購入価格: ¥167,400 (税込)
標準価格: ¥167,400 (税込)
『快適性と直進安定性を重視し、走行中の疲労軽減に特化。過渡期のディスクロードだが完成度は高い』
■ GIANT DEFY1 DISCとは
GIANT DEFY1 DISCは、2016年モデルにラインアップされたディスクロードだ。上位グレードの設計思想を踏襲したディスクブレーキ専用の新型フレームが採用されている。フレームのグレードはALUXX SL(6011アルミ合金)だ。フレームの特徴はアップライトな姿勢と振動吸収性。独自規格のD-FUSEシートポストを採用することで、振動吸収性をさらに高めている。
ディスクブレーキは対向ピストン式のTRP SPYRE-C、メインコンポーネントは105 5800シリーズを採用している。ディスクブレーキキャリパーの取り付けタイプはポストマウント、ホイールの取り付けタイプはクイックリリースだ。現在はフラットマウント、前後12mmスルーアクスルにディスクロードの規格がほぼ定まっており、DEFY1 DISCは過渡期のモデルということになる。そのためか、DEFY1 DISCは2016年モデルのたった1代で終了し、現在はCONTEND SL1 DISCが後継モデルとして販売されている。
前回のレビュー当時はディスクロードの情報がまだ少なかったため、これからディスクロードを購入する人の参考になればと考えて、DEFY1 DISCを手に入れてから早めに投稿した。その後、乗り込むにつれて細かい部分で評価が変わってきたので、再レビューすることにした。
入手直後のGIANT DEFY1 DISC (Mサイズ、500mm)
■ 購入のきっかけ
私はクロスバイクとシングルスピードにずっと乗り続けていた。実は3台目の自転車として小径車を考えていたのだが、ショップに展示されていたDEFY1 DISCに一目惚れしたというのが正直な購入のきっかけだ。DEFYがディスクブレーキを搭載するとこんなにかっこよくなるのかというのが第一印象。カラーリングも購入の決め手になった。前回の投稿で述べたディスクブレーキやロングライドへの興味は後付けというわけではなく、偶然にも自分の目的に合致していた。また、上位グレードを踏襲した性能の高さにも期待した。
1台目のGIANT SEEK R3(左)、2台目のGIANT FIXER R
■ 外観
スローピングフレーム、太いヘッドチューブとダウンチューブ、小さめのリア三角、135mmのエンド幅を採用したフレーム形状に、コンパクトクランクと大きなローギア、ディスクブレーキを搭載したDEFY1 DISCは、まさに次世代のロードバイクといった印象。従来のロードバイクとは異なる外観だからこそ魅力を感じた。スポーツカーのようなパールがかったライトブルーやシンプルなグラフィックパターンも私の好みだ。自転車のかっこよさは自分自身が決めるもの。DEFY1 DISCがかっこいいと私は自信を持っていえる。
ST-RS505を取り付けることで、ひと目でディスクロードだとわかる外観になった
■ 剛性
DEFY1 DISCは縦に柔らかく横に硬いという印象。ヘッドチューブからBBにかけて太く作られており、フレームの横剛性が高いので、ペダリングでのロスやもっさり感はなく、ダンシンングでもパリッとした硬さを感じる。コーナリングやブレーキ時においても、フレームやフロントフォークのたわみはない。
縦に柔らかい部分は主に振動吸収性に関係するものであり、ペダリングやコーナリングのロスにはあまり影響していないと感じた。主に縦にしなるのは、扁平形状のトップチューブとシートステー、独自規格であるD型断面のD-FUSEシートポスト。特にシートステーとD-FUSEシートポストは、積極的にしなっていることが実感できる。これらの部分は横に硬いので、ペダリングやコーナリングのロスにはあまりつながらない。
赤丸の部分は剛性が高く、青丸の部分が縦によくしなる部分
■ 加速性・反応性
DEFY1 DISCは、ペダルを強く踏み込み際の車体がグンと前に出る感覚がやや希薄だ。これはエンデュランス系ロードバイクのジオメトリ(長めのチェーンステーややや大きめのBBハイトなど)に由来するものだ。ただ、フレームの横剛性やBB周りの剛性は高いので、踏み込みでのもっさり感(沈み込みやタメ)がなく、加速性・反応性の高さにもある程度配慮されていると感じた。これはアルムフレームであることも関係しているはずだ。ただ、低速かつシッティングで強くトルクをかけると、D-FUSEシートポストのしなりでパワーのロスを感じることがある。
