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グラント・ピーターセン 「ジャスト・ライド」


 
Xenon  2016-10-27 0:25
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グラント・ピーターセン 「ジャスト・ライド」
購入価格 ¥2,200(+税8%)
著者:グラント・ピーターセン
訳:沼崎敦子

発行:株式会社Pヴァイン
発売:日版アイ・ピー・エス株式会社(ele-king books)




帯付き

 2016年10月24日に、なぜか音楽系の出版社から発売になった、自転車関係書籍。
 原著は、米国で2012年に発刊された、「JUST RIDE -A Radically Practical Guide to Riding Your Bike-」で、こちらはAmazonでKindle版もあります。

 日本語版も、サブタイトルは原著同様、「ラディカルで実践的な自転車入門」とされており、出版社による宣伝文句の中には、「自転車界の常識にメスを入れる」という一言がつけられています。

 と、こういう煽り文句がつくと、なんとなく、「ほんとうに幸福な〜」系統(察してください)と同様に、著者のアクの強さが全面に出すぎた書籍に思われる可能性が高い(絶対に、マイナスイメージになっている)ですし、実際、そう解釈されても仕方がない、と思われる部分も多くあります。

 そういう本ですので、購入前に、できれば実店舗で手にとって、「イントロダクション」だけでも立ち読みしてみることをお勧めします。
 そして、ポジティブな意味で興味をそそられた場合、購入に踏み切っても大丈夫かと思われますが、この段階で「何を言ってるんだ、このオヤジは」と思った人には、多分、この本の趣旨は合わないと思います。
 合わないな、と思ったら、その場でそっと棚に戻すことをお勧めします。

 細かいチェックを入れるとしたら、自転車の専門用語については、もうちょっと訳を頑張っていただきたかった部分もあったかな。
 ハブダイナモを、わざわざ「発電(ジェネレーター)ハブ」と訳さなくとも、この本を手に取る層であれば、「ハブダイナモ」で一発で通じると思いますし。

 あと、日米の法令の違いもあると思いますが、「歩行者がいたら、ベルを鳴らしてよけてもらおう」という部分も、日本では「警音器使用制限違反」となる可能性が高いので、注釈を入れていただきたかったところです。

●著者について
 グラント・ピーターセン氏は、サンフランシスコに本拠地を置く自転車ブランド、Rivendellの創業者で、現在は非レース用途の自転車を製造・販売する傍ら、ライターとして、アウトドア/自転車雑誌への寄稿も行っているそうです。
 本書の記述とWeb情報から追加すると、ブリヂストンサイクルが北米に進出した際、現地責任者として登用され、「グランテック」(現在のトランジットスポーツG26)の開発に携わったそうです。そして、その頃から「MTBにサスペンションはいらない」などの一家言を持っていたようです。
 なお、本書の記述から察するに、過去にはレーサーとして走ったり、チーム運営にも関わっていた経験があるようです。

●本書の内容について
 細かいところで突っ込みどころは多々(見方によっては無数に)ありますが、本書の全体を通して語られている内容は、「今の自転車趣味の世界って、なんでレーサーばかり偏重されてるの?」という問いかけ。
 そして、多くのアンレーサー(レースをしない人)な自転車趣味人に対し、「そんなレースみたいな走りばかりでなく、もっと自由に自転車を楽しまないか?」という呼びかけを行っている(少なくとも、私にはそう感じられた)内容になります。

 ターゲット層は恐らく、自転車趣味を開始して、同じ趣味の先輩たちの言う通りに機材を揃え、練習やイベントに参加してきたけれど、なんだか、自転車に乗る楽しみって、これじゃない気がするんだけど……?
 という疑問を持ち始めたくらいの層になるでしょう。

 このサイトを定期的にチェックするくらい、自転車趣味に入れ込み、レースをこなし、ロングライドをこなしている人達ならば、あまりそんな風に振り返ることなく(あるいは、疑問を持っても振り切って)、趣味の世界に突っ走ってきたと思われます。
 しかし、すべての人が、自分たちと同じようにレースで表彰台を目指せるわけでもなければ、とんでもない距離を、ほんの短時間の仮眠を重ねて走り切ることに喜びを見出すわけでもありません。

 自転車雑誌を見ても、レースで勝つためのトレーニング方法や技術論の記事ばかり。
 ショップで知り合った人達と話をしても、超人じみた挑戦をする人達ばかり……という環境に置かれてしまったのでは、疎外感を持ってしまい、そのまま、趣味として続けることを諦めてしまうかもしれません。

 多分、この本は、「突出した何か」を目標とするのではない、アンレーサーな(恐らくは、自転車を余暇の楽しみとして考えている層の)皆様に対して、「堅苦しく考えるな、自由に乗ろう!」と呼びかける内容になると思います。

