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2012-02-10 【第57回】アンケート結果分析:自転車交通秩序総合対策について


 
admin  2012-2-10 22:27
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2012-02-10 【第57回】アンケート結果分析:自転車交通秩序総合対策について
皆さんこんにちは、サイクルベース名無し管理人です。いつもアンケートへのご協力ありがとうございます。今回は2011年10月に警察庁が発表した「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」という通達(以降「通達」と略)に関するアンケートでした。この「通達」は以下のURLから読むことができます。また、皆様にはアンケートの回答前にこの「通達」を読んでいただきました。貴重なお時間を割いていただき、どうもありがとうございました。

http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/taisaku/tsuutatu.pdf


「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」とはどんな通達か

アンケート集計結果を発表する前に、少しだけこの「通達」の内容を振り返っておきたいと思います。この「通達」はA4で約5ページの文書で、「警察庁交通局長」から「各管区警察局長」及び「各都道府県警察の長」に宛てられたものです。日本の警察の最高機関である警察庁が、各都道府県の警察のトップに向けて、こういう趣旨のことをやるように、というメッセージを発したことになります。また、そもそも「通達」って何? ということですが、これは「行政機関内部における統一的指針」を示したものであり、法令の解釈を内容とする通達の場合は司法の判断を拘束しないものの(=通達すなわち法令ではない)、通達に沿って様々な事務処理がなされるため、結果的には強制力を持つことになるようです。

参考:「通達」 - Wikipedia, その他
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E9%81%94

「通達」の内容は、自転車のルールとマナー違反が多く、インフラの整備も十分とは言えないので、これを何とかしていこう、というものです。具体的には、「自転車が車両」であるという認識を再度徹底させる、歩行者と自転車をきちんと分離する、歩道は歩行者が優先であるというルールを徹底させる、自転車安全教育を推進し、自転車に対する指導取締りを強化する、等です(意識改革、現場での指導、インフラの整備、教育、取り締まりという複数の領域を横断する大規模な試みだと思います)。既に皆様もご存知のように、この「通達」は自転車専門誌のみならず、新聞やテレビのニュース、ワイドショー等の番組でも度々大きく取り上げられ、それに対する人々の反応は「よくやった」という賞賛から「そんなの困る」という当惑まで、実に様々なものだったようです。そこで自転車レビューサイトであるサイクルベース名無し(CBN)では、CBN訪問者、すなわちスポーツや通勤通学の手段として積極的に自転車に乗っている人々がこの「通達」をどのように受け止めたかについて、アンケート調査を実施してみました。アンケートは2012年1月20から2月4日まで行われ、447〜469人の方々が参加してくださいました。


それではアンケート結果を見ていきましょう。



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理念・方向性は9割超が評価、「推進すべき対策」は意見が割れる

最初の質問は「2011年10月に警察庁が発表した『良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について』という通達をあなたは歓迎しますか?」というものでした。回答者数は467人でした。この設問では「通達」を好意的に捉えた人の割合を把握することを目的としました。結果を見ると約9割の人が通達の基本的な考え方には賛成と回答しています。ただし、基本的には賛成しているものの、42%の回答者が「通達」の基本方針や「推進すべき施策」について全面的な歓迎を示しているものの、54%の回答者が「通達」内の「推進すべき施策」に何らかの問題を感じ取っており、諸手を挙げた賛同表明を留保しました。これは無視できない割合だと思います。「推進すべき施策」内のどの項目に曖昧さや不備があるのかは今回のアンケートでお聞きできませんでしたが、これは機会があれば追加アンケートをしたいと考えています。警察庁及び関連機関におかれましても、「施策」については改めて有識者に精査してもらい、多くの一般人からも意見を聴取されることを希望いたします。