■ 直進安定性・高速巡行性
DEFY1 DISCは直進安定性に大変優れている。ホイールベースやBBハイトの大きさに加えて、ディスクブレーキ化による低重心も影響していると思う。走行中のバランスを保つのにあまり気を使わずに済むので、交通量の多い道路やロングライドでも精神的な疲労が少ない。また、体幹の筋肉でふらつきを抑えないでいい分だけ疲労しにくくい。また、ふらつきによる怖さが少ないので初心者にも向いている。
高いスピードでの巡行は、DEFY1 DISCの得意とするところだ。私のクロスバイクやシングルスピードよりも速いのはもちろんのこと、いったんスピードに乗せてしまえば維持はたやすく、後述する快適性と相まって、疲労を抑えつつ早く目的地に到着できる。
多摩川CRでも1枚。DEFY1 DISCなら早く楽に目的地に到着できる
■ 快適性
DEFY1 DISCの最大の長所は快適性の高さだ。快適性に大きく貢献しているのが、独自規格のD-FUSEシートポスト。前後のしなりが大きくなるようにD型断面が採用され、尻に伝わる振動を小さくしてくれる。シートステーとシートチューブの接合部を下方にオフセットすることでさらにしなりを大きくし、扁平形状かつ極薄のシートステーが板バネのようにしなるので、リアからの突き上げがほとんどなくて快適。これまでのクロスバイクやシングルスピードのアルミフレームとはまるで別物だ。
リアほどの驚きはないが、フロントも十分に快適。わずかにベントしたフロントフォークにはカーボンブレードが採用され、地面からの突き上げや振動をマイルドにしてくれる。私は現在もDEFY1 DISCに付属するハンドルバーを使っているが、フロントの快適性に不満はない。DEFY1 DISCなら700×25Cでも高い快適性が得られるので、基本的に太いタイヤに交換しなくても大丈夫だ。また、アップライトな乗車姿勢のおかげで、ロングライドでも首や背筋の疲労を抑えることもできる。距離を問わずいつも快適であり、初心者や体力のない人にも最適だ。
独自規格のD-FUSEシートポストは快適性に大きく貢献する
■ 走破性
DEFY1 DISCは振動吸収性が高く、少々荒れた路面でも尻を浮かすことなく走り抜けることができる。しかも、DEFY1 DISCの安定感なら、舗装路で地面のくぼみにハンドルを取られることはほとんどない。むしろ、積極的に荒れた路面を走るのが楽しく、グラベルキングのような未舗装路にも対応したタイヤを装着することで、路面を選ばずに走り回れる。
DEFY1 DISCは振動吸収性が高く、舗装路以外も走りたくなる
■ コーナリング
高いスピードで急カーブに侵入しても、ハンドルを切ったぶんだけ素直に曲がってくれる。直進時と同様にコーナリングでも安定感しており、アンダーステアやオーバーステアが出にくい。また、フロントフォークの剛性が高いので、カーブでもたわむことはなく、ローターとパッドが接触することもない。ディスクブレーキの制動力に対応するために、フロントフォークの左側がわずかに太くなっているが、コーナリングでの左右差は感じられない。
■ ダンシング
フレームとフロントフォークの剛性が高いので、ダンシングでもしっかりと力が伝わる。このときもローターとパッドが接触することはないし、ディスクブレーキの補強による左右も感じない。だが、デュアルコントロールレバーを油圧式に交換すると、ハンドルバーの両端が重くなるため、ダンシングでの反応が非常に悪くなる。この点を解決するには、ハンドルバーの位置をできるだけ下げ、広めのハンドルバーを使う必要がある。
ST-RS505でスムーズにダンシングするには、幅の広いハンドルバーを低い位置に取り付ける必要がある
■ ヒルクライム性能・ダウンヒル性能
私が所有するクロスバイクやシングルスピードよりはずっと坂を登りやすいが、シッティングでの踏み込みではD-FUSEシートポストがしなりやすく、キャリパーブレーキモデルのDEFYよりも重量面で不利なため、登りにはあまり向いていない。だが、逆に下り坂での走行は大変優れており、コーナリングでの安定した挙動に加えて、ディスクブレーキならではの高い制動力のおかげで、安心して坂を下ることができる。
■ ブレーキ性能
DEFY1 DISCのホイールの取り付けタイプがクイックリリース式だが、油圧式ディスクブレーキの高い制動力をフレームとフォークがしっかりと受け止めてくれる。ブレーキ時のフレームやフォークのねじれによるパッドとローターの接触はないし、ホイールのズレやフォークの振動も一切ない。
