購入価格 ¥14,300
馬鹿野郎!
「このサイコンは失敗作だ、使えないよ」
「明日またこのサイクリングロードに来てください。本物のサイコンをお見せしますよ」
「サイコン三銃士を連れてきたよ」
だの、随分としたり顔で語っているようだが、その本質を理解しているやつは誰もいないようだな!
いいか、サイコンってのはただの計測器に見せかけて、
その実自転車乗りが今まで辿ったコースの体現、つまり生き様の写し鏡なんだよ!
付けているのがCATEYE VERO 9だろうがGARMIN Edge 810Jだろうが、
刻み付けた道程に貴賤は存在しない。
自転車と乗り手、そこにサイコンがもたらす客観的な数値が加われば、
毎日の漫然とした通勤路であろうと渾身の力を込めたタイムトライアルになる!
だが、高機能な電子機器に囲まれ、デジタルディバイドなど物ともしない現代の若者には、
このような言葉も馬の耳に念仏でしかないのだろう。
ここは一つ、俺がサイコンの真の価値を身をもって知った出来事を話すしかないようだな……。
あれは、俺が初めてのスポーツバイクであるESCAPE R3を手にし、
勢いのまま大した用意もせずに近くの荒川河川敷を走りに行ったときのことだった。
真冬だから飲み物など道すがらで買えばいい、厚着をして行けばどうということはない。
今思えば、自転車に乗ると言うことを随分と軽く見た、無鉄砲な行動だったと顔から火が出そうになる。
河川敷に出るや否や、俺はギアを重く入れ替え、脚の回るままに舗装路を勢いよく走り出した。
デヤアァーーーー!
真冬にしては随分と暖かい日で、今思えば川上に向かう南風が吹いていたのだろう。
余りにも軽快に走り続けられることに感動し、自分のスタミナも顧みずに川上へを走り続けた。
俺「ガハハハハハ! 何という速度だ、乗るまではデスクワーク慣れした俺にスポーツバイクが乗りこなせるか不安だったが杞憂だったようだな!
見ろ、景色が真後ろに流れていく! この自転車を買ったのは誰だ! そう俺だ!」
調子に乗ったまま一時間は走り続けただろうか、いつしか荒川は冬の名物堤防工事区間に差し掛かっていた。
今日はそこで折り返すことにし、その前の休憩に近場の自動販売機を探した。
だが荒川河川敷には、自動販売機の類いなど一つも設置されていない。
思い返してみれば、すれ違うロードバイク乗りの猛者は皆、ボトルケージにドリンクを挿していた。
あれは、荒川の飲料事情を知ってのことだったのか……。
俺「なぁに、ここまで一時間で来れた。
同じペースで戻れば喉が渇く前に家に辿り着けるではないか」
それは慢心としか言えない判断だったが、いちいち河川敷から出る道を探して飲み物を調達するのも面倒だった。
R3の向きを反転させ、元来た道を辿る。
だが、なかなか脚が回らない。
身体が二倍に重くなったように感じ、景色は遅々として過ぎ去っていかない。
今思えば、これが名物『荒川峠』の洗礼だった。
鉛のように重くなった自転車に跨がり、喉の渇き、そしていつしか感じ始めた空腹に、俺の意識は朦朧としていった。
帰れるのか……。
これしきの道と侮ったが故に、このコンクリートジャングルのただ中を突っ切る川縁で、俺は……力尽きるのか……。
完全に意識が萎えきり、土手に自転車とともに倒れ込んだその時だった。
俺が走ってきた川上から、荒ぶる荒川の南風を物ともせずに下ハンで猛然と近付いてくるロード乗りの男が、俺の前に立ち止まる。
男「大丈夫か? 荒川の風は季節を問わずキツい。さぁ、これを飲め」
BCAA入りドリンクボトルを差し出し、男はそう言った。
天の助けと一口のみ、俺は口を開く。
俺「いやぁ、助かりました。
行きは追い風ですごいスピードが出たんですけどね。何キロくらい出ていたんだろう」
その刹那だった。もう一本のドリンクを飲んでいた男の腕が赤銅色に変わったと思いきや手に持ったボトルを溢れる液体すら意に介さずに握りつぶしたかと思うと、
その拳が安さのみに惹かれて購入したヘルメットに突き刺さり、俺はそのまま空中を三回転ほどした後にススキ原の上に長い着陸痕を残して前のめりに突っ伏した。
男「馬鹿野郎!
運動のためにスポーツバイクに乗るというのに、お前はスピードメーターという最低限の装備すら揃えていないのか!
