購入価格 £173.24(約2万円)
馬鹿野郎!
どいつもこいつも「風邪をひいていて自転車に乗れない」だの「雨のせいで外で乗れない」だの自転車の楽しみは平地をカッ飛ばしたり山でモガいたりすることだけじゃないだろう!
かの有名な王女は言った「自転車に乗れないならレビューを書けばいいじゃない」と!
どうやらここは、俺が乗る以外の自転車の楽しみ方を語らなければならない流れのようだな。
あれは俺がチーム練に参加したある日のことだった。
その日はチームメイトの知人という、かなり強い人が練習に参加しており、
平地はその人の引きで常時40km/hオーバー、坂でも休む間もないという状況で
俺はちょっと、いやかなり自分の限界を超えてしまったようで体調を崩し、
翌日からのどの痛み、咳、鼻水にかわるがわる襲われることになったのだった。
「全部自転車のせいだ・・・なう」
翌日、晴れているのに自転車に乗れない俺の弱気なツイートが病室のディスプレイにこだまする。
バカヤロォォォーーーッ!!
すると轟音とともにフォロワーたちからリプライが炸裂した。
「馬鹿野郎!」
「自転車に乗れないならレビューを書けばいいじゃない。」
「言ってご覧なさい、イヤッホォォォゥ!と。」
覚醒した俺はマスクとサングラスを着用し、自転車屋に出かけていくのだった。
「いらっしゃいませ」
入り口のドアをくぐる俺に店員が声をかける。
この店には店長のほかにふたりの店員がおり、ひとりは愛想もいいがメカには弱いイケメン、
もうひとりは無愛想で自転車を含めてルックスの話をすると不機嫌になるのだがメカニックとしての腕前は確かなブサメンだ。
今日の店番は後者だった。
俺はかねてからの懸念事項だったペダルまわり、ひいては膝の不安定感を改善するべく、ペダル売り場に向かい、デュラグレードのカーボンペダル「Shimano Dura-Ace PD-7900 SPD SL Carbon Road Pedals」を手にとっていた。
ペダルに2万円か・・・
そう思って手に持ってみると、軽い。
片側125g。もう片側も125g。誤差のなさも驚きだ。
数値としての軽さは105比でほんの数重gだろうか。
しかし持っただけでさえ驚きをもって受け止められるこの軽さは、上り坂では強力な武器になるだろう。
踏み面も広く、俺の悩みである膝の安定感も増しそうだ。
「しかし俺の自転車は鉄だしなぁ・・・
それもわきまえずに足元だけデュラ、しかもカーボンで固めるのも何だかなぁ・・・」
苦笑まじりのその呟きから俺の内面すべてを見透かしたのだろう、
カウンターの向こうで何か作業をしていた謎の店員の上腕二頭筋が一瞬にして倍の太さになり
その男の拳の速さは音速を超えた。
謎の店員「お前!今、おれの顔を見て笑ったな!?」
俺「いや、俺はそんなつもりじゃ・・・」
謎の店員「いいか。確かに俺はキムタクになれない。
しかし、キムタクも俺になれない。」
濁りきった俺の意識を覚醒させるに充分な一言だった。
そうなのだ。俺は「クロモリでADDICTを抜く」だの威勢のいいことを吹聴する一方で
カーボン>クロモリ という狭量な優劣意識に身をやつしていたのだ。
そうでなければ、無意識とはいえ先述のような呟きは生まれまい。
フレームの素材や価格に関わりなく、パーツは性能や用途や好みでためらいなく選べばよいのである。
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【要点をまとめます】
デュラグレードのカーボンペダル。
今は型番が9000となっており、付属クリートが青になり、Qファクターを広げたタイプ(シャフトが長い)も存在する。
数値による評価は左が当製品、右が比較対照としてシマノShimano 105 PD-5600 SPD SL Road Pedalsを10点とする。
【膝への優しさ】12/10
素材がカーボンになったからだろうか、フローティングクリート使用時に
シューズの向きが変わるとき、ツルッと唐突に動くことがなくなった。
少しザラつきを持たせた感じで、それでいて動きが渋いとは感じさせない。
好みの問題だろうが、私は好きである。
自然に動いてくれる結果、膝にも優しい感じがする。
踏み面の広さによる安定感の向上も手伝っているだろう。
かつてどこかの店長が(サイスポ誌面だったと記憶しているが)
「(アルミ時代の)デュラのペダルは硬くて膝に悪い」という趣旨のことを書いていたが
少なくともこの製品ではそれは感じない。
素材をカーボン化したことが奏功したのだろう。
踏んでいる間にペダルが硬いだの柔らかいだの感じることはなかった。
【軽量性】11/10
持って軽い。
しかし回している間にそれを意識することはない。
その程度の差。
【耐久性】
これは未知数なので数値による評価はなし。
通常使用において脆弱さを感じる場面はなく、とくに気を使わずに扱っても大丈夫そうだ。
試用期間1年半、走行距離10000km(RNC7で5000km、586UDで5000km、概算)で今のところ目立った傷、ベアリングの不具合などなし。
コーナーリング中に擦る、落車するなどは今のところなし。
ちなみに同社のPD5600は5年、走行距離20000km(くらい)で、クリートがごく微妙にカタカタ動くのが気になるようになってきて、それが足首まわり、ひいては膝の不安定感に感じられるようになった。
総じて、値段は高いが良いペダル。
素材を安くして(アルミ化など)踏み面の広さはそのままに廉価モデルがあると嬉しいのだが・・・
価格評価→★★☆☆☆
評 価→★★★★★
<オプション>
年 式→2012
(実測重量 250g/左右ペア)