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回答者の65%が「通達」の実効性について懐疑的

二番目の質問は「『通達』が出されたことにより、自転車に関係する事故がどれくらい減ると思いますか?」というものでした。回答者数は447人でした。この設問では「通達」にどの程度の実効性があると思うかを、強弱付きでお聞きしました。結果は35%の方々が「通達」の効果で事故が減るだろうと回答し、54%の方々が「通達」があっても事故は減らないだろうという方向で回答されました。半数以上の方々が、「通達」の効果には期待していないことになります。さらに注目したいのが、割合的には11%ですが、「かえって事故が増える」と答えた方々がいたことです。車両として自転車を再認識する、自転車が本来車道の左側を走るものであることを知る、という意識改革がなされない状態で、歩道から車道へと自転車を「追いやって」しまえば、逆走自転車とルール順守の自転車との衝突事故が起こりかねない、ということが懸念されているようです。「意識改革」と「指導・取締」と「インフラ整備」を並行して一挙に進めてしまうことについて危機感が持たれています。各都道府県の警察は、地域の自転車利用者の「自転車成熟度」を勘案しつつ「指導」を行う必要があると思います(単に笛を吹けばいいのではなく、相手を見て笛を吹くということです)。現場で交通指導をするチームと、自転車交通安全教育に携わるチームとの密接な連携が非常に重要であるということも言えるでしょう。




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必要なのは意識改革か、それとも厳密な法律と処罰か

三番目の質問は「交通社会全体の安全を高めるために必要なのは、強いて言うとどちらですか?」というものでした。回答者数は469人でした。この設問でお聞きしたかったのは、いま現在、自転車の交通問題で多かれ少なかれストレスにさらされている私達が、交通社会の成員一人ひとりの意識改革と、法の整備、あえてどちらか一つを選ばなければならないとしたら、どちらを選ぶのだろうか、ということでした。「個々人の交通マナーの向上」を選択された方は、意識改革の有効性を信じているといえるでしょう。教育によるソリューション、良識を育み、良識に訴える、というアプローチです。一方、「法的拘束力を伴うルールとその厳格な適用」を選ばれた方は、自転車を取り巻く問題は、もはや教育や良識によって解決できる水準にはなく、曖昧さのない法律をつくり、違反者はきっちり処罰することが必要だ、と考えています。別の見方をすれば、前者はボトムアップのアプローチであり、高度に成熟した社会においてのみ可能なアプローチです。後者は上から下へのトップダウンのアプローチで、コンセンサスの共有が難しい社会で犯罪率が高い場合に取られるべきアプローチではないでしょうか。両者の比率は、今回のアンケートではほぼ半数づつ、「良識尊重派」がやや多い結果となりました。「民度」という言葉がありますが、個人的には、個々人の良識を信じている、信じたいという人がこれだけいる日本という国は、まだ高い民度を保っていると感じました。同時に、もはや厳密な法によって解決するしかない、という人々の絶望感も強く感じました。


「通達」にはどんな問題点があるか

以上が今回のアンケート結果ですが、この「通達」が諸手を挙げた支持を得られていないのは何故でしょうか。当サイトの掲示板でも様々な発言がありましたが、「例外を設けると結局誰も車道走行を守らなくなってしまうので意味がない」といった意見、「そもそも自転車が車道の左側を走るものだという認識がない人々を車道に追いやると自転車同士の衝突事故が発生するリスクが高い(そのため「意識改革」と「車道を走るよう促すこと」を並行して実施すべきではない)という意見、そもそも自転車が歩道を走ることになっている主要な原因は、道が狭いからでも、自転車専用レーンがないからでもなく、違法駐車が多いからだ、という意見が非常に印象的でした。

この「通達」には確かに様々な不備があり、多くの方が不満も抱いていると思いますが、このアンケートのまとめを書いている私個人としては、この「通達」が「ドライバーや歩行者などの、サイクリスト以外の交通社会成員に対して話しかけていない」という印象を強く持ちました。つまり、自転車に乗る人は今後こうしてください、というメッセージは明確であるものの、ドライバーは違法駐車をしないようにというメッセージは希薄ですし、路上にパッと飛び出してきて自転車と衝突する歩行者が存在しうる、という事態まで想像力が巡っていない感じがします。自転車に関連する事故を減らすためには、クルマのドライバーや歩行者の意識改革も劣らず重要であるはずなのですが、その点にはあまり大きいウェイトが置かれていないように見えます。

