購入価格: ¥2,000 (税込) ※必要な物だけ買えば¥1,000くらいで済みそう
『ホームセンターで部品が揃う簡易式ヘッドワン圧入工具。長ネジが中心からずれやすいのが弱点』
■自作工具でヘッドパーツの圧入に挑戦
いただいたBRAの副賞でChris Kingのヘッドパーツを手に入れた。ヘッドパーツの交換には以前から興味があり、交換作業も自分の手で行いたいと思っていた。ヘッドワン圧入工具は高価だが、ネットで色々調べてみると自作した工具でも圧入は可能で、必要な物はホームセンターで安く揃えられるという。同じような方法で、私も挑戦してみた。
・ CHRIS KING 1-1/8 NTS GRIPLOCK SOTTO VOCE BLACK
■用意した物は全てホームセンターで購入
用意したものは以下のとおり。全て島忠ホームズで手に入れた。
①長ネジ M12(¥480) 、②ステンレス丸ワッシャー M12×50×3.0(¥300)、③六角ナット M12(¥100)
④ワッシャー M12×26(¥100)、⑤ゴムシート(¥120×2) ※使ったゴムシートは1枚
⑥ステン高ナット(¥250*2)、⑦継ぎ手ソケット(¥118×2) ※使ったのはそれぞれ1つずつ
■ワンの外周部を押す簡易圧入工具
ヘッドチューブにワンを乗せて長ネジを通し、外径50mmのワッシャーと六角ナットを取り付ける。六角ナットを締め込んでいくとワッシャーがワン外周部を押し、圧入されていく仕組みだ。これはChris Kingのヘッドパーツにも対応できる。外周部を押すので、ワンに圧入されたベアリングを圧迫して壊す心配はない。
(参考) Chris King Headset Press Adapters - 1-1/8 inchのManInsideさんのレビュー:
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=8295&forum=82この方法は長ネジが中心からずれやすく、ワンに均等に圧力がかかるように、締め込みながら調整しなければならない。だから、あくまで簡易工具ということになる。だが、構造はセンタリング機構の付いていないParkToolのホームメカニックヘッドワン圧入工具(¥12,500)と同じだ。長ネジが中心からずれやすいとはいえ、既成品と同じような構造なら自分でもできそうな気がした。
・自作のヘッドワン圧入工具。ワンが傷つかないよう外径50mmのワッシャーにゴムシートを貼った
■ワンが真っすぐに圧入されるよう慎重に作業する
◯圧入は片側ずつ
専用工具では上下のワンを同時に圧入するようだが、私は片側ずつ圧入した。というのは、上下同時にChris Kingのロゴの位置決めをしつつ、まっすぐ圧入するのは難しいと考えたからだ。
◯圧入するワンの反対のナットを締める
挿入するワン側と反対側の六角ナットを締め付け、ワンを引き込むようにした。圧入するワン側の50mmのワッシャーの上下は六角ナットで固定し、圧入の際にワッシャーが左右に傾かないようにした。
・圧入するワン側のワッシャーは六角ナットでグラグラしないように固定した
◯ステン高ナット+継ぎ手でセンターがずれないように工夫
私は作業が簡単そうに思えた上ワンから圧入した。その際に継ぎ手ソケットにステン高ナットをはめた物をヘッドチューブ内に入れておいた。ヘッドチューブの内径は34mmなのに対し、継ぎ手の内径は33mmで、圧入の際に長ネジが大きく中心から外れないことを期待した。何らかのテープを巻いて、ヘッドチューブと継ぎ手の隙間をなくしても良かったかもしれない。
・継ぎ手にステン高ナットをはめたものを挿入
◯圧入開始直後、斜めになったらハンマーで叩いてまっすぐにする
ヘッドチューブ内側とワンの圧入部にグリスを塗り、ヘッドチューブ下端の六角ナットをラチェットレンチで締めて圧入する。だが、どうしても少し斜めになって圧入されてしまう。だから、ほんの少し圧入されたとことでワッシャーの外周をハンマーで軽く叩き、ワンがヘッドチューブに対してまっすぐになるようにした。
