購入価格 失念
既にモデルチェンジしてしまった旧品のレビューと言うのもどうかと思いつつ、同ブランドのペダルを気に入って長期運用しているものの視点であれこれ書いてみる。現行eggbeaterとの共通点も多い、と信じる。
まずアウトライン。eggbeaterシリーズのペダルには[単純な構造][軽量][着脱][耐久性][精度]の5つの観点で特徴があるといえる。それぞれメリット・デメリットは錯綜していて、自分でも整理しきれていないので、以下の文章はまとまりありません。ご勘弁を。ちなみに、オフロードやシクロクロスの経験はないので、このペダル本来のフィールドではなく、あくまでオンロードでの使用に基づいたレビューです。
・単純な構造
まず上写真をご覧いただきたい(古い写真の使いまわしで失礼)。
これは完全なオーバーホールが可能であることを意味している。特別な工具無く、ユーザーレベルで全バラが可能なペダルは多くないのではないか。バラすのは比較的簡単で、スピンドルシャフトとベアリングを抜いた後、金属製のスリーブを押し出すだけである。一方で、組み立てにはちょっと知恵の輪的な感覚が必要だ。
また、部品数が非常に少ないことも重要な点である。ベアリングやダストシールを含めて、わずか13点だか14点だかの部品で構成されている。
・軽量
実測値などは前のレビューワにゆずる。ペダルとしてはわりと軽量の部類にはいりそうだ。この中級グレードでシマノのMTBペダルのフラッグシップよりも軽い。ズルい比較だが、デュラエースのカーボンペダルよりも軽いのである。なお、チタンを多用した上位モデルはこの比ではない変態的な軽さのようである。
ただし真鍮製のクリート、比較的重いSPDシューズの使用が前提ということで、足先の総重量はロードペダルに負けてしまうのだけど。
・着脱と使用感
ステップインも適当、リリースも足首をひねってやれば簡単に外れる。パニック時にも問題なく外れてくれる。立ちゴケしたのは、私にとって先代のcandyを使い始めたごく初期、しかも重心がペダルを外そうとしたのと逆方向に流れてしまったときだけである。
なお、ステップイン、もといエンゲージの方法は多様だ。ルックタイプのペダルと同じようにクリートの前側を引っ掛けて踏み込むのが標準だが、クリートのあたりで前へでも後ろへでも擦り付けてやれば、勝手にケージが回ってクリートが入ってくれるし、クリートの一部をケージに引っ掛かれば、外すのと逆アクションで、足首でひねり込むような入れ方も可能。真上から踏んでやる感じでも入ってくれたりする。そんなわけでキャッチミスはあまりない・・・エンゲージできてなくても、ペダリングしつつ足裏で探ってゴチョゴチョしてやれば入るから、レースみたいな場面では周囲に集中できていいんだろう。
おそらくこの理由から、それから恐ろしく泥はけが良さそうなので、シクロクロスを観戦しているとすごく使用率が高いと感じた。
一方で、「入った」感覚が薄いのがちょっとした欠点。
この感覚は、独自の思想によるクリートの保持方法によると思う。
ゴツいスプリングは、クリートをつかむウイング部分を直交方向に保持する役目を受け持つ。分かりにくい説明で恐縮だが、クリートは互いに直交する2つのウイングによってできる檻状の空間にはまり込むように保持されていて、スプリングのテンションで挟み込まれる感じではない。そのためか、クリートをがっちり保持される感覚は薄い。クリートのサイズはシマノSPDと大差ないが、この固定感覚の薄さが、先人が「1点固定」とコメントした感覚につながるものと思う。また、スイングとわずかにアキシャル方向への遊びがある。膝にやさしいTimeと似た感じ?いやそうでもありませんでしたね。
自分はビンディングペダルはcrankbrothers一本でやってきたこともあり、一点固定にはあまり不快さを感じなかった。けっこう固いカーボンソールのXCレーシングシューズを使用しているが、これはダイレクト感がありつつ一点からの突き上げを感じにくい組み合わせだと思う。プラスチックソールのロードツーリングシューズを履いていた頃は、突き上げ感が少なからずあった。
・耐久性は低い?
