160mm ¥8598(2013年 8月、Chain Reaction Cycles)
180mm £46.63(2013年 2月、Wiggle)
ディスクブレーキローターには差異がない・・・
そんなふうに考えていた時期が私にもありました。
ローター摺動面は殆どがステンレスだし、マウント方法(6穴、センターロック)とローター径を合わせれば、どれを選んでも大差無いだろうと。
そんなことはありませんでした。
●購入動機
・WEBカタログで一目惚れ
・S社等の高価格完成車に採用されており、性能に期待できそう
以上の事から、セカンドバイクのブレーキ系を機械式ディスクブレーキ(SHIMANO BL-M770、Avid BB7(MTB))へ変更する際に導入しました。
●概観
購入時としては珍しかった、SHIMANO社以外のセンターロック式ディスクブレーキローターです。
Formula社の説明文を以下に引用します。
『2-Piece rotor features an aluminum carrier that does more than look great. The aluminum core acts as a heat sink, pulling heat away from the caliper increasing performance by keeping the pads and the brake fluid cool. The carrier also increases laterally rigidity and allows for the expansion and contraction of the steel braking surface to be directed 90° from the hub.』(引用ここまで)
『見た目も機能も妥協の無い逸品(意訳)』といった謳い文句に期待が高まります。
WEBカタログによると、ローター径は160mmと180mmの2種類、スパイダーアームの色はBlackとRedの2種類が各々設定されています。この他にスパイダーアームの色違いとして、Goldや差し色の入ったものが本社直販サイトで扱われていました。
インヴォイスによると、180mmのディスクローターは英国製のようです。
届いた製品を確認しました。
ディスクブレーキローターのみのパッケージでロックリングは付属していません。
スパイダーアームは恐らく共通で、異なるアウターローターを組み合わせることにより160mmと180mmのローター径に対応しているものと思われます。
デザインの肝なのでしょうか、各部のエッジの立ち方が凄いです。アウターローターやスパイダーアームにコピー用紙を押し当てると、千切ることができるぐらいに尖っています。落車時など、不用意に接触すると危険かもしれません。
●使用感
取り付けで二苦労しました。
商品はブレーキローター単体のみの販売で、ロックリングは別売りとなっています。このロックリングについてFormula社純正品が存在するという情報は得ていたものの、購入当時に取り扱うオンラインショップは見つけられず、商品画像すら不明のままでした。ブレーキローターを購入したショップにも問い合わせましたが取り扱いは無く、SHIMANO社のもので代用することにしました。
ロックリングも用意し、取り付ける段階になりました。
完組ホイールSHIMANO WH-M785-F/R (100QR/135QR)にブレーキローターを取り付け・・・られませんでした。
スプライン嵌合部がキツく、2~3mm程度しか嵌まりません。手持ちの他のSHIMANO社ハブ(DeoreXTグレードのHB-M775/FH-M775及びHB-M785/FH-M785、廉価グレードのHB-RM66/FH-RM66)でも試しましたが、いずれも嵌まりません。SHIMANO社センターロックブレーキローターとSHIMANO社ハブの組み合わせでは経験したことのないキツさです。プラハンマーを使用しても叩き込めたかどうか分かりません。
結局、廉価グレードハブを潰す覚悟で擦り合わせを行い、どうにか目的の組み合わせで取り付けることができました。
ようやく実走テストです。
止まりません。
メンテ台上で空転させたホイールを止めることはできますが、体重をかけた実走テストでは殆どブレーキが効きません。ブレーキローターとパッドが擦れ合う盛大な音がするだけです。ブレーキキャリパーの取り付け再確認、ブレーキパッド位置の再調整、さらにはテフロン加工ブレーキワイヤーへの交換も行いましたが、効果無し。
残された手段はブレーキパッドの交換ぐらいでしょうか。
ただブレーキパッドは意外に高価で、効果の確証が得られなければ交換に踏み切れません。
この時点でFormula社ブレーキローターの使用を断念し、SHIMANO社ブレーキローター(SM-RT81M、SM-RT64S)を導入することにしました。
SHIMANO社ブレーキローターへ換装後、ブレーキは至って普通に効いています。
●考察
一般的な機械式ディスクブレーキ(片押し式)は、作動側のブレーキパッドがブレーキローターを撓らせ、固定側のブレーキパッドと挟み込むことにより効果を発揮します。
Formula社のブレーキローターは説明文『The carrier also increases laterally rigidity and allows for the expansion and contraction of the steel braking surface to be directed 90° from the hub.』とあるように、スパイダーアームが強固で殆ど撓りません。このため、機械式ディスクブレーキとFormula社のブレーキローターは相性が悪く、ブレーキが効かなかったと考えられます。
正当な評価にはFormula社のブレーキシステムで統一するか、液圧式ディスクブレーキ(対向ピストン式)または機械式ディスクブレーキ(両押し式?)が必要でしょう。
価格評価→★★☆☆☆ (SHIMANO XTRよりも高価なのは・・・)
評 価→★☆☆☆☆ (Avid BB7とは合わなかった)
カタログ重量→ 160mm 105g、180mm 123g
<チラウラ>
ロックリングについて
(左:内セレーションタイプ(Formula社より借用)、右:外セレーションタイプ(Chain Reaction Cyclesより借用))
(Formula社のロックリングの画像です。ロゴ以外はSHIMANO社のものと同一であるように見受けられます。)
センターロック式ディスクブレーキローターを固定するロックリングは、内周に工具を当てるもの(内セレーションタイプ)と外周に当てるもの(外セレーションタイプ)の主に2種類があります。内セレーションタイプはTL-LR15等のカセットスプロケット取り外し工具と同じものを使用し、外セレーションタイプはTL-FC36等のホローテック2BB取り外し工具と同じものを使用します。
これまで見てきたWEB画像等から、内セレーションタイプはクイックリリースハブ用、外セレーションタイプはスルーアクスルハブ用であると思い込んでおりました。しかしスルーアクスルハブに内セレーションタイプのロックリングを使用する完成車があるとの指摘を受け、SHIMANOお客様相談窓口に問い合わせてみました。
SHIMANOからの回答によると、『どちらを使用しても問題無い』とのことです。
『初期スルーアクスルハブへのブレーキローターの取り付けには内セレーションタイプのロックリングを使用していたが、スルーアクスルの大径化に対応するため外セレーションタイプが開発された。ロックリングの形状変更は強度と無関係であり、物理的な干渉が無ければ何方を使用しても構わない。』という説明を受けました。
改めて部品展開図を確認すると、クイックリリースハブと12mmスルーアクスルハブには内セレーションタイプを、15/20mmスルーアクスルハブには外セレーションタイプを使用することが多いようです。
※(但しM9000系以降の12mmスルーアクスルハブは外セレーションタイプを使用しています)
※(SM-RT10ブレーキローターの固定には、内外セレーションタイプのロックリングで工具TL-FC36/TL-LR11を使用します)
※(オーバーサイズセンターロック式M800系でのブレーキローター固定には、内セレーションタイプのロックリングで工具TL-LR20を使用します)
Formula社について
本社WEBサイトによると、国内代理店はダイアテックとなっています。しかしダイアテックのWEBサイトに、Formula社取り扱いの記載はありません。2015年のpdfカタログで取り扱いが確認されただけです。
代理店との意思相通がなされているのか、正規ユーザーであってもサポートに若干の不安が残りそうです。
</チラウラ>