えい出版 旅する自転車の本
購入価格 ¥1,600+税
極めて危険な本。 何たって、表紙にRene Herse(ルネルス)のランドナーだ。
「オレを陥れようとしているのか???」
と思ったくらいだw
要するに、ランドナー/スポルティーフ/ミニベロ/ツーリングバイク等で自転車旅をしよう、 その為の自転車選び(初心者寄り)と言う本。 ともすればマニアックで底が見えないランドナーの世界を、分かり易く説明してくれている。
ロードやMTBを組み立てる本は山のように存在しているが、ランドナーを組み立てる本なんて、 今時分はどこにも無い。 そんな意味では、ランドナー初心者向けパーツカタログとしても、なかなかに優秀な本。 (「あの」白鳥和也氏ですら知らなかったパーツがあるとのこと)
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この本、冒頭でランドナーってなんじゃらほい?と言う紹介がある。 ランドナー・MTB・ロードのプロコン表を作成しているのだが、あまりにランドナーがプラス過ぎ。 その露骨な加点ぶりに、思わずバンクーバー五輪女子フィギュアスケートSPを思い出してしまったw
更にその次には、「ランドナーコレクション」と題して、「魔物」と呼ばれる6台を紹介している。 Rene Herseのランドナーを、熱烈なエルスファンのオーダーに応えて、東叡社がレプリカとして作った自転車が最初。 必要なパーツは手作りされたこの自転車に(バイクでは無く自転車だ)、自分は息を呑んだ。
この自転車はあまりに美しすぎる。
Herseならではの3アームチェーンリングは当然のように再現。 ハンドメイドのリジッドルネルスタイプ(レバー直引き式)のフロントディレイラー(ヒロセでも作られていた)、 及びリアのシクロランドナー5Vの組み合わせは、自転車の機械における「美」とは何なのかを、改めて考えさせてくれる。 考えなくても宜しいがw
その後にはALPS、ALEX SINGER、WATANABE、TOEI(スポルティーフ)が出てくる。 ALPSは重戦車の趣、ALEX SINGERはHerseとは違ったエスプリを感じる。 WATANABEは26HEランドナーの嚆矢で、26HEでありながら完璧なバランス。 TOEIのスポルティーフなどは、現行ロードパーツを使って組み立てられており、現代版のスポルティーフを作る際に、 とても参考になると思う。いや、作る予定は無いんだけれど。多分。きっと。
正直、この「ランドナーコレクション」の特集を見るだけでもこの本の価値はある。
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TOEIにランドナーをオーダーするページもある。 プロセスがレポートされており、こちらもオーダー気分で楽しめる。
が、自分が気に入ったのは、その後の「古いパーツでランドナーを作る!」というページ。 ヤフオクで手に入れたランドナーフレームに、ショップやフリマやオークションでパーツを揃え、 1台のランドナーを組み上げるというもの。 色々と苦労して作りあげたランドナーで旅に出る、是非自分もやってみた・・・あ、いや、やめておくかw
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この本は、ランドナーだけでは無く、旅に適した自転車として、ミニベロや折り畳み自転車も紹介している。 Bromptonを使って「ミニベロで輪行の旅」なんて企画も行っている。
ミニベロ、特に折り畳み自転車と輪行は、とても相性が良い。 エイ出版社はこのことを良く知っている。 他のムックでも、折り畳み自転車を使った、気ままな旅を提唱している。
通常の自転車で輪行すると、電車の車内で結構気を遣うものだ。 ランドナーをフォーク抜き輪行すれば、かなりコンパクトになるので、まだマシだが、 それよりも、Bromptonを畳んだ方が間違いなく小さい。 しかも、輪行に要する時間は、Bromptonならば2分で終わる。 (折り畳み20秒、ペダル外して、輪行袋被せて、輪行袋カバーとペダルをバッグに放り込んで計2分)。 自分はこれのおかげで、5分後に出発する東京湾フェリーに楽々間に合ったことがある。
何も、自走しなきゃ旅じゃ無い、距離を走らなければ旅じゃ無い、と言うものでもあるまい。 例えばBromptonを持って、内房線で房総方面へ行く。 房総をのんびりと、せいぜい10km程度走り、鮨でも食ってフェリーで久里浜へ渡る。 久里浜から横須賀へのんびり走り、軍港めぐりの船で遊び、横須賀線で西大井の駅まで戻り、家までBromptonで帰る。 これは、立派な日帰り旅だ。
そんな旅に向いた、「多少走れる」折り畳み自転車やミニベロを紹介している。
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トドメは、この世界では知らぬ人のいない、世田谷の長谷川自転車商会の店主:長谷川弘氏のリアディレイラー談義。 ユーレーとサンプレについて、語り始めて止まらないw 自分なんて、ラの世界ではペーペーのペーペーで、それこそこの本の内容が丁度良いくらいなわけだが、 そんな自分には実に勉強になったディレイラー談義であった。
長谷川氏は絵も描かれるのだが、このページにも長谷川氏の洒脱な絵が載っている。 これが又、味がある絵である。 玄人はだし、と言うか、玄人と言って良い。
作家の故池波正太郎氏も玄人はだしの絵を描いていたが、近いものを感じる。 そう言えば、池波氏も(自転車には乗らなかったが)旅が好きであった。
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ランドナーに興味がある人は迂闊に近づかない方が良い本w 一方で読んだ方が良い本でもある。 判断はご自分でw
価格評価→★★★★★ 本自体は安いが、これで目覚めてルネルス買っても知らんw 評 価→★★★★☆ 上手くまとめられたムック。とっかかりとして丁度良い。
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