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これは上のレビューの続編です。
上の2レビューにおいて、ツールド草津での走行パワーを≪RoadLoadSurveyor≫で計算してみましたが、今回は、体重とヒルクライムタイムの関係について確認してみます。
■■■ 体重低減と登坂タイムの関係 ■■■
同じパワーを出力できるのであれば、体重が軽い方がよい登坂タイムが出ます。これは当然なのですが、では、体重1kgの軽量化による登坂タイム短縮へのインパクトは如何に?
これを≪RoadLoadSurveyor≫で調べてみます。
なお、≪RoadLoadSurveyor≫はCBNで2013年夏にリリースされた『走行抵抗計算ツール』です。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/static1/index.php?content_id=32■■ 計算手順 ■■
これまでと同じくツールド草津の事例を使って計算します。
≪ヒルクライム計算≫
・コース全長 : 12km
・標高差 : 760m
・目標タイム : 44分45秒
・身長 : 176cm
・体重 : 78kg
・自転車+装備 : 9.0kg
以上を≪RoadLoadSurveyor≫の計算シート≪ヒルクライム計算≫に適用して計算します。やり方は一番上のレビュー
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=12975&forum=105&post_id=22531#forumpost22531を参照してください。
■■ 計算結果 ■■
前述の条件で計算すると、結果は、
『ツールド草津を44分45秒で走るために必要な平均パワー → 280W』
となります。
次に、EXCEL計算シート≪ヒルクライム計算≫で体重を78kgから1kgだけ減量して77kgとします。
この状態で平均パワーの計算結果280Wを与えるような目標速度を≪ヒルクライム計算≫の15行目に設定します。何度か数値を入力して、最終的に
16.27km/h
を入力すると、280Wを得ることができます。このときのタイムは計算シートの27行目に示され、44分21秒となります。オリジナルタイムから24秒が短縮されました。したがって、
『78kgの体重を1kgだけ減量して同じ280Wで走ると、ツールド草津の登坂タイムが24秒、つまり0.9%だけ短縮される』
となります。
■■ 10kgの減量でどうなる? ■■
体重を78kgから10kgだけ減量して68kgとして、前述と同様に試行すると、
17.76km/h
を入力することで280Wを得ることができます。このときのタイムは40分37秒となります。オリジナルタイムから4分8秒が短縮されました。したがって、
『78kgの体重を10kgだけ減量して同じ280Wで走ると、ツールド草津の登坂タイムが248秒、つまり10.7%だけ短縮される』
となります。
こちらオリジナルの各抵抗比率
こちらは10kg減量の場合
上に10kgの減量前後の各走行抵抗の割合を示しました。比率でみると似たようなものです。登坂抵抗もあまり変化なしです。しかし10kgも軽量化していますから、同じ登坂抵抗で走れば、タイムはその分、縮まるという算段です。何と言っても、重力に反して質量を持ち上げる仕事が登坂抵抗、ですので。
さて、投入するパワーの単位はワット(W)ですが、これは単位時間当たりの仕事の大きさである≪仕事率≫を表します。一方、この仕事率を時間で積算したものを単に≪仕事≫とか≪エネルギー≫などと呼び、単位はジュール(Joule)です。10kgの減量で、同じ仕事率280Wを投入する時間が短くなっていますから、行う仕事もその分少なくなり、減量前の88.8%の仕事で済むことになります。
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しかし、単に体重を軽くして同等のFTP ( functional threshold power ) を出力しようなどという考えはかなり邪です。体重78kgで自身の納得できるパフォーマンスを発揮している人が10kgも減量するのは少々やり過ぎでしょう。どこかにバランスポイントがあるのは当然で、そのバランスポイントは人それぞれ。それを自分の適性を考慮しつつ努力と知力で探し出すのがプロフェッショナルの方々の流儀なのでしょう。
宇都宮ブリッツェンのスプリンター、大久保陣選手は184センチで66kg。スプリンターとしては身長に比して軽めの体重です。一方、1990年代のツールで5連覇を成し遂げた偉大な選手、スペインのミゲール・インデュラインは188センチで75kg(ただし1992年当時の某関連書籍の情報)。個人TTで圧倒的な強さを誇りつつも、山もかなり得意でした。大久保選手の体重が今後、どんな変遷を辿るのか注目するのも面白いかもしれません。(脱線)
■■■ まとめ ■■■
走行抵抗計算ツール≪RoadLoadSurveyor≫を使って次のことが示されました。
78kgの体重を1kgだけ減量して280Wでツールド草津を走ると登坂タイムが24秒、つまり0.9%だけ短縮される。また、10kgだけ減量して同じ280Wで走ると、登坂タイムが248秒、つまり10.7%だけ短縮される。(ただしその他の条件は上述)
価格評価→★★★★★
評 価→★★★☆☆(少々使いにくいツール)
年 式→2013