購入価格: ¥23,448 (税込) ※クランクセット、チェーン、キャリパーブレーキを購入。他は完成車付属品
標準価格: ¥69,388 (税込)
『安定した動作でストレスを感じさせず、直感的な操作が可能な高性能コンポーネント』
■ 上位グレードを踏襲したリア11速「105 5800シリーズ」
105 5800シリーズは、リア11速のロードバイクコンポーネントで、4アームクランク、左右対称デュアルピボット式キャリパーブレーキ、ポリマーコーティングケーブル、SIL-TECなど、上位グレードを踏襲したテクノロジーが採用されている。私が手に入れたGIANT DEFY1 DISCにもメインコンポーネントに105 5800シリーズが使われており、購入の決め手のひとつになった。
ただ、メインコンポーネントということは、全てが105というわけではない。私はクランクセットのFC-5800と、チェーンのKMC X11Lを105に交換し、ブレーキこそTRPのメカニカルディスクブレーキのままではあるが、コンポーネントをほぼ105 5800シリーズに統一した。
そこで、今回は105 5800シリーズをコンポーネントとしてレビューしたい。ブレーキのBR-5800は、シングルスピードGIANT FIXER Rに装着しているので、キャリパーブレーキについても述べたい。今回のレビューの対象は以下のとおり。なお、ペダル、前後ハブ、ケーブルアジャスターはレビューに含んでいない。
・デュアルコントロールレバー: ST-5800
・クランクセット; FC-5800 50-34T 170mm
・フロントディレイラー: FD-5800-F ※直付
・リアディレイラー: RD-5800-GS
・ ボトムブラケット: SM-BB71-41B ※プレスフィットBB、105グレードの現行品はSM-BB72-41B
・カセットスプロケット: CS-5800 11-32T
・チェーン: CN-HG600-11
・キャリパーブレーキ: BR-5800 ※FIXER Rに取り付け
ST-5800、FC-5800、FD-5800-F
RD-5800-GS、SM-BB71-41B、CS-5800
CN-HG600-11、BR-5800
■ デザイン
105 5800シリーズは、ブラックとシルバーの2色で展開され、どんな種類の自転車でも合わせやすい。だが、デュアルコントロールレバーとGSタイプのリアディレイラーは、シンプルな形状でロゴも控えめだが、悪くいえば単調で個性に欠ける。一方、クランクセットとキャリパーブレーキは、上位グレードのデザインを105らしくアレンジしているのが好印象。最近のシマノに見られる近未来的なデザインは私の好みだ。
完成車には、クランクセットをFC-RS500、キャリパーブレーキをTektroの無印にして販売されることが多い。これらをFC-5800、BR-5800にすれば、4アームクランクのスマートさと左右対称デュアルピボット式キャリパーブレーキの重厚感によって、ロードバイクの雰囲気をグッと高めてくれるはずだ。特にクランクセットの存在感は、自転車の印象を大きく左右する。
クランクセットをFC-5800に交換する前のDEFY1 DISC (左)、クランクセットをFC-5800に交換したDEFY1 DISC (中央)
BR-5800を前後に装着したFIXER R (右)
■ デュアルコントロールレバーの操作性
デュアルコントロールレバーST-5800の最大のメリットは、いわゆる手元変速ができることにある。ブラケットを握った状態のまま、変速操作もブレーキ操作もできる。ブレーキレバーを握りながらのリアをシフトダウンすることも可能。走行中はデュアルコントロールレバーの存在を忘れさせ、ストレスを感じることなく、直感的な変速・ブレーキ操作ができる。
だが、ST-5800は変速操作のレバーのストロークが大きく、変速の素早さではRAPIDFIRE PLUSシフトレバーに劣る。上ハンではストロークの大きさが気にならず、十分に素早い変速操作ができる。一方、下ハンではストロークの大きさが、変速操作のもたつきに影響することもある。
ブレーキ操作においては、ST-5800のレバーは握りやすい形状とはいえない。私に小さい手では、握り幅を最小にしても、レバーの位置が少し遠いような気がする。レバーの位置をもっと手前にするか、レバーが指のかかりやすい形状だったら使いやすかった。
ブラケットフードは、評判ほどスリムだとは感じなかったが、私の小さい手でも握りやすい形状をしている。適度に幅の広いブラケット形状が、手にかかる負担を分散し、長距離・長時間でも快適に走行できる。
