[ROAD] SCOTT FOIL 20
購入価格 ¥160,000(御用達の店にて特価で)
かつて、SCOTTのエアロロード枠を飾っていた、旧型FOIL。 このバイクの登場によって、エアロロードは大きく方向性を変えたと言っても過言ではない。 これの後を追うように、各社だいたいどこかにカムテールを取り入れるようにもなったしね。 それを物語る1つの指標として、旗艦モデルとしての寿命の長さがある。 (今でこそ最強の座を明け渡しつつある)カヴェンディッシュを擁していたコロンビアHTCが存在していた頃に登場し、オリカやIAMに供給を続け、更には新型FOILがプロの現場に投入された後も尚、旧型の方を好んで使う選手がいたほどだ。 それだけ、旧型は今にも通じるくらいのものだったという事だ。
そんな旧型も、2017年モデルからとうとう新型にラインナップが全て取って変わり、完全にカタログ落ちしてしまった。 そして何の因果か、当方が所有しているのは、最終型の旧型なのだ。 もう新品では手に入らないだろうと思い、かつてこのようなバイクが存在していたという事を示すために、ここに記す。 購入は1年前になる。
では、本題に入ろう。 ちなみに当方はホビーレーサー4年目で、パワメがないのでなんともだがFTPとか測ると恐らくスカポンタン、上りは本当に上れない、スプリントで表彰台を何度かなんとか獲得している程度。 参考程度に。
①フレームスペック
当方が所有しているのは、FOIL 20 JAPAN LIMITED。 グレードはHMF、SCOTTの中では下位グレードに当たるカーボンだ。 サイズはXS、過去の記事では900g前半という記録があるが、はっきり言って異常なスペックであるが、それはまた後述。 baruさんが述べられている通り、シートピラーのオフセットはゼロのもの(実際はゼロではないが…)が付属。
一応書いておくと ・ヘッドは1-1/8 - 1-1/4テーパー ・BB86(フレーム買いでもBBインストール済み) ・カーボンドロップアウト(要はエンドまでカーボン製) と、特に3番目はミドルグレードにしては結構な大盤振る舞いな気がする。
②購入動機
さて、当方が旧型を手に入れた理由だが、これは至極単純で「一目惚れ」に近い感覚だった。 というのも、SCOTTはやたら軽いバイクを作るメーカーという印象しか当時は持っておらず、増して当方はVENGEやS5やNOAHのようなエアロエアロしたフレームが大好きで、ラウンドチューブとか四角断面チューブには興味がなく、エアロでもカムテールにもあまり興味がなかったのだ。 それが旧型を買ったのは、一目惚れならぬ「一踏み惚れ」である。
当時、レースは遊び半分で買った中華で楽しんでいたが、サイズが少しでかく、剛性もちょっと頼りないところがあったが、ポジションがステムで調整できる範囲だしと言い聞かせ、なあなあで乗っていた。 そんな時、お世話になっているショップの中をふらふらしていると、1台のバイクが目に留まった。 後に、当方の愛車となる旧型FOIL20である。 定価だとフル105装備ながら38万もする、イタリアのP社もびっくりな価格設定なのだが、元が試乗車らしく、小傷が多いからと超値引きをしてくれるという、店長のとんでもなく太っ腹なところに、心が揺らいだ。
そんなこんなで、いざ試乗してみることに。
(まず1踏みm……!!!?? な、なななんんあああななんだ!!!)
