【プロローグ】
あわいち・びわいちに対抗して、地元の神奈川になにか分かりやすいコースはないかと検討していた。
神奈川には三浦半島、宮ヶ瀬湖などあるが、あわいち・びわいちに比べると、どうしても劣化コピー版という
印象になってしまう。
何か良いルートはないものかと考えていて、いっそのこと神奈川一周して、神奈いちにしてしまえ!
という結論にいたった。
かないちだと金沢一周と区別がつかないので、神奈いちとする。
しかし、いきなり神奈川一周はハードルが高いので、境川サイクリングロードを目安に西と東に分けてみた。
本レビューはその西半周コースである。
ちなみに、東半周はほぼ平坦で時間さえかければ誰でも走りきれるコースだが、西半周は峠超えがあり距離も
約260キロ近くあるタフなコースとなっている。ブルベの練習にはいいかもしれない。
【スタート】
スタートは自宅に近い小田急線の相模大野駅近くにある国道16号の交差点。
ここから、反時計周りにぐるっと回る。
反時計周りなら、前半がアップダウン、後半が平地となる。
時計周りにすると、最後に気力が切れたときに帰ってこれる自信がないので、私は反時計回りとした。
楽しみ(苦しみ)は最後にとっておく人は、時計回りでも良いだろう。
この日は、あわよくば神奈いちに挑戦するつもりで、深夜に出発。
神奈いちはおろか西半周コースも通しで走るのは今回が初めて。1度しか走ったことのない区間(しかも逆方向)も
ある。
まずは、国道16号線を西へ向かう。
道路の左端は狭い箇所がけっこうあり、走りやすいとはいえない。
深夜なので道はすいているが、信号が多く思ったほどペースが上がらない。
まあ、昼間の渋滞に巻き込まれるよりマシなのだが。
【犬泣峠】
国道16号線を離れて、県道413号を通り津久井湖の南端にあたる城山ダムへと向かう。
城山ダム~津久井湖周辺は、普段は渋滞地帯。信号が多く、道幅も広くないのに、バスや大型トラックが
走っているので仕方ない。
深夜に城山ダムの上を通ると、ゴォォォォという大質量のものが揺れているような音がして、かなり怖い。何か
出てもおかしく無い雰囲気がある。昼に通るには、そのようなことはない。
津久井湖・相模湖・国道20号線へと進み、日連入口交差点を南下(左折)する。
昼間は相模湖~国道20号線に出るまでが、やたら渋滞している。
国道20号を離れると、街灯のあったりなかったりする山道(県道76号)を一人寂しく走ることになる。
時折、分岐があるが、標識に従って道志か山中湖方面へ進めば問題ないだろう。
今回は夜中なので分からなかったが、この道に「ブルベの里」という看板がある。
ブルベライダーの聖地かと思いきや、実は「ブルーベリーの里」。なんとも紛らわしい。
私が通った時は、山に犬らしき泣き声が響いていた。鳴き声ではなく、泣き声。すごく怖い。
深夜の山道で犬の泣き声がする、しかも音が反響して泣き声の出所が一定していないように聞こえる。
あまりに怖いので、勝手に犬泣峠と命名。(丹沢湖~道志みちへ抜けるルートに犬鳴峠というのがある)
【寒気】
道志みち(県道413号)に到着すると、今度は東へ向かうのだが、あまりの寒さにこのまま帰ろうかと本気で悩む。
道志みちにあるセブンイレブンで休憩して、再出発したところ、突然身体がガクガクと震えだした。
歯がガチガチ鳴って、フルフィンガーグローブに守られている指先もキンキンに冷えていて、凍傷になりそうだ。
何よりヤバイと思ったのは、指先以外は寒いと感じていないこと。ガクガク震えるほどに寒いはずなのだが、
寒いという感覚が欠落している。凍死する時の感覚はこんなものなのかと考えるぐらいの余裕があるのが幸いだ。
11月の神奈川とはいえ、深夜の気温の低さを甘く考えていた。
自販機を見つけたので、おしるこで指を解凍。指先に缶の温かさを感じるまで、ずいぶんかかった気がする。
このまま帰ってしまおうかと考えたが、帰るにせよ、継続するにせよ、宮ケ瀬湖まで行くことにした。
宮ヶ瀬湖まで来る頃には寝不足なりの体調に戻ったので、そのままヤビツ方面へ行くことにする。
【呼んだ?】
夜中に心霊スポットである宮ヶ瀬湖 虹の大橋を渡ったのだが、特に何も起こらなかった。
宮ヶ瀬湖の南端に近づいたところで、西の空が白みだしたところを写真に撮ろうと思って、自転車を停めて
デジカメを出していると、車道と歩道を分ける柵の歩道側に大きくてまだキレイな花束が2つ置かれているのに
気がついた。誰かに呼ばれて止まってしまったのか?