少々気になる点はあるが、ST-5800の完成度は高く、直感席な操作を可能にする
■ フロントの変速性能
105 5800シリーズの中で特に際立つのが、フロントの変速性能の高さだ。特にシフトアップの動作が非常に軽く、変速したいと思ったタイミングで直感的に操作でき、頻繁なフロントの変速動作でもストレスを感じさせない。これには長くなったプルアーム、低めのスプリングテンション、ポリマーコーティングケーブル、コンバーターによるケーブルルートの最適化が高い効果を発揮している。
フロントの変速性能は正確かつ安定しており、チェーンがガチャガチャしてシフトアップしにくいことはほとんどなく、あまりタイミングを気にすることなく変速できる。これにはFD-5800のフロントディレイラーのサポートボルト、FC-5800の裏側が肉抜き加工されたアウターギアの剛性、ディレクショナルチェーンのCN-HG600-11が効いている。
アウターギアがチェーンをスパッと持ち上げてくれるのは非常に爽快。タイミング次第ではヌルッと滑らかに変速して、スチャッ!とアウターギアに乗り上がり、変速したことすら気づかないこともある。一方、シフトダウンには特別なものを感じないが、低めのスプリングテンションのおかげか、静かにチェーンが落ちる。また、トリム操作とスキッドプレートのおかげで、音鳴りにも悩まずに済む。
FD-5800の長くなったプルアーム (左)、フロントの変速に大きく貢献するFC-5800のアウターギア (右)
■ リアの変速性能
リアの変速性能はフロントほど際立ったものではないが、こちらも軽快でスムーズ、正確かつ安定している。軽い操作感には、低めのスプリングテンションに加えて、ポリマーコーティングケーブルの効果が高く、リアの変速はフロント以上に直感的な操作が可能になっている。
RD-5800の可動部にはガタが少なく、CS-5800とCN-HG600-11との組み合わせでは、非常に正確で安定した変速動作を実現している。このグレードになると、ガッチャーンとシフトアップしたり、ギアにかからずにガキッ!と音がすることもない。幅が1.85mm広くなったスプロケットのおかげで、チェーンが隣のギアに擦って音鳴りが出るようなこともなく非常に快適だ。
私が使っているのはGSタイプだが、プーリーケージの長さによる変速のもたつきは特に感じない。プーリーにはベアリングが入ってないが、ガタが少ないおかげか、チェーンの左右のフレが少なく、キュルキュルとした回転の音も小さい。
リアの変速は安定しており、軽快でスムーズな操作感
■ コンパクトクランク+ワイドギア
私の自転車では、FC-5800の50-34T、CS-5800の11-32Tを使っている。いわゆるコンパクトクランクとワイドギアという組み合わせだ。疲労の蓄積を軽減するビギナー向けの設定だが、平地から坂までオールラウンドに対応する組み合わせでもある。
11-32Tの歯数構成ではワイドすぎて使いにくいと思っていたのだが、意外にも使いやすかった。50-34Tの組み合わせでは、私のクロスバイクのFC-T611 48-36-26TとCS-4600の組み合わせで、私が常用する部分のギア比がほぼ同じだったからだ。
11-32Tが平地での使いやすさを損なうことなく坂にも対応できるのは、これこそまさに11速化の恩恵といったところだ。8速の11-32Tのようにギアが離れすぎて平地での使いやすさを損なっていたのとは大きな違いだ。スプロケットの歯数が多い方が楽に走行できるということは、クロスバイクで8/9/10速を経験からもいえる。
ただ、ローギアの32Tは私の行動範囲では使う機会がほとんどないし、クロスバイクよりもロードバイクの方が高いスピードを出せるようになったので、他にも最適な歯数構成があるような気がする。クロスレシオのスプロケットにも興味はあるが、最適な歯数構成は未だ検討中だ。クランクセットは50-34Tのままでいいと考えているが、インナーギアは36Tの方が使いやすいと思うこともある。
SEEK R3に装着されていた8速の11-32T。ギアが3枚多い11速の方が断然使いやすい
■ クランクセットの剛性感と回転性能
ホローテック2を採用したFC-5800の高い剛性感は、脚力による軸やクランクアームのたわみを抑え、推進力に変換してくれるのがよくわかる。2ピースクランクセットとの差は小さいが、クロスバイクやシングルスピードのスクエアテーパータイプのクランクセットとは雲泥の差だ。