はっきり言って頭が追い付かなかった。 おかしい、何かがおかしい。 自分の中にあるミドルグレードに対する考え、SCOTTのイメージ、エアロロードへのイメージが、すべて崩れ去った。 自分が今まで乗っていたのは、ロードバイクじゃなかった………。(中華だからね仕方ないねw) 初めて乗ったにも拘わらず、意のままに操る、という言葉がぴったりなくらい扱いやすい、反応が速い、それでいて脚が重くない。 実は中華の前にアルミにも乗っていた時期があったのだが、あれに近しい物を感じた。
(FOIL……こいつは使える)
そう確信し、試乗した1ヶ月後、現金握りしめて再び店に行ったのだった。
③使用感
baruさんに倣って・剛性 ・快適性 ・エアロ ・巡行 ・ヒルクラ ・見た目 の6つに加えて、・スプリント ・新型との比較 を加えて評価する。 結構あちらこちらにばらまいてるので画像は割愛するが、機材構成は以下の通り。 コンポ6700(一部世代違い、社外品、上位MIX)、40mmカーボンチューブラー、ハンドルはSL88、ステムはVIBE7S、サドルはスペシャ。
・剛性
はっきり言って、ここに惚れたと言っても過言ではない。 剛性抜きでレースに使うなど考えらない当方にとって、この要素は非常に重要である。 ダンシングを多用する当方は、特に横への硬さに秀でていると感じた。 縦の硬さはどんなバイクでも上げられるが、横にも硬いのは、やはりカムテールのおかげなんだろう。 当方の手が届く範囲でこの旧型と同等の剛性を持つバイクは、今まで見たことがない。
といってもひたすら硬いわけではなく、グレードとかつてのフレーム価格を考えると、異常なくらい高い剛性を誇るという程度。 分かりづらいだろうから比較対象に、DOGMA F8を出す。 コーナリングはフォーク剛性や素材から来てるのかF8の方がちょっとだけキレがあり安定している、踏んでみても、T1100で馬鹿みたいに硬いと言われる割には大した硬さは感じない。 実際旧型は、ダウンヒルで60キロオーバーでコーナーの切り返しをしてみても、破たんする様子は全くない。 ダウンヒルって真面目に攻め込むとパーツの剛性テストが出来ちゃうから、勧めはしないけど剛性を確かめたい人は参考にどうぞ。
つまり、HMFの旧型は、そういうフレームなのだ。 勘違いしないように、あくまでも「クラスを考えると」である。 F8本来の対抗馬はHMXのTEAM ISSUEやPREMIUMなので悪しからず。 ただ、ヒルクラでトルクガンガンかけて上る人だと、膝壊れるかもしれないので気を付けて。
・快適性
当方何に乗っても、ある条件を満たすと必ずケツが痛くなるので正確な評価はできないが、振動や突き上げはチューブラーを使っていても結構来る。 SL88ハンドルがそれなりに緩和してくれるそうだが、VIBE7Sステムだったり、時にはSLsprint並の剛性を持つステムを使うので、ここに関しては諦めている。 まあ各チューブそれなりの太さはあるし、これに期待して買うようなフレームではないことは確かだ。
・エアロ
1年経って慣れきってしまったのもあって、もう40キロ巡航程度じゃ効果は不明。 明らかに航続距離は伸びているが、これは自分が成長した分もあるだろうから、やっぱり分からない。 如何にフレームが占める空気抵抗の割合が小さいかがよくわかる。
しかし、下りになるとはっきり分かる。 前までのフレームはどこかで速度の伸びが止まっている場所があったが、流石はメーカー品、ちゃんと作られていて満足。 エアロは高い速度でこそ効果を発揮する。 エアロロードらしさはここで出てくる。
・巡航性能
重いギアをかけてペダルを回すこともできるが、それなりにケイデンスを上げた方がちょっと進みやすいと感じる。 エアロの項でも書いたが、特別出力が低くても進むとかは特に感じない。
1つ分かるのは、高い剛性からか、めっちゃくちゃに踏んでも回しても、それなりに進んでしまう。 ロスをあまり感じないので、ペダリングがラフになってもパワーの増加で知らず知らずのうちに誤魔化せてしまう。 それを続けて疲れてくると、いつしか硬さに負ける。 硬いフレームは皆そうだと思うが、必要な時以外はできるだけ力をかけず、ケイデンスで対応した方が脚の持ちは良い。
・ヒルクライム性能
XSだからなのもあるが、推定900g前半というのもあって、ヒルクライムは自己ベストを何度も叩き出している。 やっぱりヒルクラは軽さである。
先ほど軽さの事を割愛したので、ここでその事について触れておく。 一般的に、ミドルクラスのカーボンフレームに用いられる"T700"というカーボンプリプレグだが、T700と言っても様々な物性のものがあり、炭素含有量、樹脂含有量、プリプレグ目付等が異なる十何種類の"T700カーボン"が存在する。 基本的なデータは共通のようで、単位ミリ平方での引張強度と引張弾性率はそれぞれ500kgf、23.5tf(23500kgf)になる。 これがT800になると引張強度と引張弾性率はそれぞれ600kgf、30.0tf(30000kgf)になる。 この2つは厳密には「中弾性率タイプ炭素繊維」と呼ばれ、たまにメーカーが書いている「高強度カーボン」というのは意味が変わる書き方である。 この2つ、要は「引っ張りに強くてなかなか曲がらないカーボン」ということで、しなりにくいカーボンなのだ。
