購入価格 ¥1800
フランスの旅行車、Alex Singer(アレックス・サンジェ)を特集しています。
同時にフランスの自転車事情がとてもよく伝わってきます。
こちら裏表紙
日本の旅行車の多くはフランスのAlex SingerやRené Herse(ルネ・エルス)を範としている、というのはこれまで度々、謂われてきたことですが、したがって特に、この2つの工房とその自転車に関しては時々、自転車雑誌で見ることがあります。対してこの本は、これまで雑誌で見慣れてきたものとは一線を画しているように思われます。
Alex Singer特集では、単なるエンスーな、または凡百な自転車紹介ではなく、Alex Singerを愛用する人々の、自転車とともにある日々の暮らしも取り上げます。文章が躍動しており、多少の誤植など全く気になりません。
(引用)
ややもするとアレックス・サンジェはヴィンテージバイクの専門店に思われることがあるようだが決してそうではない。自転車ビルダーという職人にして、自ら 「うちはこういう自転車専門だ!」 とは主張しない。顧客の満足する自転車を作り上げていくのがアレックス・サンジェの仕事なのだ。
(引用終わり)
これなど、実にステキな一文だと思うわけです。
こんな工房で自転車を作ってみたい、と思わせてくれます。
「うちには、これといった特徴というものがないんです。頼まれればなんでもやるのが、うちの特徴といえば特徴なんですが」
とは、相模原のビルダー、細山正一氏の言葉ですが、似たような響きを感じます。少なくともこういう職人さんは、本当のプロフェッショナルなのではないだろうか、という気がします。
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Alex Singer以外の文も面白いものばかりです。
筆者はフランス在住であり、それ故なのか、文章には現地の生きた情報が横溢しています。” L' Eroica” という、ヴィンテージ・バイクによるサイクリング大会の描写は特に、出色です。自分の気に入った自転車で走ることに喜びを感じる人々の表情が見事に描かれます。似た風合いのイベントが日本でも行われ始めているようです。
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ムック、雑誌の体裁をとっていますが、広告ページが存在しません。これは驚きですね。
で、この「雑誌」
2012年発行のこの号の翌2013年夏に、モールトンなど英国車を特集した号が出ましたが、その次は??と思っていたらようやく、ついこの間、2015年9月にアレックス・モールトンを特集した号が出ました。あれれ、もう次はないのかな?? なんて迂闊にも思ってました(笑)。
disposable magazineとは一線を画する、何度読んでも楽しい本。櫻井朋成さんというフランス在住のライターが書いておられるこの自転車本。日本の自転車雑誌とはまるで、流れる時間が異なるかのような自転車本、です。無理のないペースで、じっくり、息の長い雑誌として続けていってもらえたら、と思います。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★★★
年 式→2012年11月