 そして、私としては、「本当に、自分は自転車というものを使った趣味を、自由に楽しんでいるのか?」というブレインストーミングを行う上での参考になる内容が多くあったと思います。
 もっとも、これは私自身の体験として、昨年来、レース用の機材であるロードバイクを、ブルベ用の機材として使うことに大きな疑問を感じ、自分なりに考えた結果、ロードのパーツを流用可能なツーリング車を新たに組んだ、という経験が背景にあったからでしょう。

 今、ちょっと自転車趣味との向き合い方に違和感を感じていたり、ちょっと目標を見失っているかも、と感じている皆様には、良い意味で発想の転換を図ったり、趣味と向き合う「心構え」を再考する一助になってくれるかもしれません。

 まあしかし……それでも、読む人を選ぶ書だとは思いますが(^^;)。

●でも、これだけは言っておきたい
 この書籍の中で、ピーターセン氏はヘルメットの効果について、「期待通りのものじゃない」と、一読すると、効果を軽視するような文面を示しています。
 しかし、これは決してその効果を軽視しているのではなく、「ヘルメットの安全論争は明らかであり、うんざりするほどよく知られている」と明記されています。
 その上で、後段の記述で「(ヘルメットを被って)その防護を過大評価するのと、被らずに、より安全を意識するのと、どちらが安全なのだろうか」と問題提起することで、あえて思考停止を抑制するように戒めているものと思われます。

 ヘルメットの問題に限らず、本書の内容は、記述を鵜呑みせず、再度、物事を考えるきっかけにするのが正しい読み方だと思われますので、そこは十分に注意していただければと思います。

 まあ、ヘルメットについては、個人的には、日本では自転車の交通事故における死亡者の64%が、頭部損傷が原因で死亡している、という統計結果が明らかにされていることから、正しく着用することで、死亡事故をゼロにはできなくとも、大幅にそのリスクを低減できる、という考えを持っています。

●まとめ
 著者であるグラント・ピーターセン氏が、「自転車趣味の世界は、レーサーが偏重され、レーサーがやったこと、レース用の機材が全てにおいて正義にされるが、それはおかしくないか?」という疑問を投げかけた内容です。
 今、自転車趣味を始めてみたけれど、何かが違う、と感じている皆様には、是非一読をお勧めしたい内容です。

 ただし、この本に書かれている内容が全て正しい訳ではありません。
 良い意味で発想の転換を図ったり、趣味と向き合う「心構え」を再考するきっかけ作りとして、読んでいただければと思います。

 そして、百戦錬磨な皆様には、「自分達の世界が、常に正義ってわけじゃないんだぞ」ということを再認識するきっかけにしていただければ、と思います(^^;)。

 何の予備知識もない相手から車体購入の相談を受け、「最低でもブレーキは105以上じゃないとダメだ」と言って、値段でドン引きさせた経験がある人には、この言葉の意味が、非常に良くお分かり頂けると思いますので……。

 長くなりましたが、最後に、おそらく、著者が最も伝えたかったと思われる言葉を。

 「JUST RIDE」
 「ただ、乗ってみようぜ」 

価格評価→★★★☆☆(←ちょっと高いかな。1500円くらいに抑えられれば良かったかも)
評   価→★★★★☆(←読む人を選ぶ内容だと思うが、自転車趣味と向き合う心構えを見直す一助になれば)
<オプション>
年   式→2016年11月10日発行(初版:奥付より)
 
GlennGould  2017-3-16 20:26
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ジャスト・ライド~ラディカルで実践的な自転車入門~ グラント・ピーターセン著
購入価格 ¥2200+税



ロードでもMTBでもない、スチールフレームでこしらえた生活感が感じられる粋な自転車たち。エスプリの効いた作り手が見え隠れするいい感じの自転車を作るサンフランシスコのメーカー、Rivendell Bicycle Worksは、故 Sheldon Brown氏のウェブサイトで知りました(多分)が、このRivendell Bicycle Worksの創立者が著者Grant Petersenです。Rivendell Bicycle Worksの自転車には、ともすれば懐古趣味ともみなされてしまうようなテイストのパーツや用品が選択され、装備されていました。今もそれは変わりません。そんなテイストの源泉であるGrant Petersen氏の著作が翻訳されている、というのをCBNのレビューで知り、さっそく購入しました(って、4か月も前の話ですが)。