さらにFC-5800は裏側が肉抜き加工されたアウターギアの剛性が高く、強く踏み込んでもスムーズにクランクを回すことができる。シングルスピードに用いているSUGINOの厚歯のチェーンリングと遜色のない剛性感だ。クロスバイクではアウターギアよりもミドルギアの方がスムーズにペダリングできると感じているが、もしかしたらアウターギアの剛性が関係しているのかもしれない。
DEFY1 DISCのクランク周辺の剛性感に最も大きく影響するのが、プレスフィットBB(SM-BB71-41B)を使用可能にしたフレーム構造だ。クロスバイクでは、スレッドタイプのBBを使う2ピースクランクセットだが、ここまで高い剛性感は得られなかった。これがホローテッククランクになったとしても、おそらく飛躍的な剛性感の向上にはつながらないだろう。
SM-BB71-41Bは、使用開始直後から軽くスムーズに回転し、SM-BB51のようなグリスの抵抗による重たさをあまり感じなかった。ホローテックの中空鍛造クランクアームのおかげもあって、とても軽くペダリングできる。
上位グレードを踏襲した4アームクランクは軽さと剛性を両立した構造(左)
ホローテッククランクと裏側が肉抜き加工されたアウターギアが剛性感に貢献する (中央)
プレスフィットBBを採用したフレームのクランク周りの剛性感は高い (右)
■ SIL-TECチェーンの潤滑性と防汚性
105グレードのCN-HG600-11には、フッ素加工による低摩擦表面処理SIL-TECが施されている。CN-HG600-11はインナープレートのみにSIL-TEC加工されているが、グレードが上がるにつれて、SIL-TEC加工される部分が増える。CN-HG600-11の潤滑性と静粛性は良好で、SIL-TEC加工されていないCN-HG54やニッケルメッキのKMC X11Lよりもスムーズに回転し、シャリシャリしたチェーンノイズも少ない。
ただ、防汚性はアウタープレートまでSIL-TEC加工されたCN-HG95にはおよばない。また、アウタープレートまでSIL-TEC加工された上位グレードのチェーンの方が、スプロケットの隣のギアやフロントディレイラーのガイドプレートとの干渉による音鳴りを軽減し、滑らかに変速するようになるはずだ。これはDEORE XTグレードのCN-HG95を使用した経験からいえる。
CN-HG600-11は、インナープレートのみにシルテック加工されている
■ ブレーキ性能
DEFY1 DISCには、TRP SPYRE-Cというメカニカルディスクブレーキが使われているが、このブレーキは若干引きが重い。本来の組み合わせであるBR-5800なら引きが軽くなり、快適なブレーキ操作ができるはずだ。私のシングルスピードには、BR-5800をDIXNA ジェイリーチブレーキレバーで操作しており、極めて軽い引きを実現している。しかも、前モデルのBR-5700の全ての性能を上回る。
BR-5800は、左右対称デュアルピボット式キャリパーブレーキという、上位グレードを踏襲した構造が採用されている。2ベアリング・1ローラーによって動作は軽くスムーズなものになり、短いアームのおかげでレスポンスが非常によい。短いアームとキャリパーの厚みによって剛性感も向上し、やや硬めのブレーキシューR55C4と相まって、かっちりしたブレーキフィーリングになった。
これらの構造は、BR-5800に大きな制動力とコントロール性をもたらしている。レバーを強めに握っても、Vブレーキのように途中から急激にブレーキ力が立ち上がることはなく、非常にコントロールしやすい。なかなか止まれないTektro R312とは異なり、短い制動距離でしっかり止まることができ、安全性にも大きく貢献する。
DEFY1 DISCは、ST-5800でTRP SPYRE-Cを操作する (左)
FIXER Rは、BR-5800とジェイリーチブレーキレバーを組み合わせて使用 (中央、右)
■ 調整とメンテナンス
クロスバイクでのメンテナンスやコンポーネントの換装の経験のおかげで、105 5800シリーズにおいても、各パーツの調整作業はそれほど難しいとは感じなかった。レバーの握り幅の調整は、アーレンキー1本で簡単にできる。また、スプロケットの幅が広くなったおかげで、リアの変速調整は10速同様にスムーズに行うことができる。
