購入価格 $35+$12+送料 @ Universal Cycles
継続使用して1年、最初の交換です。販売形態はインナーケーブル単体の他にアウターハウジングやフェルールが入ったセットもありますが、今回私が用いたのはディレーラー用インナーケーブル2本組と、ディレーラー側でケーブルを確実に固定する為のWindsor Claspと呼ばれる
こんな特殊なワッシャx2枚。参考までに組み合わせたアウターハウジングはNokonやiLinkと同種の碍子状のピースをライナーで繫ぐ、コンプレッションのないタイプのものを用いました。
通常のケーブルはステンレススチールを束ねたものですが、このPowercordzはZylon (=Kevlar・NoMex etc.単なる商標違いで皆一緒)というナイロン系強化合成繊維をテフロンチューブで被覆したもの。メーカーが主張する利点としては、
・軽量(カタログ値2g/m)
・伸縮せず、スチールより引き裂きに強い性質を持つ
・テフロン被覆があるので動作にルブリケーションを必要としない
となっています。実際どうなのか?
・1.2mm径2000mm実測で、3g。参考までに通常のステンレスケーブルは14~15gで、私のバイクに必要な長さにカットした状態での前後あわせた実測値はPowerCordzが5g、JagWire Ripcord (Shimano/SRAM)は20gでした。差は15g。超を付けるほどではありませんが、まあ軽いという主張に偽りはなしです。
・確かに引き千切れはしなかったし、一度セッティングが出てからはケーブルアジャスターをいじる必要はほとんどありませんでした。しかしハウジングと同時交換だったためかリア側には2cm程度の初期伸びが出ました。多分ハウジングがピースをライナーでつなぐ構造なので、インナーケーブルにテンションがかかってピースの隙間が詰まった結果、弛みが生じたのだと思います。内部の繊維は所謂ケブラー(編み込んだものではなく、ストレートで固めた束)ですし、信頼しても大丈夫でしょう。問題はテフロン被覆。こちらは一度クランプすると専用ワッシャを使っていても裂けます。
写真は使用後のものをカットしてあります。右側写真に写っているような状態で、クランプボルトに巻き付けて固定するのですが、スレッドと当たる部分で早々に裂け目が入ります(左写真)。裂けること自体は、軽度であれば問題ないのですが、一度クランプされた場所を再度クランプし直すことは推奨されていないので、最初の一発で決めなければケーブルはパアということになります。そういう意味においては非常に扱い難いケーブルですので、NokonやiLinkのように、インナー交換時にしっかり引っ張ってハウジングの弛みを取った上でクランプしないと、後で大量に初期伸びが出て張り直しが必要になってしまうシステムには向いていないでしょう。また、ケーブル自体にスチールケーブルのようなコシがないので、フレーム内部に通す際てこずることがあります。CerveloのICS2との組み合わせではかなり酷い目に遭わされました。
・ルブ無しで用いても、グリスやオイル等で潤滑したケーブルと比べても変速フィールで劣るとは思いませんでした。テフロン被覆は確かに効果ありです。1年間、基本的には晴天時のみというただしつきですが、ハウジング内へのルブの注入は一度も行っていないにも関わらず、最後まで変速フィールは落ちませんでした。そもそもこのケーブルを導入したのは
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7961&forum=49例のケーブル関係のメンテが異様に面倒くさいCervelo S3を何とかしてメンテフリーにしたかったが故なので、この点に関しては満足しています。取り回しもTTバイク並みにややこしいことになっているフレームですが、変速性能も良好でした。
まとめると、スチールケーブルで問題がない方が敢えて使う必要はないものでしょう。むしろセットアップがかなり面倒臭いケーブルなので、誰にでも手放しでお勧めできるものではありません。しかし確かに扱いには強い癖があるものの、軽い・基本的にメンテフリー・取り回しが厳しいフレームでも変速性は良好である、などケーブル関係が特殊なフレームにおいては導入するメリットがあると感じました。
最後にセットアップについてTipsや注意点をいくつか。
・初めて扱うときはリアから先に張ることをお勧めします。仮にしくじった場合でも、カットしてフロントに用いれば新たに買いなおさなくても済みます。被覆部分の軽度の裂けなら実用上問題ないと思いますが、中の繊維の束が解れてはみ出るようだと交換が必要になります。ちなみにブレーキ用もありますが、このケーブルの性質を考えるとちょっと怖くて私は使えずにいます。
・この商品には製造後2年以内という使用期限が設けられています。パッケージに製造年月日が入っていると思うので、購入時にチェックしておきましょう。
・カットする際はハサミやケーブルカッターでは切断面が綺麗に仕上がらないので、ケブラー切断に特化したケブラースニップという工具の使用をお勧めします。私はUNEXウルトラコンプレッサー(これにもケブラーが巻かれています)も使っているので、投資しました。Knipexのものとかだと¥2,500位しますが、謎のアメリカンブランドのものは¥1,000程度。見ただけではそう変わらなかったような。
価格評価→★★☆☆☆(普通のケーブルの3倍ですからねぇ…)
評 価→★★★★☆(強いて使うべきものではないですが)
年 式→2010
カタログ重量→ 2g@1m (実測重量 3g/2000mm、Windsor Clasp 約1g)