ち向かったこと。
そして今は遠くに行ってしまったこと。
色々と運命の分岐点はあったのだが、何かと自分に言い訳をしては一歩を踏み出すことをしなかったのだという。
そんないずみさんだからこそ、まだ若い俺がくだらない理由でいたずらに時間を浪費しているのが我慢がならなかったのだという。
普段は看護婦として働く心優しいいずみさんは俺に愛の鞭を振るう時もとっさに手加減をしたらしく、俺は頭部のダメージ以外は無傷だった。
俺はふと、幼稚園生の頃の親友だった、つねきち君のことを思い出した。
つねきち君とは卒園式の日以来会っていないが、最後わかれる瞬間、
「ああ、この子と会うのはこれが最後だな」と思って別れはしなかった。
何となく、明日も会えそうな、いつでも一緒に遊べそうな、
そんな何気ない気持ちで過ごし、別れ、気がつけばそれが最後だったというわけだ。
親友だったが、10年以上も会っていない今となっては、おそらくもう二度と彼と会うことはないだろう。
卒園や卒業をきっかけに一度離れてしまった友達とは、よほど意識して「あの人と会おう」と思わなければ会わないものだ。
こうして、人は知らないうちに、大切な人と「一生の別れ」をしてしまうのだろう。
そうなのだ。
今この瞬間を、今日という日を、無為に過ごしてはならない。
たとえ誰かに勝てないとしても、いつも最高の自分でありたいものだ。
誰かにとって、俺の姿を見る最後の一瞬になるのかもしれないのだから―――
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要点をまとめます。
主に
1.ヒルクライムの基本的な走り方
2.ヒルクライムレースに出場することを前提としたトレーニング・コンディショニングの仕方
3.ヒルクライム向け機材カタログ
他にも選手インタビューとかイベントの日程とか色々あるが、大まかにはこんな感じである。
【良い点】
○スポーツバイクの基本的な乗り方、ヒルクライムの基本的な走り方について書いてある。
○目標3ヶ月前からのトレーニング&コンディショニングについてのページは役に立った。
【不満な点】
▲書いてあることは大切なことではあるのだが、ポジション、ケイデンス、ペダリングのことなど
ファンライドかバイシクルクラブかサイクルスポーツかどれか一冊買ってくれば書いてありそうなことではある。
▲目標3ヶ月前からのトレーニング&コンディショニングについてのページは役に立ったが、どんな層の人をターゲットにしているのかが不明確。
▲編集が甘い。例えば・・・
この挿絵は必要だろうか?それも、こんなに大きく?
と思わせるような写真や挿絵も少なくない。
また、多少の誤字脱字は仕方ないとしても
「ここで間違えたらあかんやろ」
こういった点は苦言を呈したい。
総じて、この本が役に立つ、というのは本当の初心者だけだろう。
指南書、バイブルを名乗るには、もう少し専門的にツッ込んだ内容がほしい。
しかし、自転車、ヒルクライムを題材とした本としては楽しめる。
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価格評価→★★☆☆☆
評 価→★★☆☆☆