ミハエル・クルムのレーシング「超」運転術 <改訂版>
購入価格 ¥1,429円+税
本書は四輪モータースポーツドライビング教本で、何度か改訂・加筆されながら出版され続けているロングセラー。 内容的には入門レベルの専門書ぐらいの難易度の本となっていますが、物理に強い人や工学部出身者、または重度のクルマ好きであれば普通に読めるかと思います。 私は自動車工学系出身なので学生時代の復習本も兼ねています。(笑)
では内容をざっくりご紹介します。
================== 【 目 次 】
チャプター1 基礎知識と荷重移動 チャプター2 伝統的な運転術 チャプター3 完璧への努力 チャプター4 競争における知識 チャプター5 マシンのセットアップ チャプター6 その他の必要な知識
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という内容。 たった250ページの中に、
・スポーツドライビングの基礎と応用 ・自動車物理の基礎 ・乗り手目線の自動車工学 ・レーシングドライバーとしての心構え
が凝縮されている。恐ろしく内容の濃い本だ。 各ページには著者が過去に在籍したチームから提供されたものと思われるデータロガーの生データやドライビングシミュレーションデータが惜しげもなく大量に使用されており、著者が競技中に感じた感覚と、無機質かつ残酷なライバル選手との比較データが示され、それらを照らし合わせつつ解析され、レーシングドライバーが身に付けておくべき知識とテクニックについて著者の考え方が述べられている。 また、著者と交流のあるレーシングドライバーとの会話から得られた、性格別、運転スタイル別のドライビングの癖といった話も出てくる。
モータースポーツの基礎知識は全てここにあると言っていい。
基礎知識とヒントだけ与えるので後は各自で考えてくださいというスタンスの"考えさせる系"の本なので、読者は頭の中で常にクルマをドライビングする事を要求される。その内容の濃さゆえに、本気で内容を理解し習得しようとするのであれば1日何ページか読んでちょびっとその辺をドライブし、内容が実感出来たら次に進むという作業が必要。 読むだけでも物凄く疲れます。(←誉め言葉) 私はこういうタイプの本が大好きです。
ドライビング教本としては間違いなく名著です。
乗り物の挙動を支配する物理法則は地球上に1つしかないのでもちろん自転車への応用も可能。 様々なコーナーでのライン取りと、ブレーキング⇒ターンイン⇒立ち上がりの関係性や、加速減速の挙動(言い換えると前後の動き)はそのまま自転車に転用できます。 マシンのセットアップに関する話も、タイヤの空気圧の話とサスペンション(減衰とバネレート)の話はフルサスMTBの足回りのセッティングに悩むライダーには目から鱗でしょう。ロード乗りでも、フレームの撓りと減衰特性といった話題や、路面のギャップを吸収する際の身のこなし(自分の体をサスペンションにする感覚)の参考になります。もちろんタイヤの空気圧の知識も生かされます。 スポーツマンとして競技に向き合いタイムを削り速さを追及する姿勢や心構えも大変参考になりますが、時々一流スポーツマンである元奥様との対話(のろけ話とも言う)も入ってしまうのはご愛敬(笑)
自転車競技には自転車競技独特の駆け引きやルールがあり、集団内ではそちらを優先しなければならない場面も多々ありますが、一対一のスプリントバトルや普段の走行(特にワインディングやダウンヒル)ではテクニックの引出しとして身に付けておいて損はないはず。
これは私の持論ですが、 マシン性能の限界ギリギリ99.999%を保ち続けながら走れるのが一流のプロのお仕事。 マシン性能の何割を使っているかを把握し、常に一定のマージンを安定的に確保(例えば、マージン50%ならその峠の全コーナーを50%で走るような走り方。)しながら走り、緊急時にはそのマージンをフルに使って危険を回避する技術を有するのが、節度ある一流の公道ドライバーであり、ライダーであり、自転車乗りであると思います。 マージンの度合いは違いますが、乗り物の挙動を支配する物理法則は地球上に1つである以上、やってることの本質は同じであるべき。
自転車とモータースポーツが大好きな人で、自転車でもそれっぽいリズム感で走ってしまう人(←私だ。)には特におすすめです。
価格評価→★★★★★(情報量とその質に対する価格が合わない。安過ぎる。) 評 価→★★★★★(自転車にも応用可能な名著。)
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