ただし、フロントの調整は難易度が高めだ。ケーブルを張りすぎるとレバーが重くなるし、緩すぎるとシフトアップの際にガチャガチャ音を立てて変速しにくくなる。軽いレバー操作と確実な変速を両立するためには、ケーブルアジャスターだけでなく、トップ側調整ボルトを使えばうまくいく。これでも快適に操作できなければ、TL-FD68でケーブルルートをチェックするといいかもしれない。
日常的なメンテナンスは、チェーンオイルの汚れをクリーニングしたり、チェーンやパーツの可動部に注油することくらいだ。他にはケーブルが伸びてきたら、ケーブルアジャスターで張る程度で済む。また、BR-5800は片効きになりにくいので、頻繁なセンタリング調整は必要ない。
メンテナンスで最大の難関は、プレスフィットBBを交換する作業だ。専用工具が必要な上、BBを圧入するというハードルの高い作業が発生する。ヘッドパーツの圧入の経験からいえば、正直自分ではあまりやりたくはない作業。ただ、プレスフィットBBによるフレームの剛性感への貢献は大きく、私にとってはメリットがデメリットを大きく上回っている。
1.85mm幅が広くなったスプロケットのおかげで、リアの変速調整がしやすい (左)
フロントディレイラーの取り付けや調整の際に、ケーブルルートをチェックした (中央)
ユーザー自身による交換が難しいプレスフィットBB (右)
■ 互換性
105 5800シリーズの導入の大きな壁になるのが、スプロケットのCS-5800だ。リア11速のロードバイクコンポーネントは、スプロケットは幅が1.85mm広くなり、8/9/10速のハブに装着することができなくなった。つまり、コンポーネントを105 5800シリーズに換装する際には、ホイールを交換する必要があるかもしれないということだ。
これが後に大きな問題になるのは、ロードバイクの完成車を購入する場合だ。例えば、GIANT DEFY2のメインコンポーネントはリア10速のTIAGRAだが、DEFY1のメインコンポーネントは105になっている。DEFY1とDEFY2の価格差は2万円でしかない。DEFY2を11速化しようとすると、105 5800シリーズに7万円近くかかる上に、ホイールが11速に対応していなければさらに費用がかさむ。さらに工賃も必要になる。このような価格差なら105搭載のロードバイクの方が断然お買い得だ。
105 5800シリーズなら上位グレードとも互換性を持つので、部分的なアップグレードも可能。私は上位グレードのSIL-TEC加工されたチェーンや歯数構成が豊富なスプロケットに興味がある。また、BR-5800はNEW SUPER SLRに対応したデュアルコントロールレバーやブレーキレバーと互換性を持つので、ブレーキのみアップグレードをするのもひとつの方法だ。
GIANT DEFY1 DISCのホイールは11速対応。10速以下のロードバイクのホイールが11速に対応するかは不明
■ 105 5800シリーズは高性能なコンポーネント
105 5800シリーズは、実に完成度の高いコンポーネントだ。近未来的なデザイン、軽快でスムーズな変速動作、高い制動力とコントロール性を持ったブレーキ、パワーロスを抑える高剛性のクランクセット、上位グレードを踏襲したテクノロジーの数々…どれも素晴らしい。
105 5800シリーズは動作が安定しており、走行中にストレスを感じさせない。例えば、フロントのシフトアップでチェーンがガチャガチャして変速できなかったり、ケーブルの引きが重かったり、ブレーキをかけてもすぐに止まれない…といったことが少ない。クロスバイクに付属していたコンポーネントでは、こうしたことに悩まされていたので、安定した性能のありがたみがよくわかる。
このコンポーネントが高性能だと感じるのは、やはり高いスピードで走行しているときだ。安定した動作によって集中力を保つことができ、コンポーネントの存在を忘れて直感的に操作できる。まさに人馬一体といった感じだ。これはブレーキレバーとシフトレバーを一体化した、デュアルコントロールレバーという天才的な発明があってこそ成り立つ。
105 5800シリーズは、ミドルグレードに位置するが、私にとっては間違いなく高性能なコンポーネント。あからさまな性能の妥協がなく、基本的な性能が非常に高い。初めて乗るロードバイクで、このようなコンポーネントに出会えたことをうれしく思う。
105 5800シリーズのおかげで、DEFY1 DISCでの走行はとても楽しい
価格評価→★★★★☆ (コストパフォーマンスが高い。完成車付属品ならさらにおトク)
評 価→★★★★★ (ストレスを感じさせない直感的な操作が可能)
<オプション>
年 式→2015年
カタログ重量→2464g (今回レビューしたパーツの総重量)