日韓関係が過去最悪となっているらしいが、そんな不適切なタイミングで初めて韓国・ソウルを訪問した。三日間滞在したのだが、そのあいだ自転車関連で気付いた点について書いてみたい。なおCBNは政治的見解を述べる場ではないので、自転車に関係のないことについては触れないこととする。
1. ソウルの一般的な車道について
自転車の乗りづらさは東京のそれと大差ないように感じた。右側通行。クルマの運転は東京に比べてより乱暴ということはない。クルマのクラクション使用頻度は東京や中国よりずっと少ないと感じた。渋滞は多い印象。
2. スポーツ自転車人口
超短期滞在かつサンプル数1による印象で恐縮だが、思いの外スポーツサイクルが流行していて驚いた。ただしソウル市内の道路をロードがしょっちゅうビュンビュン走っているわけではなく、電車や観光バスから眺めた漢江(ハンガン)という川沿いのサイクリングロードを相当な数のロードやクロスバイクが走っているのが見えた。漢江というのはものすごく幅の広い川で、両岸に本格的なサイクリングロードが設置されていた(距離もそれぞれ約40kmと相当長い。往復すれば80km)。ソウル市内は特に自転車フレンドリーではなかったが、この漢江サイクリングロードは立派だった。スポーツ自転車愛好家は結構多いのではないかと思った。
3. 自転車の車種
本格的なスポーツサイクルで最もよく見かけたメジャーブランドはSpecializedとGIANT。他にSCOTTやLouis Garneauも見かけたが、日本でも有名なブランドを見かけるのは全般的に稀で、CELLOをはじめとした韓国独自のブランドのものが8割を占めていたように思う。韓国の人々は日本人・中国人同様、ブランド志向が強いようだが、一部の超高価な製品を除いて自国ブランド・自国製品が多くを占める。クルマにしても白物家電製品についてもそうだが、自転車でも同じなのだろうという印象。驚いたのは大量生産の安い軽快車・クロスバイクに装着されているコンポでシマノ製を見かけなかった点(見たことのない謎コンポが付いていた)。
(ちなみに有名な楽器店街も訪れたところ、楽器も同様で日本では見たことも聞いたこともない現地ブランド製品が市場シェアの8割以上占めているのではないかと思った。様々なカテゴリーでこういう傾向があるように思った。)
漢江サイクリングロード及びソウルの街中ではブロンプトンのような趣味性の高い自転車に乗っている人もよく見かけた。自転車は相当流行っているように見えたが、TIMEやLOOKやCOLNAGOをあちこちで普通に見かける日本ほど市場は成熟していない印象。
4. ソウル地下鉄と自転車
今回の滞在で自転車的に最も印象に残ったのはソウル地下鉄の自転車対応度である。平日を除き、地下鉄の特定の車両(確か最後部)に自転車をそのまま持ち込むことができる。折り畳み自転車は折り畳んだ状態であれば常時持ち込み可、と下の張り紙に英語で書かれている。なおソウル地下鉄の電車車両は日本のそれよりも横幅が広かった。
自転車に対応した改札口(車椅子・ベビーカーも通過可)が用意されている駅もあった。
ソウルの地下鉄はエレベーターやエスカレーターが少なかったが、自転車にフレンドリーなプルウェイが設置されていた。下の写真3枚がそれ。結構ロードを持って電車に乗り込む人を見かけた。インラインスケートでのトリックに最適に見えるが、勿論禁止されている。
現在東京は2020年の東京オリンピックに向けて「先進国最悪レベル」とまで称されている自転車インフラを何とかしようとしているらしい。ふと、東京の地下鉄もソウル地下鉄のようになったらいいのにな、と思ったのだが、恐らくそれは無理かもしれない。東京のほうが遥かに人口が多く、週末限定にしたとしても自転車のそのままでの持ち込みは許可できないだろう。
ただ、先述の「漢江サイクリングロード」は遠くから眺めているだけでも素晴らしいと思った。自転車レーンと歩行者レーンがきちんと分かれている区間も多いように見えた。幅も広い。東京・埼玉で最も自転車人口が多いと思われる荒川緊急河川敷道路(上流では荒川サイクリングロード)も、あんな感じでオリンピックまでに整備できないだろうか。
日本(東京)のインフラは他のアジア諸国に比べて歴史が長い分、古くなってきている。通信網にしても、交通網にしても新興国のほうが新しいものに対応する際は有利。とはいえ東京もちょっとづつで良いので自転車環境を整えてもらいたい。舛添知事は東京の自転車整備事業に興味があるようなのでその方面での活躍に期待したい(脱線失礼)。
評 価→★★★☆☆ 全体的に。地下鉄の自転車対応度に関しては東京より進んでおり★★★★☆の評価。
<オプション>
年 式→2014
【おまけ】
ソウルの地下鉄は有事の際、核シェルターとしても機能するのだという。どの駅にもこのような防毒マスクセットが用意されていた。しかし数が非常に少なく、実際に必要になった場合はどうするのだろうと思った(ないよりは良いのかもしれないが)。