上ワンの圧入ではステン高ナット+継ぎ手で中心からずれにくくしたので、斜めになったワンが圧入中にまっすぐに修正されたかもしれない。だが、まっすぐにならずにワンの片側に負荷をかけて壊したくなかったので、少し圧入された段階で軽く叩いてまっすぐにした。
・上ワン圧入の途中。ハンマーでの修整と継ぎ手のおかげかまっすぐに圧入されている
※脚立で支えているのは写真撮影のため
◯問題なく上ワンの圧入完了
改めて六角ナットを少しずつ締めると、面白いようにスルスルとヘッドチューブに入っていく。ステン高ナットと継ぎ手のおかげもあってか、上ワンは最後までまっすぐに圧入された。上ワンがヘッドチューブ上面に到達し、ワンとヘッドチューブに隙間がなく、ラチェットレンチが止まったところで圧入の完了とした。圧入完了直前は、必要以上に締め付けてワンにダメージを与えないように気をつけた。
・傷つくことなく圧入された上ワン
◯下ワンも意外に簡単に圧入
下ワン圧入の際には、私の用意したステン高ナット+継ぎ手をヘッドチューブに挿入できない。ステン高ナットと継ぎ手がヘッドチューブ内に残ると、フォークが取り付けられなくなってしまうからだ。ワンの内径に合わせてステン高ナットとパイプなどを組み合わせれば、長ネジの中心を確保しつつ上下のワンを挿入できたかもしれないが、ホームセンターでは適当なものが見つからなかった。
だから、長ネジが常に中心にあるように、少しずつ慎重に調整しながら六角ナットを回した。圧入開始直後はやはり下ワンも少し斜めになる。だから、下ワンもハンマーで軽く叩いてまっすぐになるよう調整した。その後は慎重に作業したこともあってか、斜めになることもなくまっすぐ圧入できた。
ステン高ナットと継ぎ手で長ネジが中心からずれないようにするなら、下ワンからやった方が作業しやすかもしれない。ヘッドパーツの上にワンを乗せられない分安定せず、ワンが左右にぶれやすいと思うからだ。
・下ワンも比較的簡単に真っ直ぐにできた
※脚立で支えているのは写真撮影のため
■もしかしたら必要ないもの
この自作工具はセンタリング機構がないのが弱点だ。だが、下ワンの圧入の感じだと、斜めになったワンをワッシャーの上から叩いてまっすぐになるように修正すれば、その後はまっすぐ圧入されやすいような気がしないでもない。長ネジが中心からずれない工夫はあるに越したことはないけど、なくても慎重にやればなんとかなるかもしれない。
外径50mm、厚さ3mmのワッシャーは強度が高く、圧入作業後も変形しなかった。強度不足なら上下2枚ずつにしようと思っていたが、これなら1枚ずつで良さそうだ。また、Chris Kingの圧入工具につけるアダプターにゴム等が貼られていないことを考えると、ゴムシートはなくても大丈夫だったのかもしれない。
・これらがあれば圧入作業はできると思う
■作業は自己責任で慎重に
同じような構造の工具があるとはいえ、作業は自己責任になる。作業は慎重に行ったが、それでも無理だと感じたら作業を止め、ショップに持ち込んで作業を依頼するつもりだった。作業の成功よりもフレームやパーツをダメにしないことの方が大事だからだ。とはいえ、自作工具で多くの人が圧入しているのを見ると自分でもやってみたくなる。念入りに下調べをし慎重に作業を行えば、うまくいくかもしれない。
かなりハードルが高いと思っていたヘッドパーツの圧入だったが、作業は思ったよりも簡単で短時間で終わった。ヘッドパーツの交換は、私が今まで行ったパーツの交換作業の中でも最も面白い作業だった。この楽しさがあるから自転車弄りはやめられない。いつかクロスバイクのヘッドパーツも交換してみたい。
価格評価→★★★★☆ (¥2,000くらいかかったが、¥1,000前後で済むと思う)
評 価→★★★★☆ (センタリング機構がないので工夫が必要。作業は問題なく行えた)