slグレードだと回転を受ける部分は外側がシールドベアリング、内側(クランク側)がプラスチックブッシュである。水やホコリの侵入防止も、ゴムシールとキャップのOリングだけで、あまり充実した体制とは言えない。シンプルで、後述する分解メンテナンス可能な構造から、メンテナンスを実施することで性能を保障していると考えれば良さそう。
軽量で耐久性が低いとなると一発屋的機材という感じがしてくるが、個々の部品はステンレススチール、軸など一部がクロモリということでやわなペダルではない。単に性能維持に手のかかる機材というだけだろう。たしか数百時間の走行、あるいは数千キロの走行ごとの分解メンテナンスが、メーカー自身によって推奨されている。で、話は次項につながる。
・リビルド可能
低い耐久性の裏返しとしてリビルドがある、と考えれば良い。単純な構造が幸いして、メンテナンスは楽である。リビルドキットは比較的安価(国内価格でも1500円程度だ)に入手でき、軸周りのパーツは入れ替えることができる。ただし、アルミ製のキャップが外しにくい。かなり柔らかい素材なので、駐輪時につっかえ棒にしたり引っ掛けたりした結果、リビルドをするころにはネジの頭が傷ついてしまっているのである。
ちなみに、メーカー、国内代理店(ライトウェイ)ともに補修パーツの供給体制はきちんとしているようだ。かなり詳細かつ古いモデルに関してもリストが存在している。在庫しているのかどうかは不明だが。
・ガタが出やすい
若干のガタが宿命的に発生する。残念ながら、ガタが出ることは仕様の一つと考えるべきである。
まず一つ。ケージ部分。二つのウイングとスプリングを重ね合わせて金属のスリーブを押し込んで形を作っているだけなので、部材の隙間によるガタが避けられない。かと言ってここの隙間を完全に追い込んでしまうと、わずかな砂埃でロックされてしまうだろうから、これはそういうものとして受け入れなければならないだろう。この部分のガタは、乗車して分かるものではない。
もう一つ。ケージとクリートの間。これもミリ以下だが、スプリングの力で挟み込んでいるわけではないので、その分ケージの中でクリートが自由である。この部分のガタは、場合によってはペダリングのベクトルが上下切り替わる時に体感できてしまう。
クリートが自由になりやすい状況としては二つ。クリートの先端の摩耗と、クリートとソールのノブとの位置関係である。前者はガタが出るのが想像できるだろう。後者の場合、クリートが高く突き出ているとペダルに深く入りすぎるようになり、ケージの中で暴れる余地ができてしまう。エンゲージした状態でペダルとシューズのソールがわずかに触れるか触れないかの状態にすることが望ましい。ちなみにクリートが自由過ぎると、スプリングに負担がかかるらしい(ソース:
http://velonews.competitor.com/2014/08/bikes-and-tech/technical-faq/technical-faq-shoes-cleats_339797)。また、外れやすくもなる。二つの条件が揃ったとき、不意に走行中に外れて焦ったことがある。まあ、そうは言ってもcrankbrothers歴4年、1万6千km走っていてタダの一度である。きっとペダリングが乱れたということもあるんでしょう。
クリートが引っ込み過ぎている場合には、エンゲージしにくくなるのかな?その場合はノブを削るか、調整シムを入れてクリートの位置を高くするかすればよい。
このへんは、性能をきちんと発揮させてやるために手間がかかるということで、大きめの欠点である。しかも、ミクロレベルでは状態は変わっていくから、一度セッティングを追い込めばOK、というものではなさそう。私はあまり深く考えずに使ってましたが、
それが不快感につながっていたかも分かりません。
結局のところ、最後の欠点が気にかかり、ロードペダルを常用すべく乗り換えてしまいました。やはり、しっかり踏める感じは別物です。出戻りはまだしていませんが、独特かつイージーなペダルシステムなので、状況に応じて使っていきたいと手元に残してはいます。何といっても、ペダルの向きをまったく意識しなくていいエンゲージシステムは、最大の魅力です。
価格評価→★★★☆☆(ペダル自体は良くても、クリートが・・・)
評 価→★★★★☆(唯一無二、ハマれば最高?)