購入価格 ¥11,500
・使用期間 1年半
・使用環境 通勤、ツーリング
・周辺パーツ
サドル : BROOKS SWIFT
リアバッグサポーター : NITTO R10
◆要点
・丈夫かつ大容量 (15~18L)
・面倒な脱着も工夫次第でワンタッチに
・降車後はショルダーバッグに早変わり
◆購入経緯
渡英中湖水地方のとある村でお会いした老紳士の自転車に年季の入ったサドルバッグを見つけた。軽く四半世紀は使われてきたであろうそのバッグは、緑の生地が茶色くくすみ革のベルトは千切れかけ形も崩れてボッロボロ。往年のスポルティーフに革の反り返ったサドルとこの萎びたバッグ。そしてそれ以上に年季の入った老紳士の深い眼差し。すべてが絶妙に調和したなんとも言えない風情ある佇まいに、言いようのない魅力を感じ強く心を惹かれた。Carradiceという名前もその時初めて知ったのだが、その後実用性や値段などはほとんど意識せず、ただあの老紳士が使っていたものと同じものが欲しいというだけの理由で購入を決めた。
◆外観
緑と紺の二色があるが、ベルトが本革の前者を選択。日に焼ける前の新品は思っていたより目立つ緑で茶色いベルトとのコントラストに少し戸惑った。15〜18Lという容量の通り、ぱっと見でもかなりの大きさがあり加えてこの配色なので、今風のスポーティーなカーボンバイクなどとはどうにも合いそうにない。ここはやはり細身のクロモリと革サドルに合わせるのが一番しっくり来るのではないだろうか。
左)サドルの位置によって取り付け角度は変わる
右)サポーターが当たる底面は生地が二重、タイヤからの水はねやサポーターとの摩耗に強い作りになっている
◆性能/使い勝手
・収納
見た目以上によく入る。輪行袋と上下雨具、下着の着替えと工具と弁当、これだけ入れてもまだなおかなり余裕があるので、日帰りロングライド程度には少し大きすぎるくらい。やりようによってはこれとフロントバッグくらいで長期ツーリングも可能かも。
通勤通学での使用でも。14インチのラップトップがすっぽり入る。
そして何気に優秀なのがこの両サイドの小ポケット。片方にこれだけのものが入る。
アクセスしにくい左側にこれらの工具を入れ、右側には財布やちょっとした補給食を入れておくことが多い。
なお、このモデルはフラップを伸ばすことで容量が15→18Lに増す…のだが、実際の収納スペースが広がるわけではない。受け口のサイズは一定でそれを上から覆うカバーが広がる構造。そのため使い方としては、貧乏旅の味方銀マットを保持したりするのに役立つ。
これでもまだベルトに余裕がある。
・防水
ウォータープルーフ・コットンを謳っているとはいえ、流石にオルトリーブほどの完全防水とはいかない。横殴りの強い雨に長く晒されるとじんわり内部に染みてくる。濡れもそうだが水を吸うことでかなりの重さになるので、長時間の雨天走行が予想される場合はレインカバーが必須。下からの水はねもあるので、なるべく全体を覆える大きめのものがいいだろう。こまめに撥水スプレーをかけていることも効いているのかもしれないが、小雨程度であれば一時間走っても不安はない。
・取り付け/ワンタッチ着脱化
自転車本体との取付は三箇所、シートポストとサドルの左右ベルト受けに革ベルトを通して行う。BROOKSには標準でこのベルト受けがあるが、普通のサドルで使う場合は別売りのクイックリリース式アダプターが必要。
このアダプターがあれば着脱は容易なのだが、革ベルトのみでの取付の場合が実はかなり面倒。サドルに取り付ける革ベルトはかばん内部の添え木を一周してバックルで留めてあるので、着脱の際は一度バッグを開き、内側のバックルを外してもう一度外からベルトを引っ張らなければならず、自転車から離れるたびにこれをするのはなかなかに煩わしい。じゃあおとなしくアダプター使えよという話だが、そうすると本体にプラスチック製のアタッチメントを常に装着しておく必要があり、革と木綿のこのバッグにはあまりに無粋で似合わない。
そこで一工夫。手芸屋でこんな金具を買ってきた。
2つで300円くらい。
金具下部にベルトを通し、内部の添え木に固定。もともとベルトが通っていた穴から頭のクランプ部を出し、サドルのベルト受けにカチャリ。あとはシートポストのベルトをぎゅっと締めておしまい。かかる時間はほんの十数秒。なんとお手軽。
革ベルト装着時と比べて多少安定性は落ちるが、ド派手なダンシングでもしない限り暴れることもないし、落ち着いた外観を損ねることもない。
またこのバッグには肩ベルト用の金具も付いているため、降車後は大きめのショルダーバッグにもなり得るところが個人的に非常に大きなポイント。はじめは中の添え木が邪魔かなとも思ったが、実際に肩からかけてみると腰のあたりでそれほど違和感無く落ち着き、兼用バッグとしては十分実用に耐える。
なにより毎日の通勤通学で、駐輪場に停めて鍵をかけてさっとバッグを外し肩にかけてそれいけ、という一連の流れがノーストレスで実現したことは、走行中はなるべく荷物を身につけていたくない私にとって本当にありがたかった。
これも手芸屋のありあわせ。走行中は片方外してバッグ内に押し込んでおく。
◆総評
軽く機能性に富む最新のパーツは、それはそれで素晴らしい。
しかし冒頭に述べた老紳士のバッグがそうだったように、乗り手とともに日に焼けて、乗り手と同じ雨に濡れ、徐々に色褪せていきながら完成されていくものもある。
今はまだ明るく分厚い木綿の生地と、かっちり残る四角い型が、薄く柔く萎びてくるころには、自分はどれほどの道を経てどんな人間になっているのか。ぼーっと眺めているとそんなことにまで思いが及ぶ。
みんな誰でも感性と経験に根ざしたとっておきのお気に入りがあると思いますが、私の場合はこれがそう。
伝統的な外観から感じる過去の厚みと、それと共に過ごすこれからの豊かさを確かに感じさせる、真の意味で「クラシック」な思い入れの深い逸品です。
価格評価→★★★★★ (四半世紀は持つことを思えば)
評 価→★★★★★☆☆☆.... (まだまだこれから)