購入価格 ¥7400
Ambrosioの軽量チューブラ・リム Cronoが鳩目から壊れました。リヤのフリー側です。走行距離は11300kmあたり。
本レビューは、この件に関するレポートです。
今回のトラブルは全く予想していませんでした。Cronoが軽量といっても、ロード用リムの選択肢がチューブラ・リムだけだった時代の軽量リムと比べれば特に軽い部類には入りませんし、今どきはモダンな製造ラインでしょうから、壊れるなどというトラブルは、リヤホイールを片面ラジアルといったイレギュラーな組み方で組んだりでもしない限りないだろうと思っていました。今よりはるかに背筋力があった(210kgfとか(笑))若いころ、Cronoよりも軽量なリムで思いっきり踏み倒しても壊れるなどということはなかったです。
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これをご覧ください。
左側が通常の鳩目部の様子。右側が壊れた鳩目を撤去したあとの様子。
何がどうなってこうなったのか、リム本体が裂けています。
鳩目はどうしたのか。
それは・・・こうなっています。
破片のすべてを回収できているわけではないのですが、表側(というかスポーク側)の鳩目の細い首が円環状に切れて、裏側(タイヤ接着側)の大きいほうも円環状に捥げています。
Ambrosioのサイトを参照すると、下図左のようなリム断面構造が示されています。これだと鳩目部分がワンピース構造になっているように見えますが、実は右側の図が実態に沿っています。これは健全な鳩目をバラして確認済です。鳩目は表と裏の2ピースから成り立っており(両鳩目:double eyelet)、表側の鳩目ピースで裏側のピースとリムをカシメることで強固に固定しています。右側の図はAmbrosioサイトの図を私が改変したものです。
で、どこが切れたかというと、次の図の赤線の部分。
スポークのニップルは、表側のピースを引っ張るのですが、この表側ピースが裏ピースを引っ張るため、結局、スポークテンションは、大きい裏ピース側と表ピースが分担して受けることになります。リムへの荷重も裏表で分散されるため、強度的に有利になります。カシメるときの条件によっては、裏側のピースが大半のスポークテンションを受け持つ、すなわちリムの裏側がスポークテンションの大半を受けることになるかもしれませんが。。。
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仮に、リムの裏側がスポークテンションの大半を受けているとすると、鳩目が切れることで、リム裏面の広い面積で受けていたテンションが表ピースの狭い部分で受けることになり、したがって、リム裏面ではなく表面でテンションを一手に引き受けることになります。裏ピースとリムの接触面と違い、表ピースとリムの接触面は狭いので、リムに作用する応力が大きくなり、・・・破壊に至る、という仮説を設定することができます。
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事の始まりは、鳩目の破壊ですが、表ピースと裏ピース、どちらが先に切れたのでしょうか。一体、どこから亀裂が入ったのか?
いました、亀裂が。。。
これです。
というわけで、まだ健全と思われた別の鳩目にも異常が2件、発見されました。
上の画像は裏ピースから斜に覗いたところですが、表ピースの折り返しフランジ部に、2件とも全く同じような様式の亀裂が見られます。この亀裂は、フリーに近い側です。しかし、この亀裂が進行してもこの部分はニップルと裏ピースの折り返しフランジ部で挟まれているため、なかなか破断離脱できません。
先に切れたのは実は、裏ピースです。先の断面図で示すと赤線2本のうち、下の赤線で切れたはずです。
これで、リム裏面の広い面積で受けていたテンションが表ピースの狭い部分で受けることになり、したがって、リム裏面ではなく表面でテンションを一手に引き受けることになり、スポークテンションに耐えられなくなり表ピースが離脱する際に、亀裂が入っていた表ピースフランジも破断する、という順番でしょう。恐らく、ですが。
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では、壊れた1件と壊れかかったこの2件。スポークテンションが他より高かったのか?
そうでもないんです。次の図は、ホイールを組んだ時のテンション。右のレーダーチャートの外円が、フリー側のスポークを示します。
円周方向に記した数字1から16のうち、これの1番が壊れたところ、5番と15番が亀裂が入っていたところです。テンション(単位はN)が他と比べて高いというわけでもなく、ごく平凡な値でしかありません。
不思議です。
というわけで(もありませんが)結局、Ambrosio NEMESISを購入して新たに組んでしまいました。
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Ambrosioチューブラ・リムの鳩目破壊。
こういうケースは極めて稀であるような気がします。製造工程に起因するロット不良、もしくは全くの単発不良である可能性もあります。
Amborsioでのこういった事例、どなたか実際に経験した方、いらっしゃるでしょうか?
同社の上位クラスであるNEMESISも多分、同じ鳩目を使っていると思われます。現在、計3台のロードすべてでAmbrosioのチューブラリムを使っているので、少々気がかりではありますが、タイヤ交換の際に、裏からよく観察してみようと思います。
価格評価→★★★★☆
評 価→★★★★☆ じっくり観察して勉強になりました
年 式→2011