購入価格 ¥31,170円 (国内通販)
ある日、HOZAN の HP をなんとなく眺めていて衝撃が走った。
振れ取り台の名機、HOZAN C-330 が無くなっている…だと!?
後にサイスポ2017年8月号でも発見。やはり新商品のようだ。
そこには、見慣れぬ白い振れ取り台の写真が載っていた。ボディは鋳物からパイプの溶接品に変わり、まるで骨太な固定ローラのよう。そこから銀色の丸棒がにょきにょき生えていて、リムに当てるネジの代わりにピンがクランプされている。ここに市販ののダイヤルゲージ等も取り付けが出来たりするので、大幅に拡張性が上がっているようだ。ふむ、これは確かに良さそうだ。
そんな新型の振れ取り台の華々しいデビューの陰で、長年に渡りマイナーチェンジを繰り返しながら、老舗ショップや多くの自転車乗りのホイールを文字通り支え、愛され続けたC-330は、世代交代によってひっそりとその姿を消したのであった。
でも、新型が出たからといって私が名機C-330を手放すはずはありません。私は一生この振れ取り台の世話になると決心して購入しましたし、むしろ愛着が増したというモノです。
私がC-330を購入して最初のレビューを投稿した時点から5年程が経ち、その間何本ものホイール製作や振れ取りメンテに活躍してくれました。
改めてレビューしたいと思います。
【愛機のご紹介】
こちらがウチのC-330。
傍らに PARKTOOL のTM-1スポークテンションメータと赤いニップルレンチ、ホーザンのC-335リムセンターゲージを従え、強烈な存在感を放ちながら我が家の工房に鎮座する巨大な鉄塊です。時々ネジ部にチェーンオイル等を吹いている以外ほぼノーメンテ。台座部分に何か液体がかかったのか、変な錆び方をしています。
余りにも錆が進行するようなら錆取りと錆止めをして、ついでに別の色にでも塗ってあげようかと思っていますが今のところ大丈夫そう。他は買った時と何も変わっていません。
【使い心地】
この振れ取り台を『精度が高い』と絶賛する人は多いと思いますが、工具の作り自体は正直かなり粗いです。前のレビューにも少し書いてますが、何もクランプしていない状態であればガタだらけですし、佇まいは肉眼レベルでも左右非対称です。よく見ると鋳物に"す"(材料が充填されていないガス溜まり)が発生した痕跡もあり、個体毎に手作り感や個性がある模様。
構成部品の多くが鋳物(鋳鉄)で出来ているので、まぁこんなもんといえばこんなもん。
いきなり精度が悪い印象を与えそうな内容から始まりましたが、これらはホイール組みの作業性には全く影響はありませんし私自身全く気にしてません。後で詳しく書きますが、この振れ取り台自体が高精度なのではなく、この振れ取り台を使えば作業者の納得がいくまでどこまでも高精度にリムの振れを取り除く事が出来るので、より高精度なホイールを組む事が出来る工具である、という表現が正しいと思います。
ホイールの脱着はネジ式なので取付け取り外しに若干手間が掛かりますが、様々な幅のハブへの対応の他、右に寄せたい、左に寄せたい、といった作業者の要求に柔軟に応えてくれます。鋳鉄は密度が粗く隙間だらけの素材なので表面が程良くざらざらしており、ホイールや振れ取りに使うアーム類の固定時に程良い摩擦を生んでくれます。そのお陰もあって、ハブの固定ネジがハブ軸を捕えればネジが勝手に緩んでハブがずれる事は絶対に無いです。ホイールをクランプしてホイールに力を加えても微動だにしません。振れ取りの時にリムに当てるネジが付いたアームも(HOZANのHP内の新型振れ取り台の解説にはリムに当てる部分を接触子と書いてますが正式名称は知らんw) も、一度固定してしまえば、多少撓む事はあっても必ず元の位置に戻ってきます。
ここは声を大にして言いたいのでもう一度書きます。
絶 対 に 動 き ま せ ん 。
このホイール固定時の絶対的剛性こそが名機C-330の真骨頂。
ホイールの振れを自分の納得のいく極限のレベルまでいくらでも追い込んでいく事が出来ます。
【考察】
高精度なホイールを組める秘密がどこからくるのかというと、素材が鋳鉄である事に起因すると私は思っています。鋳鉄の特性は普通の鋼鉄等に比べ、硬く、脆く、振動を伝えにくく、撓みにくい。特に、撓みにくい(=変形しにくい)という要素は、ホイールの振れ取りをやった事がある方ならお分かりかと思いますがメチャクチャ重要です。加工者の腕次第で1/1000mm単位の精密加工も実現出来る汎用工作機械(普通旋盤、普通フライス盤、ボール盤等)のボディも、同じ理由から鋳鉄製です。
つまり、 HOZAN C-330 は高精度な加工が出来る汎用工作機械と同スペックの材料で出来ている物凄い振れ取り台という事になります。私の腕ではまだまだその性能を出し切れません。多分、物凄い腕の人が高精度のダイヤルゲージを使って超本気の振れ取り作業でもしない限りそのスペックを出し切れないかと(^^;
鋳鉄という素材は比較的安価で、上記の通り工具用途としても大変優秀な素材ですが、製品の型(表面の仕上がりを見る限り、昔ながらの砂型かな?)を作る手間はあるので生産性を考えて次期モデルからパイプ溶接に切り替えたのかと推察します。
本レビュー投稿時点ではまだあちこちに在庫があるようですので、どうしてもこの鋳鉄製の振れ取り台が欲しいとお考えの方はお早めに。
【総評】
3万円少々で買えてしまった一生使える最強の自転車ホイール組み専用工具。5年使い続けて一切不満無し。この性能の恩恵を一生受けれるのかと思うと大変心強いが、自分がその性能を出し切れる腕前にならないといけないと思うと若干プレッシャーだ。(笑)
本当にこれを買っといてよかった。
価格評価→★★★★★(一生使えると考えれば安い買い物。)
評 価→★★★★★(最強のホイール工具。)
<オプション>
カタログ重量→11kg