これをネタにしたのは、実はHMFはT800カーボンをベースに作られているのだ。 この世にHMFのFOILがS-WORKSターマックより硬いという人がいるのは、それだけHMFカーボンにはしなりが無く、硬いと感じるくらい剛性が要る場所に比重を置いているからだろう。 HMXになればT1000にもなるから、本当に岩のような硬さになる。
とはいえ、チューブを叩いてみてもめっちゃ乾いた音がする感じはしないし、今どきの900gのフレームってのは結構肉厚なんだなと思う。 まあ軽いから、よし。
・見た目
エアロエアロしたフレームが好きなので、見た目はやはりなんというか、貧弱。 フレームが小さいのもあって、あまり凄みを感じない。 同じ値段か少し高いくらいでNOAHとかVENGEがその店に置いていたら、迷わずそっちに飛びついていたかもしれない。 だが、自分はヒルクライムがてんでダメで、それを補ってくれていると思うと、自分が如何に旧型を乗りこなせていないかが良く分かる。 この見た目だからこそ、自分に走る力を与えてくれているのだ。
なので、暇さえあればフレームを洗ったり、汚れを取っている。 バイクが宙を舞うほどの落車もしてるが、特に破損もないから、FOIL頑丈だなって思っている。 こんなものを作れたSCOTT凄いよ。
・スプリント性能
FOILといえば、今ではカレブ・イワン、数年前だとマーク・カヴェンディッシュだろう。 つまり「スプリンター用のフレーム」という印象が強いのではないだろうか。 現にこれを書いている時に、2位だったがアブダビツアーでイワンがカヴをついに破ってしまった。 カヴは皮肉にも、かつて自分のために開発されたフレーム(の後継機だけど)に負けたのだ。
でもって、当方スプリントはヒルクラや巡航よりも得意なので、何度もやってみた。 はっきり言えるのは、明らかに到達速度や加速は良くなった。 非実業団選手で大したトレーニングもしていないが60中盤は当たり前で、時折70近い速度も出せるようになった。 しかし、当初は魔法のようなフレームだと思っていたが、次第にこのフレームの使い方が見えてきた。 まず、踏むタイミングがずれると途端に伸びなくなる。 フレーム硬さとギアの重さが重なり、適切な踏み始めの位置を逃してしまうと突然ケイデンスが上がらなくなる場合がある。 あとは、ケイデンス。 これは十中八九当方の筋力不足だが、適切なケイデンスでないとこれもまた伸びに欠ける原因になる。 結構その値がシビアで、たまに100rpm以下からでも伸びていく時があるが、110前後まで持っていってからちょっとずつ重くするのがベストなように思う。
まあ、普通にスプリント向きのフレームである。 実際初出場のシマノ鈴鹿で表彰台取れているし、バンク競技もそこそこのタイム取れてるし、SCOTTはこんなに良いフレームをカタログ落ちにさせたのが勿体ないよ。
・新型FOILとの比較
新しく出たFOILだが、こっちもちょっと乗ったことがある。
ぶっちゃけ新型のスタイリングは、ない。 変なスローピングと小さすぎるリアバックのせいで、リムの高さを選ぶ。 画像を漁って調べてみても、ロープロは似合わないなって思った。
快適性を上げすぎたからかは知らないが、HMXでも大して良い感触はなかった。 フォーク剛性くらいかな、良いところは? アルテかデュラか忘れたけどリアブレーキ効かないし、加速もなんかもたもたしている。 そもそもフレーム重量がHMXで950gて…どんだけ重くしてんだよ。 前作から100g以上増えて、ブレーキシステムは改悪して、ステムは専用品使わせて。 聞くところによるとピラーの固定とサドルの固定も甘くなっているらしい。
総じて旧型の方が良かったんじゃないかな?と感じる。 当方の中の新型の評価は高くない。 聞き伝手だがLOOKのような乗り味になっていると言うし、これまでのSCOTTのイメージで買ったら面食らうかもしれない。 SCOTTもRIDLEYみたく、限定で旧型FOILのHMX出したりしないかな。
総じて、何でもできるオールラウンドエアロロードという印象。 自分はスプリントマシンに改造したが、フレームは硬さとか持っていて然るべきだと思っている。 でもそれさえクリアすれば、コンフォート性能を高めたパーツを使えば優しいバイクにもなるだろう。 フレーム硬さのせいでパーツのやわさが目立つだろうが…。 懐は案外深いのかもしれない。
価格評価→★★★★☆(自分が買った値段なら。定価とか-10%程度だと★×2) 評 価→★★★★☆(最低限の筋力すらないとか、ぺダリングがあんまりできてない人には勧められない) <オプション> 年 式→2016 カタログ重量→890g(実測重量900g前半かな?)
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