制動力を受け止めるという点ではスルーアクスルの方が有利なことは明らかだが、GIANTのディスクロードはクイックリリースを採用している時点で、すでにディスクブレーキの高い制動力への対応が完了していると感じた。ただし、クイックリリースは、キャリパーのセンター出しを念入りに行わないと、ホイールの装着の際にパッドとローターが接触したり、ブレーキ時にローターがたわむことがある。おそらく、この点ではクイックリリースはスルーアクスルよりも不利だと思う。
ディスクブレーキに対応するために、斜め前方に向いたフォークエンド(左)
ディスクブレーキ台座周辺はボリュームがあり、リア三角の形状は左右非対称(右)
■ 乗車姿勢・ポジション
DEFY1 DISCは短めのトップチューブと長めのヘッドチューブを採用しており、アップライトな乗車姿勢をとることができる。だが、ハンドルを最も下げてもまだアップライトな姿勢であり、サドルとハンドルの落差をあまり大きくとることができない。
落差を大きくしてサドルとハンドルにうまく体重を分散できれば、長時間の走行でも手や尻は痛くならないが、終盤で首や背筋の疲労を感じることがある(シングルスピードで確認済み)。DEFY1 DISCのアップライトな姿勢は首や背筋の疲労を軽減し、ハンドルを最も下げればペダリングもしやすくなる。ちなみに、私は現在のポジションがベストであり、最も快適かつ進みやすいと感じている。
ハンドルを最も下げた状態でもややアップライトな姿勢になる。
■ メンテナンス性・拡張性
ケーブルが外装式のフレームなのでメンテナンス性が高い。油圧式ディスクブレーキを取り付ける場合は、ブリーディングでブレーキホースをまっすぐに伸ばせるので、エアをスムーズに抜くことも可能だ。DEFY1 DISCはトップチューブにケーブルがないのが救い。今後のトップチューブバッグやフレームバッグの導入の際に、ケーブルの干渉を考える必要がなくなる。
前後にダボ穴があるので、キャリアやフェンダーの取り付けも可能。ただし、リアキャリアを取り付ける際には、シートクランプを専用品に交換する必要がある。カタログでは700×28Cまでのタイヤ幅に対応が可能とあるが、実際にはタイヤクリアランスにはだいぶ余裕があり、もっと太いタイヤやフェンダーを取り付けることができるはずだ。前述の走破性とも相まって、DEFY1 DISCは多用途に使用可能だ。
ケーブルが外装式なので、油圧式ディスクブレーキの換装やメンテがたやすい(左)
700×28Cのタイヤを装着しても、タイヤクリアランスに余裕がある(右)
■ シートクランプ
DEFY1 DISCの最大の弱点は、シートクランプの出来の悪さだ。ボルトの締め込みが強いと、ボルトの横方向に力がかかって破断する場合がある。シートクランプの最大締め付けトルクは5Nmだが、実際の締め付けトルクは3.5〜4Nmくらい。カーボン用の摩擦増強剤も併用し、できればシートクランプのねじのタップを立て直した方がいい。現在はシートクランプを新品に交換して問題なく使えているが、できればシートクランプは臼式にして欲しかった。
ESCAPE RXにも同じシートクランプが使われている
■ コンポーネント
○駆動系
メインコンポーネントに105 5800シリーズが採用されており、ストレスのない操作やペダリングが可能だ。クランクはFC-RS500、チェーンはKMC X11Lのままでも問題ないが、FC-RS500はクランク長が172.5mmと長めなので170mmに変更している。また、私の行動範囲では、11-30Tのカセットスプロケットを使うような坂はないので、現在は12-28Tに交換している。
クランクとチェーンを105 5800シリーズに統一(左)、現在のスプロケはFC-9000 12-28T(右)
○ブレーキ
DEFY1 DISCはTRP SPYRE-Cという機械式ディスクブレーキが搭載されている。対向ピストン式なのでメンテナンス性が高く、調整の幅も広いが、レバーの引きが重くなりがちだ。制動力の高さは長所だが、同時にレバーの引きの重さが弱点にもなり、調整次第ではディスクブレーキはこりごりだと感じる人もいるかもしれない。SPYRE-Cを使い続けるなら、付属のローターとパッドは音鳴りしやすいので、シマノに交換したほうがいい。また、費用はかかるが、油圧式ディスクブレーキに換装すれば、ブレーキ性能は大幅に向上する。
油圧式ディスクブレーキは、DEFY1 DISCにとって最も効果的なカスタム
○ホイール