もう一つ気になる点は、この「通達」は「警察庁交通局長」が「各都道府県警察の長」に「じゃ、そういうわけで、各自工夫してやっとくように。」とやや放り投げているようにも見える点です。多分、官公庁の「通達」には多かれ少なかれこうした傾向があるのかもしれませんし、実際問題、警察庁が手取り足取り各都道府県警察の面倒を見ることは不可能なのかもしれません。しかしこうした「やっとくように」通達ではあまり物事がうまく動かないのではないかという気がします。とはいえ、「通達」における「推進すべき対策」の五行目に「警察庁においては、年明けを目処に、各都道府県警察の来年度事業を取りまとめ、公表する予定である。」とあるので、この「通達」絡みで各都道府県が具体的にどのようなアクションを取るのかが少なくとも発表はされるようです(もう二月の中旬ですので、この取りまとめ結果は既に発表されているかもしれませんが、警察庁のサイトを調べてもなかなか見つかりません。リンクをご存知の方がおられましたらぜひお知らせいただけると幸いです)。


今回のアンケート回答者の属性 -「シリアス・サイクリスト」というセグメント

ところで今回このアンケートに参加していただいたのは、当サイト(サイクルベース名無し、CBN)という自転車パーツレビューサイトを訪問された方々です。つまり、趣味として積極的に自転車に乗っている人々であり、自転車という乗り物の性能や機構について一般人以上の知識を有し、自転車が抱える様々な交通問題についても認識している人々です。自転車が基本的に車道の左側を通行すべき車両であり、歩行者に理由なくベルを鳴らしたり、歩道を爆走したりするのがいけないことを理解している人々です。「交通社会」がどのような成員によって構成されているか、共通見解はないかもしれませんが、仮に「自動車・オートバイ・原付・歩行者・軽快車(ママチャリ)利用者・反社会的サイクリスト(ブレーキのないピストなど)」といったセグメントが想定しうるのなら、今回アンケートにご参加いただいた皆様はそれ以外の「シリアス・サイクリスト」とでも呼ぶべきグループを形成していると思います。

その「シリアス・サイクリスト」は近年の自転車ブームで急激に増えてきた感がありますが、健康増進・環境への配慮・災害対策などの観点から、今後も益々大きくなる交通社会成員であるのは間違いないでしょう。今回のアンケートにご参加いただいたのは、そうした方々であると言えると思います。警察庁や各都道府県警察をはじめとする関係機関には、ぜひ今回のアンケート結果をそのような「シリアス・サイクリスト」の見解として受け止めていただき、「通達」の具体的な落し込みへの参考にしていただきたいと強く望みます。

総括

今回の「通達」について、様々な批判もあるとは思います。そもそも行政側がこれまで自転車という存在を軽視してきたから自転車関連の事故が増えたのだ、なのに自転車乗りのマナーやルール違反が目立つ、というのは責任転嫁だ、という声もあるでしょう。また、今回の「通達」は「自転車が増えてきた。事故が増えてきた。困った。じゃこうしよう。」という対処療法的な、場当たり的な内容であるのは否めません。日本国の交通社会において、自転車という存在をどのように位置づけるのか、という巨視的なビジョンも欠落しています。このあたりは、現在の日本の政治と似ています。TPP交渉参加問題にしても、消費税増税問題にしても、大きいビジョンを達成するための必要不可欠なステップの一つとしてではなく、それをしないともうやばいので、仕方なくやる、という場当たり的対応だからこそ多くの人が憤慨しているのではないでしょうか。

しかし一方で、批判ばかりしていては何も前進しないのも事実です。今回の警察庁通達は、具体的な施策については「異議あり!」という方が半数以上だったのですが、目指しているところは間違っていない、と答えた方が大多数でもありました。この点については、警察庁グッジョブ、と評価してあげても良いと思います。あとはこの通達が良い結果を出していくよう、私達もボトムアップでアイデアを出していき、そうしたアイデアを無理矢理にでも上に届けていき、かつ、「そんな通達とかいうのも、あったっけな」というふうに忘れ去らないよう、外堀を埋めていくことが大事だと思います。

それでは皆様、今回のアンケートへのご参加、どうもありがとうございました。重ねてお礼を申し上げます。

[管理人@サイクルベース名無し]
















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