全89節で成り立つ248ページ。目次を一つ一つ追っていくだけで、面白そうな本だ、と感じます。


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著者は序文で、

この本で僕が主に目指すのは、バイクレースがバイクや装備、心構えなどにもたらす悪しき影響を指摘し、それを改めることだ。

と書いています。競技者、日本メーカーの米国拠点運営、自社設立と、長く自転車の世界で仕事をしている著者による自転車文化のありように対する問いかけです。それらは、業界のしがらみや諸事情とは離れたところから、シンプルに別の豊饒な世界を提示しているかのようです。やたらとプロ・レース重視で、手を替え、品を替え、形容詞を替えての、これでもかと言わんばかりの新車物量作戦的な特集だらけの自転車雑誌に食傷気味な方は、すんなりと読んでしまうことでしょう。

これを読みながら、自分にとっての、本当の自転車の魅力、を再構築するというのも一興です。


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恐らく翻訳が少々ヘンテコらしく、おや?と思う部分がたくさんあり、また、誤植/誤訳どちらかな?というところもありますが、内容の面白さがそれらを帳消しにしています。というか、多少のヘンテコ加減は、私は全く気になりませんでした。

それから、議論沸騰を期待して、意図的に多少、大袈裟に表現している部分もあると思われます。イントロダクションでは次のような一文も用意されています・・・

賛同できない箇所もしばしばあるだろうが、すべてを信じてくれと言っているわけじゃない。こうしたいろいろなことを考えてくれるだけでいいのだ。

著者の意図に反して(かどうか知りませんが)、今まで自分が信じてきたものを否定されて逆上してしまうような人向けの、これは念のための一文、でしょうか(?)。実際に、私の考え方と正反対の記述もたくさんありましたが、悪い気など爪の垢ほどもしませんでした。著者の文章は愛に溢れています。

結局、考える契機をずらりと開示してくれている、のです。


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全89節のコラムは8章から構成されていますが、目次のごく一部を再掲してみます。

PART1 ライディング
1 ペダルをぐるぐる漕ぐべからず
9 短すぎるライドなんてない
PART 2 装備
11 ウエアの罠 
14 びっくり! ファブリックは呼吸をしない
PART 3 安全性
19 警告:ブリンキーライトに死亡事故の可能性
23 ヘルメットは期待通りのものじゃない
PART4 健康とフィットネス (このふたつを混同してはいけない)
31 ライディングは欠点だらけの総合運動
38 乾く前ではなく、乾いたら飲む
39 バカなヤツとけちんぼのための電解物
PART 7 専門知識
65 ほとんどのバイクはフィットしない
69 重さの罠
PART8 ヴェロソフィ(自転車哲学)
79 レーシングが種を絶滅させる
80 プライドを持って自費で乗れ。あるいは礼儀正しくこっそり乗れ
81 チャリティライドの暗い面


31節 ライディングは欠点だらけの総合運動 について少々。

私自身、自転車に乗ることで、しつこい偏頭痛が30分後にはすっかり和らぎ、自覚症状がきつい不整脈が治まり、ぎっくり腰をやった時など、歩けないけれど自転車には乗れる(乗降がそれはもう大変ですが)、という位に、自転車には助けられていますし、何と言っても自転車に乗ることは私にとって非常に気分のいい行為で、やめる気などさらさらありません。が、「健康に良い」と言えるか、となると、どうなのかな?と思うこともあります。しかし、健康に良いから乗っている、などという意識は私にはなく、単に好きだから乗っているだけなので、そういう意味では、多少、健康を犠牲にしている部分があったとしても、別に良いわけです。

年間1万km余りをコンスタントに乗り続けることで、例えば、山歩きで必要な基礎体力や身体全体の筋力バランスを維持することが出来るかというと、足腰の筋力も含めてほとんど役に立たないということを、身をもって知っていますし、本当に自転車にしか乗らないと、普段の平凡な運動能力もさりげなく殺がれていく、ということも、これは学生時代から感じています。なので、自転車にことさら一生懸命に乗ることはそれほど健康に良いというわけでもないのだろう、と、「理解」したうえで、単に自転車が好きだから、という理由だけで自転車に乗っています。この「理解」は、それなりに重要なことなのではないかと思っています。もし仮に、より全方位的な健康を志向するならば、自転車だけを一生懸命に乗り続けるのは賢明な選択ではないと思います。なお、私は「より全方位的な健康を志向」していません。


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そして【PART8 ヴェロソフィ(自転車哲学)】の全11節。これがこの本の白眉、です。まあ、一読してみてください。クダラネエ!と本を投げつけるもよし、暫し沈思黙考するもよし。


*    *    *    *    *


全89節。これを月刊誌に毎月連載したら7年を越える長期連載となります。
そんな待ち遠しい自転車月刊誌を読んでみたいものです。



価格評価→★★★★☆
評  価→★★★★★

年   式→2016年11月10日初版
     248ページ/出版社: Pヴァイン


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