リムハイトのわりに剛性感はそこそこだが乗り心地はいい。3カ月くらい経つと振れが出てくるが、防水性には優れているのでしばらくは使うのも悪くはない。ただ、ローターの取り付けタイプが6ボルトであり、140mmローターの選択肢が少ない。ホイールのアップグレードの際には、いい機会なのでローターの取り付けタイプをセンターロックにしたほうがいいだろう。
反応性に優れるFULCRUM RACING5 DB。ローターの取り付けタイプはセンターロック
○D-FUSE シートポスト
付属のD-FUSE シートポストは、シートクランプの上下の溝を合わせて角度を調整するタイプなので微調整ができない。上位グレードのD-FUSE シートポストなら角度を無段階に微調整できるが高価。サドルの角度は快適性に大きく関わる部分なので、できれば無段階で角度を調整できるシートポストを標準で搭載して欲しかった。
上位グレードのD-FUSEシートポストなら、サドルの角度の微調整が可能
○その他のパーツ
ショートリーチのハンドルは使いやすい形状なのでそのまま使っている。サドルはクッションが多くて快適だが、見た目がややチープだ。付属のフラットペダルはこれといった特徴はなく、早めにビンディングペダルに交換したほうがいいだろう。タイヤの転がり抵抗やグリップはまあまあだが、耐パンク性が高いのでそんなに悪くない。
■ CONTEND SL1 DISCについて
CONTEND SL1 DISCの仕様を見ると、DEFY1 DISCがラインアップから外れた理由もなんとなく理解できる。CONTENDはGIANTの独自の油圧式ディスクブレーキを採用し、ケーブルはすべて内装式。チェーンステーにサイコンのセンサーユニットを埋め込むことも可能であり、チューブレスレディのホイールも付属する。DEFY1 DISCと同じ価格のまま、大幅にコストパフォーマンスを向上させている。
試乗したところ、DEFY1 DISCよりも反応性に優れており、快適性と直進性安定性も十分満足できるレベルにあるという印象だった。独自の油圧式ディスクブレーキはケーブル式とのハイブリッドタイプだが、ケーブルの部分が短いので使用感は油圧式そのもの。制動力やコントロール性にも優れている。全体的に完成車としての価値を高めており、反応性と快適性のバランスとしては理想的。DEFY1 DISCよりもCONTENDの方が、短い距離でのキレのある走りから疲労を抑えたロングライドまで、初心者が幅広く楽しめそうだと感じた。
DEFY1 DISCには、チェーンステーにセンターを埋め込める"RIDESENSE READY"が採用されていない
■ 総評
GIANT DEFY1 DISCは快適性と直進安定性を重視した、走行中の疲労軽減に特化したロードバイクだ。加速性や反応性に優れたタイプではないが、これは快適性と直進安定性とのトレードオフの結果だ。振動吸収設計のフレームとD-FUSEシートポスト、アップライトな乗車姿勢によって、ロングライドの疲労の蓄積を抑えることができる。走行中のふらつきにあまり気を使う必要がないので心身ともに疲れにくく、ライドの最後まで集中力を持続しやすい。また、フレームの横剛性が高いので、ペダリングでもっさり感が出ないように配慮されている。
DEFY1 DISCは過渡期のディスクロードだが、フレームとフロントフォークの完成度は高い。ディスクブレーキの高い制動力をしっかり受け止め、ディスクブレーキの補強によって左右差が出たり、乗り心地が悪くなることはない。ただ、クイックリリース式はホイールの装着に少々手間がかかる。また、機械式のTRP SPYRE-Cはレバーの引きが重くなりがちで、ロングライドでの疲労の原因になる可能性がある。楽にブレーキ操作するためには油圧式ディスクブレーキが必須であり、このことはディスクロードの評価を左右する重要な点だと感じた。
GIANTとしてもDEFY1 DISCは過渡期のディスクロードだが、この時点でも上位グレードを踏襲した基本性能の高さはさすが。圧倒的に乗り心地がよかったからこそ、DEFY1 DISCを手に入れてよかったと思える。その後のカスタムでは、自分好みの乗り味と最適なポジションを手に入れ、油圧式ディスクブレーキに換装。タイヤの交換で路面を選ばずに走り回れるようにもなった。DEFY1 DISCを自分だけの1台に仕上げることができたので大変満足だ。
のんびりとした走りで、DEFY1 DISCの乗り心地と菜の花の美しさを満喫
価格評価→★★★★☆ (コストパフォーマンスに優れる)
評 価→★★★★☆ (フレームとフロントフォークは星5つ。パーツはブレーキの引きの重さで星4つ。総合評価は星4.5)
<オプション>
年 式→2016年モデル
カタログ重量→9.5kg(Mサイズ、500mm)、カスタム後は9.3kg