いいか、速度と距離は運動の自己管理に最低限必須な情報なんだよ!
己を客観的に見ることすら出来ない人間が、この荒川峠に立ち向かえると思っているのか!
ESCAPE R3は乗り始めにはとてもいいバイクだ。
フレームもいい、コンポのチョイスもいい。
だが、肝心のお前の乗り方が最低だ。
折角のフレームもコンポも泣いてらぁ」
某新聞社の美食社員のような台詞を残し、男は去って行った。
這々の体でR3の元に辿り着くと、そこには飲み残しのボトルの他に、一口羊羹(練り餡)が置いてあった。
それを口に入れながら、俺は理解した。
今の俺は、ドリンクも補給食も、サイコンも無い足りない物尽くめ。
しかし、一番足りなかったのは、本気で自転車に乗るという覚悟だったのだと……。
※要点をまとめます
世の中に数多あるサイクルコンピュータの中でも異色の製品、それがこのWahoo! RFLKTです。
変な名前ですが、どうやら「リフレクト」の子音を捩った感じで付けたようで、名前からその特色が読み取れます。
見た目は何の変哲も無いサイコン
このサイコンは、自転車に取り付けただけでは何の意味もありません。
iPhoneとペアリングすることで、初めて動作します。
簡単に言えば、iPhoneアプリとしてリリースされているサイコンアプリと連動し、
その中から走行中に必要な情報を受信して表示する、外部接続ディスプレイのようなものです。
これだけ聞くと高価なようですが、iPhoneと連動してと言うのがミソ。
ご存知のように、スマートフォンは高機能ですが、使用中は恐ろしくバッテリーを消費します。
当然、サイコンとしてバイクに取り付け、常時速度や距離を表示していれば液晶表示でさらに消費速度は加速します。
しかし、これを使用していればスマートフォン側はGPS座標や
外部接続のスピード・ケイデンス・心拍数センサー情報の処理のみに専念し、バッテリー消費を抑えられます。
更に、スマートフォンで情報を処理することにより、過去のデータを全て自動的にロギングし、
思いのままに走行データを統計することが出来る。
記録魔の私にとって、これは非常に有難い仕様です。
なお、サイコンとしてのみ使用した場合、iPhone側での情報表示とRFLKTでの表示とを比べると、
体感ですがバッテリー消費は三分の一程度まで抑えられます。
大体、iPhoneでは20分で10%バッテリーが減っていたのが、RFLKTだと1時間で10%程度でじょうか。
また、前述のスピード・ケイデンス・心拍数センサーはそれぞれBluetoothでiPhoneに接続することになりますが、
これらを使用してもあまりバッテリー消費への影響はありませんでした。
また、iPhone側アプリの仕様にもよりますが、私が使用しているCycle Meterでは
RFLKT側に表示する情報をカスタマイズ出来るというのも有難いです。
現在は速度、距離、ケイデンス、心拍数、現在時刻を常時表示にしていますが、
Cycle Meter側で対応している情報であれば(例えばパワーメーター等も)表示可能。
こう設定すると、
こうなります。
iPhone側のバグやアプリ仕様に引きすられるという難点は有るものの、
GARMIN等の高機能な専用品と比べても、機能だけならば遜色ないと考えています。
とまぁ今はかなり満足して使用していますが、実は購入時に初期不良がありました。
その内容というのが、初回にiPhoneとペアリングし、自動ファームアップを行った後で再ペアリングが行えなくなるというもの。
当然代理店から代替品を送って貰えましたが、Youtube等にも同様のバグがアップされていたりと、
それなりに再現性が高い様子。
もし購入を検討される場合は、その辺ご留意の上、迅速な対応が期待出来る販売店経由での購入をお勧めします。
ちなみに、同梱物はハンドルマウント用アダプタ(ねじ止め式と輪ゴムの二種類)と、ガーミンマウント準拠のアダプタ。
ステム延長線上にマウントしたいと思っていた私には、このガーミンマウントアダプタがポイント高めでした。
まぁマウンタはサードパーティの物を別途購入する必要があるのですが。
また、私は購入していませんが、ANT+をBluetoothに変換する機能を有した、その名もRFLKT+なる製品も存在するようです。
過去にANT+式のセンサーを購入した方は、こちらの方が別途Bluetooth式センサーを購入する必要が無いため、コストを抑えめに出来ると思います。
価格評価→★★★★☆(機能を考えれば良い買い物かと)
評 価→★★★★☆(初期不良が無ければ満点)
年 式→2013年