【ヤビツ】
ヤビツ峠を北から南に向かうルートを裏ヤビツといい、ヒルクライマーがタイムアタックするので有名なのは
南から北へと向かうルート。
今回は裏ヤビツから登って、南側の国道246号へと向かっていた。
裏ヤビツはアスファルトの状態が悪く、暗い時間帯に走るのはオススメしない。私は暗いうちに抜ける予定だったが
予定よりもペースが上がらず、裏ヤビツを登るころにはすっかり明るくなっていた。
そして、恐れていたものがやってきた、睡魔だ。
眠い。土曜に一日仕事して日替わり前に帰ってきたら、そのまま寝ずにナイトランを強行しているのだから、眠いのは
当然。
眠気がピークに達したのか、有り得ないものが見えるようになってきた。
前方に人がいると思ったらガードレールだったり、道から外れたところに自転車が置いてあると思ったら木だったり。
そんなことが何度か続いたので、道から少し離れた草の上にハイカーが背負うような大きめのリュックがあるのを見ても
また見間違いだろうと考えた。3回ほど見直しても、リュックはリュックのまま。あれは本当にリュックでそこに荷物を
置いて、草花でも撮影している人でもいるんだろうと納得した。
リュックまで10メートルぐらいまで近づいたら、そこには重ねたタイヤが置いてあった。
眠くて幻覚を見たのは、これが初めてだ。
狐か狸、山の神にでも、からかわれたのかもしれん。
そんな事はおかまいなしに、朝も早いのに表のヤビツを登ってくる自転車乗りに何人もすれ違った。自転車密度高すぎ。
ヤビツ峠まで約80キロに6時間もかかっている。この時点で神奈いちは、ほぼ無理だろうと判断。
【国道246号】
ヤビツでの体験に懲りたので、途中にあったマクドナルドで休憩し、座ったまま仮眠をとる。
時間のロスになるが、このままは進んで事故るよりいいだろう。
国道246号は松田で、一部自転車通行禁止区間があるので注意が必要。
国道246号を御殿場方面に自転車で向かう場合、国道246号を迂回した方が安全なルートがある。
樋口橋の先にある安土という交差点(押しボタン式信号)で右斜め前へ進む脇道へ入るのがオススメ。
一度国道246号に合流するが、再び右斜め前への脇道を進むとそのうち国道246号に合流する。
この付近の国道246号は、道が狭いのに自動車が猛スピードで追い越してきたり、渋滞したりでろくな道ではないので、
迂回した方が良い。
安土交差点
国道246号で静岡に入ると、生土交差点で自転車は通行不可となるので、県道394号へ入り御殿場を目指す。
間違っても、そのまま国道246号を直進しないように。
ちなみに本レビューに載せている変な雰囲気の画像は、ミニチュア風に撮れるデジカメで撮影したもの。
地味な風景よりも、明るい派手な景色を選んだ方が面白い写真になるようだ。
県道394号にて
【乙女峠】
御殿場バイパスから、仙石原や箱根方面に抜けるルート。
御殿場プレミアムアウトレットと箱根周辺という観光客が喜ぶ地点を結ぶだけあって、観光バスが多い。
自転車乗りもたまにいる。
坂の斜度は、最初がちょっときついが、そこを超えればなんとかなるだろう。
峠には食事できる場所もある。
乙女峠を超えた下りにはハイカーが出没するので要注意。
なかには、突然歩道から車道に降りてくる人もいる。
彼らは自動車やオートバイの音は聞こえていないから、車道に降りても平気と考えているのだろう。
