購入価格 ¥9000円弱@wiggle
馬鹿野郎!
パッドの厚みがどうだの、お股の痛みがどうだの表面的なことばかりにとらわれやがって・・・
サドル選びの旅ってのはなぁ、極限状態をくぐった先にある、もっと殺伐としたものなんだよ!
ここまで啖呵を切ってしまったからには、俺の体験談で納得のいく結論を示さなければ、
このサドルをレビューした7人の先輩たちは納得してはくれないだろうな・・・
あれはロードレースで結果が出始め、俺が最も血気盛んだったころの話だ。
その坂を知るものは「壁」と称する激坂がある。
15%を超える激坂が延々4km続く、まさに地獄の上りだ。
近隣の脚に覚えのある自転車乗りが次々と訪れるが、坂を下りてくる奴らの顔は一様にうつむいており、いまだ登頂達成者がいないことを物語っている。
もちろん俺も例外ではなく、この坂に出会ってから1年が経過したが、まだ足を着かずに完走する事ができずにいた。
10月から約2ヵ月、俺は秋のキャンプと銘打って特別なトレーニングをした。
この激坂に打ち勝つためには、並みのトレーニングをしていてもダメだ。
俺は筋力トレーニング、自分自身とバイクの軽量化など、ありとあらゆる手段を講じた。
そして極めつけは、サドルを撤去したことである。どうせすぐダンシングになるのである。
それならば、いっそのことサドルを取ってしまえば、一気に200gの軽量化だ。
そして何より、これでもう腰を下ろすことはできない。
その自ら退路を断った戦いぶりに、俺の気持ちは昂った。
そしていよいよその日が訪れた。
12月5日、朝9時、晴れ。最低気温8度、最高気温18度、北東からの微風の予報。
俺はストップウォッチのスイッチをONにすると、勢いよくスタートした。
1km地点。すでにスタート地点の勢いはなく、何とか体重をかけてペダルをこいでいる状態だった。
足が鉛のように重い。もちろんギアはとうの昔に使い切っている。
そして2km地点。とうとう脚が止まってしまった。しかし腰を下ろすべきサドルはない。
上腕三等筋がふるえている。腹筋が上半身を支えきれなくなって悲鳴を上げている。
ハムストリングスには乳酸があふれ、これ以上の運動を拒んでいる。
もはや腰の位置を高く保つことは不可能であり、俺の鍛え抜かれた大臀筋と大臀筋の間にシートポストが容赦なくめり込む。
も、もうだめだ・・・このままでは俺の大臀筋の筋繊維が粉砕されてしまう・・・俺の選手生命はこれで終わりなのか・・・
その時である。後方から追い上げてきた男が、俺の窮地を悟ったのか背中を押してくれたのである。
力尽きる寸前だった俺は、そのプッシュによって息を吹き返し、また漕ぎ出すことができたのである。
なんとか一命を取り留めた俺に、男はこう言った。
「己を追い込むことは確かに大切なことだ。
しかし、いくら肉体を鍛え抜こうとも、いつかは必ず限界が来る。
サドルというのは、そんなときの体への優しさなんだ。
俺が戦ってきた国には『サドルと彼女は大切にしろ』ということわざがあるくらいだ。
お前さんはもっと自分の肉体に対して優しくなっていいんじゃないかな」
そう言い残すと、彼は小気味よいダンシングで去っていった。
彼の後ろ姿、特に真っ白なサドルが今も目に焼きついている。
サドルとは極限状態に挑む自転車乗りにとっての最後の生命線なのである。
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ロードに乗り始めて最初の2年を完成車付属サドル(しかも、うち1年はレーパン非着用)
で過ごしたせいなのか、あまりサドルにこだわりのない私。
わりと、どんなサドルでも不満を感じることはありません。
メインで使っているサドルは、初めて別途購入したSELLE ITALIAのSLR、そしてその後継として今回購入したのが同じくSLRの新型である。
購入動機としては
①白いサドルをつけてみたかった
②なんか最近、旧SLRがへたってきた気がする
③今使っているシートポストが無駄に長い。短いのを買って、軽量化したい。ついでに、サドルも買っちゃえ
後悔はしていない。
以下、いいところと悪いところを3つずつ(やった、初めて3つずつ集まった)。
○軽い
公称180g、実測185g。まぁ信頼の置ける数値かと。
○しなる感じ
これが、旧SLRで最近感じなくなっていた。
決してサドル表面のクッションがぶにょぶにょ変形して衝撃を吸収しているのではない。
薄く硬いベースがしなって、衝撃をいなしてくれる感覚。これが好きである。
○腰のおさまりのよさと移動できる自由さのバランス
後方でどっかり腰を落ち着けてトルクをかけてペダリングするもよし、やや前方に移動して高回転で回すもよし。
これは旧SLRから継承されている美点。
このあたり、後方ガッチリサポート系(SELLE SMPのストライクあたりですかね)や
腰の位置自由自在系(フィジークのアリオネが代表選手か)あたりとの比較ができる人の話もきいてみたいです。
▲硬い
いいところで「しなる」と書いた。
クッションで衝撃を吸収するものではないとわかってはいるのだが、旧SLRよりも硬い。
旧SLRは、ジーパンでもさほどストレスを感じず乗ることができた。
しかし、これはレーパン非着用だと痛くなりそうだ。
レーパン着用前提、ならば正しい姿なのかもしれないが。
▲質感
紙粘土みたいなサラっと、ザラっとした質感。
旧SLRのいかにも革の質感のほうが手触りがよくて、好きだ。
▲ちょっと、つくりが雑?
にかわ?がタレたような跡が。
また、革製品だから仕方が無いとは思うが、細長いキズというか、シワもあった。
白だから、目立っているだけかもしれない。
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価格評価→★★★★☆(更なる高級サドルを欲しいと思わせない)
評 価→★★★★☆(良いです)
<オプション>
年 式→2011
カタログ重量→ 180g(実測重量 185g)