購入価格$162 @ Universal Cycles (送料別)
Chris Kingのロード用ハブ、R45を完全分解・組立てするために必要なサービスツールです。フロントハブのベアリングプリロードを調整するためのコーンアジャストメントツールも付属しています。
本品はR45専用で他のハブとは互換性が無く、ClassicやMTB用ハブを手入れする場合は別の工具が必要となるので注意が必要。また、一般工具だけで再注油やクリーニングのための部分的な分解やドライブシェル・アクスルのアッセンブリー交換等は可能なので、このツールはベアリングの1個まで徹底的に自分でバラしてオーバーホールしたいというショップやヘビーユーザー向けとなります。使いこなすにもそれなりに根気や知識が必要となるので、気軽に買ってしまうと後悔するかもしれません。
例えば、アクスルコンバージョンのレビューで出てきたドライブシェルベアリングの抜き取り。下記はマニュアルからの抜粋ですが、このような手順指示を読んで具体的に作業の内容を想像する知識と根気がないと、使いこなせずに持て余すでしょう。まだ日本国内のインポーターもマニュアルのローカライズが出来ていないような状態ですので、使いこなすにはこれを読み解かないと何も出来ません。
Rear hub driveshell disassembly
R45 tool setup for driveshell disassembly
Slide drive shell bushing onto T-handle with wide side facing thrust collar. Slide small split ring onto threaded portion of extension shaft with laser side facing knurled end of extension shaft. Then slide cone onto extension shaft with conical side facing split ring. Thread extension shaft onto T-handle until assembly is snug, but split ring is not expanded.
1. If outboard driveshell bearing remained inside driveshell when axle was removed from driveshell, proceed to step 2. If outboard driveshell bearing was removed along with axle when axle was removed from driveshell, simply remove O-ring and driveshell spring from driveshell manually.
2. Insert the T-handle into the narrower, non-driveside end of driveshell.
3. Thread knurled ring, laser side facing T-handle, onto extension shaft exactly 4 turns.
4. Move driveshell so it sits against knurled ring.
5. Turn extension shaft clockwise until tight to fully expand split ring behind inboard driveshell bearing.
6. Hold knurled ring stationary in one hand, while turning T-handle clockwise with the other hand. This will remove all remaining contents of driveshell, including inboard driveshell bearing and white bearing seal.
どうだったでしょう?
文章を普通に読むだけでもそう簡単な話ではありませんが、ざっと翻訳・解説してみると、
まずドライブシェルブッシングを口の広いほうからTハンドルのスラストカラー(中心軸の根元)に差し込み、次にエクステンションバーにベアリングを押し出すためのコレットとなるスプリットリング(大小あるうちの小さいほう)とウス役の円錐状のスライドを嵌め、Tハンドルのねじ切りしてあるほうに嵌めてスプリットリングが広がり始める寸前までしっかりねじ込む。
1.アクスルをドライブシェルから抜き取る際、外側のベアリング(ドライブシェルベアリングCのこと)が残った場合はそのままそのまま手順2.へ進む。ベアリングがアクスルと一緒に抜けた場合はOリングとドライブスプリングをドライブシェルから手で抜き取る。
2.ドライブシェルを、口の狭まった方からTハンドルに差し込む。
3. ローレット(knurled)加工されたリングを、レーザー刻印された面を表にしてTハンドルのエクステンションバー側にあてがい、キッチリ4回Tハンドルへねじ込む。
4. ドライブシェルをローレットリングに当たる位置までスライドさせる。
5. エクステンションバーを、スプリットリングが完全に拡がってドライブシェル内のベアリングを押さえるまで時計回りにねじ込む。
6. ローレットリングを片手で押さえたまま、Tハンドルを時計方向に回せばドライブシェル内のパーツが全て外れる。
といったように、内容まで複雑怪奇です。
まるで金庫でも開けるかのようなややこしい手順になっているのですが、マニュアル内解説の横には簡単な写真が2枚付いているだけなので、文章を読んだだけでおおよそを理解し、写真で足りない情報を補足しなければなりません。工具自体の使い方もかなり独創的というか、見ただけでは使い方が想像できないようなものなので、初めての人にすべて自力で理解して実行しろ、というのはなかなかハードルが高いでしょう…もしかして、これは王様による王様ゲームなのか!?
万事この調子で、素人・一見様お断りな感じがプンプンと漂っています。工具そのものはとてもよく出来ていて、悔しい(?)程に非の打ち所がなく、理にかなったものです。マニュアルの指示を忠実に再現できれば確実に作業を行えるのはさすがの王様印ですが、肝心のマニュアルには重要な手順説明が文章だけでサラッと、淡々と書かれているのが困ったところで…Shimanoやカンパの取説は手取り足取りすべて図解とイラストで丹念に教えてくれますが、そんな親切さを王様に期待しても無駄。もちろんツールの動作原理がちゃんと理解出来れば、マニュアルに書かれていることにも納得がいくのですが、初めてやる作業は少なくとも3~4回は文章を読み返して熟考しないとミスを犯す可能性が高いです。余の説明にしっかりついてこれないなら、それはそちが悪いと言わんばかりの調子なので、覚悟を決められないなら手を出さないほうがいいでしょう。先のベアリング抜き取りも、指示の読み違えでスプリットリングの扱いをひとつ間違えば、えらく高価なベアリングがバラバラになるか、最悪は高価なツール本体も破損させてしまうリスクがあります。
購入して使うのなら心しましょう。$180と非常に高価な工具ではありますが、使いこなせるようになるとどこが壊れようとももう怖いものなしです。CKは部品供給も優秀なので、製造されている限りは何度でもハブを蘇らせることが出来るでしょう。裏を返せばこのツールを使いこなすスキルがなければ肝心な事は何もできないということであり、果たしてそんなショップが自分の近所にはあるのか、いくら考えても思い当たらなかったので私は自費で購入して使いこなす努力の道を選びました。古くからMTBに力を入れていてChris Kingハブの構造に関する基本的なノウハウを持っているところなら任せられるかもしれませんが、最近そんなショップはすっかり無くなってしまいましたし…R45が入ったホイールを売ってはいてもちゃんとサービスまでできるロードメインのショップは、かなり少ないんじゃないかと想像します。ハードに使う人は、自分で使いこなせるようになったほうが安心でしょう。逆に自分で手を入れる気が無い人や頼れるショップが身近に無い人は、R45含めChris Kingのハブは避けた方がいいのではないかという気がします。
価格評価→★★★☆☆(長く使わないと到底元が取れない)
評 価→★★★★☆(工具としての出来は満点。マニュアルがもう少し分かりやすかったなら…もっとR45は売れているはず)