【芦ノ湖】
千石原交差点を西へ右折し、芦ノ湖へと向かう。
ここもバスが多い。
途中ですすきで有名な場所を通る。すすきの季節でなくても、景色の美しい場所だ。
芦ノ湖の周辺には自転車道があるらしいが、実態はハイキング用の山道みたいなルートらしいので通った
ことはない。
その代わりに県道75号を通る。県道75号はアップダウンが続き、これまでの走行距離と相まって、体力が
削られていく。
やがて国道1号に出るので、西の三島方面へ少しだけ進む。
本来はこの後で椿ラインを進むのだが、自分の身体と相談して国道1号や箱根旧道を通り、小田原までショート
カットも可能である。
オプションで国道246号から一時離れて丹沢湖に行った場合、津久井湖・相模湖・宮ケ瀬湖・丹沢湖・芦ノ湖
という神奈川の有名どころの湖を制覇できる。
【椿ライン】
国道1号とは、早々に別れて再び県道75号で湯河原方面へと向かう。
途中でターンパイクのビューラウンジがあり、食事も可能。この辺りからは、芦ノ湖・富士山を同時に
見わたせる。ただし、ここまで来るのに、実は散々富士山を見ているので、あまりありがたみは感じなく
なっている。
この道は車の通行量が少なく走りやすいが、ターンパイクのビューラウンジまでは登りとなっている。
この坂単体であればなんら問題ないのだが、体力が減ってる身にはこたえる。ここが最後の登りなので、踏ん張って登りきる。
下りは、一部路面が荒れている場所があるので、注意が必要。
天気が良ければ相模湾を遠くまで見渡すことができる。
【残り】
椿ラインを下り湯河原までくれば、海に近い平坦路を国道135号、国道1号、国道134号と乗り継いで
ひたすらに東へと向かうのみ。
国道135号は、いつも渋滞しているうえに、止まりそうで止まらない微妙な速度で進むのがイヤラシイ。
また国道135号の路肩は、ガラス片が落ちていたりするので、車を避けて路肩を走る場合は注意が必要。
渋滞を抜けようとするオートバイは、出来るだけ先に行かせた方が無難。
国道1号から、国道134号へ抜ける道は分かりにくく、気がつくと国道1号をひたすらに走っていることになる。
江ノ島までくれば、藤沢を経由して境川サイクリングロードを北上すれば、スタート地点に近い場所に
到達できる。
神奈いちに挑戦する場合は、国道134号をそのまま三浦半島方面へと進むことになる。
境川サイクリングロードを夜に走るジョガーやウォーキングしている人はライトの所有率が高いので
自転車も安心して走れるが、ときにはライトを持たずに上下黒の服を着ているステルスジョガーもいるので
過信は禁物。
ゴールすれば、だいたい258キロを走れる。(一部サイコンで計測していなかったので予想を含む)
神奈いちに挑戦する場合は、さらに100キロ以上を走ることになる。
深夜の1時45分に出発して、帰ってきたのは22時ぐらい。夜に走る区間を、いかに街灯の多い区間にするかが
ペースアップの鍵だろう。
前半はオカルト的な要素があり、どうなることかと思ったが無事に帰ってこれて何よりだ。しかし、翌日も仕事なので、
自宅に着くなり達成感など感じる余裕もなく倒れるように寝た。
価格評価→★★☆☆☆(距離が距離なので、補給食代はかかる)
評 価→★★☆☆☆(何度も走りたいとは思わない)