一度行ってみたかったのだが、この度走りに行く機会があって日本最凶の峠道を味わってきた。
暗峠(大阪側)
標高差 400m
距離 2.4km
平均斜度 17.0%
生駒山を大阪から奈良に向かって真っ直ぐ駆け上がる道。
あまりに急勾配すぎるせいで山岳トレーニングの役には立たず、もっぱらネタ峠になっている。
壁のような坂、荒いコンクリ簡易舗装に深い溝、車同士は離合困難な道幅…これが国道っておかしい。
スタート後500mで、ロードバイクで来たことを後悔した。
勾配がわずかに緩む頂上付近まではずっとインナーロー34x25Tに入れっぱなし。
不用意に踏み込むとすぐに前輪が浮き上がってしまうため、
姿勢を起こし、サドルの後ろに腰を落ち着け、腕でハンドルを引きつけ…
といったセオリー通りのスタイルではバク転必至。そもそもトルクが足りず登れない。
通常はサドル先端を尻に突き刺す前乗りシッティングで体重をかけながら縦に踏み下ろし、
脚が疲れてきた時や特に急勾配の場所ではゴールスプリントのごとくハンドルにかぶり付くようにダンシングと、交互に繰り返す。
それでも徐々に最大トルクを失っていき止まりそうになってしまうが、足を付いたら負けだと思ったので、辛くなったら蛇行したり、道幅を円を描くように1回転したりして脚を休ませる。
たまに車が通るので最低限やり過ごす余裕は持っておかないと立ちゴケしかねない。
車の多さは、週末の昼で1時間に10~15台だった。
あれこれ手を尽くし脚を使い、なんとか足つき無しで登頂。
途中で止まらないように坂を登ったのはどれほどぶりだろうか。
子供の頃、自転車で坂道を登ったときのことをふと思い出して懐かしくなった。
頂上には土産物屋と石碑がある。
せっかく行ったのに写真はこの1枚きり。途中で撮影する余裕はどこにもなかった。
タイムは20分を切りたかったのだが、20分59秒。
心肺能力はまだまだ余裕があったのに、脚力を使いきってしまいペースを上げられなかったのが悔しい。
勾配がきつすぎてギヤが足りないので、本気でタイムを狙うならMTB用スプロケか30Tインナーチェーンリングを装備し、
ケーブルカーのごとく、上りで正しい乗車姿勢がとれるようにサドルとハンドル位置を調整した暗峠スペシャルバイクを用意せねばならないだろう。
今ではずいぶん少なくなったものの、コンパクトクランクが世に出始めた頃は「こんなものはニセモノだ。ロードレーサーじゃない」
と宣う頭の硬い方々がわんさかいらっしゃった。というか周囲にいる。
そういった人達には是非ここを訪れていただきたい。大半は考えを改めるんじゃなかろうか。
…それでも、インナー39Tで平然と登ってくる豪脚もいるんだろうけど。
眼下に広がる景色とか、登り切った達成感とか、爽快なダウンヒルだとか、峠の魅力はいろいろあるが、
暗峠は凶悪な坂道そのものに意味がある道である。
速いか遅いかではなく、目の前の坂道を乗ったまま登れるか足をついて押すか、といった単純な話。
自分の限界と向きあってようやく登頂したとき、
人生観はとにかく、次に買うギヤの歯数くらいは変わるかもしれない。
評 価→★★★★☆ 話のネタにどうぞ。
余談。暗峠を越えて奈良側に降り、土産に奈良漬を買って帰ったのだが、
国道308号線のプチ暗峠では大いに苦しんだ。激坂ネタは暗峠だけでやってほしかった。