購入価格 ¥3300+税:初版(現行第2版は3400+税)
自転車のダイナミクスを考えるための参考となるような立派な文献をWEB上にもたくさん発見することが出来ますが、たかが二輪と思って読んでみると、意外と苦戦したりします。そういった文献をいきなり読む前に、よく噛み砕いて書かれた四輪ダイナミクスの教科書を読んでみる、という手があると思います。そこでお勧めしたいのが・・・
「自動車の運動と制御」
というわけで自動車の車体挙動を扱う専門書です。副題が「車両運動力学の理論形成と応用」。出版は2008年。
この本の前身である山海堂の同名の著作を読んだ(というか眺めた)のはもうずいぶん昔の話ですが、当時、「あー、まずはこういう本で学んだほういいんだろうなあ」 と思いました。学生時代に機械工学と無縁だった私のような者でも、高校程度の数学と物理の知識があれば、まあ何とか(というか何となく)理解することは可能です。
第2章でタイヤの力学を扱っています。
よく耳にするコーナリング・フォースや横力といった力が一体、何者なのかが、この章ですっかり理解され、目が覚めるようです。また、タイヤトレッドのせん断変形から地面との摩擦係数に至るあたりの話が、浅学非才で不慣れな私には大胆すぎるように感じられ、
「へぇぇぇ~っっっっ!?」
という感じ。自転車では車体自体が倒れ、そこにさらに操舵が加わり、タイヤの接地状況が変化するので、横力を表す数式は若干の変更を余儀なくされるでしょうから、2輪ダイナミクスはある意味、応用問題ですが、それはいずれじっくり考えたり学んだりすればいいことです。その前に考え方の基礎を理解しておくことは決して無駄ではありません。(なーんて言ってる自分が理解しているんだか?という気もしますねぇ・・・)
どんな世界でも基礎力こそがブレイクスルーの源泉です。応用の場面でこそ、盤石な基礎力がモノを言います。若い皆さん、
「即戦力を身につけなければ現場で役に立ちませんよ!」
などという薄っぺらな強迫に乗る必要など、あ・り・ま・せ・ん。(まあ、場合によるが・・・というか完全に脱線)
・・・
先を読み進むと車両運動から車両制御と、着々と難しくなっていくのですが、まずは第2章でタイヤの挙動に関して図を見て雰囲気だけでも知ることは、それなりに意味があることだと思います。全264ページのうち、最初の47ページですが、ここまでの範囲を、何だかよくわからなくても何度でも眺めてみる。それだけでも十分価値があります。小中学生の頃、図書館にある天文の本を読み漁り、そこに出てくる言葉の意味が、歳と共に知恵がついて自然に得心されていく、みたいな経験をしたことがありますが、そういうのって、イイと思いませんか?(押し売り)
そして数式の荒波を乗り越え、たどり着くのが
第10章 「制御しやすい車両」
数式が少なく、感覚に訴える展開がある意味、心地よく、これが最終章となります。
何が何だかよくわからずとも、この章を読めば、「操縦しやすい自転車とは??」的な空想に浸れるのは間違いないところです。
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こういう本に感化された高校生や、小中学生が工学系の専門学校や大学で学んで生業としたならば、それはそれで結構な話なのではないだろうか、と思う今日この頃です。
価格評価→★★★★☆
評 価→★★★★☆
年 式→2008
※第2版(2012年1月)では大きな加筆修正が行われ、40ページほど増えて300ページを超えているようです