ツールマレー峠はフランス南部ミディ=ピレネー地域圏にある峠で、標高は2115mとピレネー山脈では最も高い峠です。
1910年以来最も多くツール・ド・フランスに取り入れられており、ツールの顔とも言えます。
サイトによってはトゥルマレ峠もしくはトゥールマレー峠と表記する場合もあります。
峠の西側に位置するリュズ・サン・ソヴュール(Luz-Saint-Sauveur)を始点とした場合、水平距離にして19km、標高差は1404m、
平均勾配7.4%となっており、峠の直前では最大10%以上にまで勾配が上がります。
また東側に位置するカンパン(Campan)を始点とした場合、水平距離にして17.2kmの地点であり、標高差は1268m、平均勾配7.4%、
こちらも最大10%の勾配があります。特に峠まであと12kmという地点からは勾配8%を切ることのない厳しい坂が続きます。
まだ石ころだらけの酷道だったツールマレー峠が初めてコースに取り入れられてから100周年となる2010年のツール・ド・フランスでは、
両側からの登坂が設定され話題にもなりました。
このツール・ド・フランスの歴史を多く持つツールマレー峠において、東側からのヒルクライムに挑戦してきました。
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フランス南部の大都市トゥールーズ(Toulouse)から列車に乗ることおよそ2時間、
奇跡の泉で有名な巡礼地ルルド(Lourdes)に到着しました。
150年ほど前にこの地で一人の少女が聖母マリアを見たと伝えられており、
奇跡の泉を求めて毎年600万人もの巡礼者が集まるそうです。
町には看護婦さんや病気を患っている人達が多く、一般的な観光地とは違った雰囲気を持つ町です。
翌日、ルルドのホテルに荷物を預けて出発しました。
まずはD937を東へ。
あたりは放牧地となっており、たくさんの牛がのんびりとした朝の時間を過ごしていました。
その風景の遠く後方にはピレネー山脈の連なりが見えていました。
ツールマレー峠への登り始めというところでのスポーク折れというアクシデントに見舞われましたが、
なんとか見つけた地元のショップで修理してもらいました。
いざ、ヒルクライムの始まりです。
ピレネーの田舎らしい石造りの民家が点在する静かな風景の中をひたすら登っていきます。
ヨーロッパの峠にはよくあるのですが、頂上まであと何キロという標識が1km毎に立っており、
自転車が文化に根付いていることを実感させられます。
峠まで残り7kmの標識を過ぎて標高がいよいよ高くなると、
あたりの木々がなくなり、壮大なピレネーの景観が広がってゆきます。
天気が良い日にはPic du Midi de Bigorre(標高2877m)も見えます。
この山の頂上には天文台が建っており、そのすぐ下までは未舗装の道が続いているらしく、MTBで登っていくサイクリストもいるようです。
いくつかのトンネルをくぐり、ラ・モンジー(La Mongie)を通過していきます。
このラ・モンジーはウィンタースポーツのメッカとなっているためここまでは広く走りやすい道が続きました。
ラ・モンジーを過ぎて道が狭くなってくるあたりで放牧の馬でしょうか、二頭の馬が道を闊歩していました。
追いかけられたりでもしたらひとたまりもないでしょうね。
氷河が削ったような山を背後に登っていく道には、
ツール・ド・フランスに使われた直後ということもあり、選手を応援する落書きが数多く残っていました。
多くの観客の合間を縫って、颯爽と駆け抜けていく選手達の姿が目に浮かぶようです。
最後まで緩むことのない道を登り切り、標高2115mのツールマレー峠に登頂。
峠の頂上には初代首位通過選手であるオクタヴ・ラピーズ(Octave Lapize)や、
過去ツール・ド・フランスのレース運営者を務めたジャック・ゴデ(Jacques Goddet)の銅像がありました。
また峠にはレストランもあったので、そこで休憩するのもいいかもしれません。
頂上でしばらく景色を堪能していると続々と自転車乗りが登ってきました。
本当に自転車乗りが多い。
後は1400mもの標高差を一気に駆け下りるダウンヒルが待っています。
100km/hにもなるといわれるツールマレー峠の下りは、
空気が薄いためすぐにスピードが上がっていく感覚が確かにあり、
ガードレールも無い道での、気を抜くと崖の下というスリリングさと爽快感を楽しみました。
下りの途中には羊の群れが道路を半分占拠しているという、微笑ましくも危なっかし光景もみられました。
ピレネーではレース中に羊が乱入する事もあるくらいですので、おそらくこの程度はよくあることなのでしょう。
ルルドからツールマレー峠越えでのピレネー一周は、およそ100kmの道のりとなりました。
景観→★★★★★
登坂距離→★★★★★
平均勾配→★★★☆☆