窃盗事件 裁判傍聴
11月6日、台風で延びた公判期日。 13時過ぎ東京地裁に自走で到着。いつものように南門守衛所裏に駐輪、東側入口で所持品検査。 南側エレベーターに行くと阿曽山大噴火氏がおり、同じエレベーターで5階へ。地裁531法廷前で待つ。 社会科見学なのか、女子高校生?の一団が隣の法廷の傍聴に並ぶ。 13時20分傍聴人の入廷が認められ、席を確保するも、60人弱の定員の所30人程度の傍聴人。 その後被告人は2人の制服警官に「腰縄手錠姿」のまま向かって右手の入口から入廷し、 前回の法廷と同じく向かって左の弁護人席の前のベンチスタイルの被告人席で解錠され、警官被告人警官で3人並んで座る。 被告人は白いワイシャツに黒いストライプの入ったスラックス姿。 弁護人1名、検察官は2名。
13時30分定刻、裁判長と2人の陪席裁判官が入廷し「一同、起立、礼」。
検察官は前回の公判で起訴した事件について、125万円の被害額を437,560円とする訴因変更し、 5月13日の犯行の被害額64,501円の別事件を追起訴した。 これについて、被告人は変更された被害額を争わず、追起訴分についても争わないと述べた。
検察官によると、追起訴された事件の概要は以下の通り。 被告人が講師を務めるダンススタジオそばの予備校(新宿区下落合1丁目)で 購入時の価格15万円の自転車を事前に写真撮影し、 5月8日にネットオークションに出品し、5月13日に落札、5月13日午後0時から午後9時50分の間に盗み、 落札者から64,501円の振込を受け、自転車を引き渡した。
なお、本件は「前の刑事裁判での保釈中の犯行」とのこと。
追起訴分の検察官の証拠品の説明の後、被告人尋問へ。
※本当は一問一答風でしたが要約してます。 被告人の声が小さいのでよく聞き取れなかったのと、適切にメモがとれてないので、 そこをお含みおきをお願いします。
弁護人の質問 「出身、家族構成、生活について」 沖縄に母と姉2人と弟。平成8年まで沖縄で22歳で上京、居酒屋のバイトやダンススタジオ講師で生活。 お笑いの道は30歳頃から。収入はダンス講師が主。 その後岩盤浴を経営するも半年で資金ショート、多額の負債を抱え消費者金融から借金。 収入は月30〜40万円であったが、その後減少、おととし11月の交通事故以来仕事が減少、 うつを発症し月2回通院し、収入が月10万円行かなくなって昨年夏より生活苦。 自転車はおととしから乗るようになった。
「追起訴された5月13日の事件について」 1〜2週間前から目をつけていた。無施錠だった。 「保釈中なのに?」いけないと思っていたが、オークションにかけてしまったので盗んだ。 「仕事は?」苦しい状態が続いた。母からの仕送り8万円を一回だけ受けた。 「福祉は受けなかったのか?」知らなかった。 「保釈中なのに?」オークションに出してしまったので… 「売却金は?」生活費やアルコールに 「酒は?」毎日、2〜3年前から。朝から酒を飲むようにもなった
「6月17日事件について」 1〜2週間前からいい自転車があるなと。オークション出品4〜5日前に撮影。 盗んだ後で出品すると保管場所に困る。 「前の事件で執行猶予判決を受けて2週間後の犯行だが?」 犯行時飲酒し気が大きくなってやった。 オークションに出品していたので… 自分の自転車に乗って、右手で盗んで自転車を引いて持ち去った。 近くのドンキホーテで一時保管。 出品は6台で全て落札、4台のみ盗んだ。 売却金は家賃やアルコール代に。 「被害者に対して?」申し訳ない。 「自転車に乗っている訳だが、盗まれた気持ち解りますか?」解ります。
「今日着ているワイシャツは」知人の差し入れです。 「ダンスの生徒は?」知人が見ています。 「執行猶予中だからどうなるかわかってるのか」刑務所に入ることに。 「社会復帰は?」ダンス講師をしたい。 「家族から上申書が出ているが」胸がいっぱいに。 「前回からの反省は?」前回よりたくさんの人に迷惑をかけた。 マスコミもお騒がせしたし、被害者、生徒、同僚に迷惑をかけた。 「社会復帰が美味くいかなかったら?」公的機関の援助を仰ぎたい 「犯罪を生活の手段として使いませんね?」誓います。
検察官の質問 「保釈中だったり執行猶予中の事件だった訳だが」オークションで落札されたので… 「なぜ出したのか」… 「前回の事件は思い出さないのか?」やってはいけないとは思っていたが、盗むとちょっとホッとした。 「保釈制度はどういう意味あると思っているの?」証拠隠滅しない人に認められている… 「保釈中に盗んでいて、どういう気持ちで裁判受けてたの?」再犯したくなかった 「その3週間後に再犯したというのは?」再犯したくなかったです。 「なぜ?」わかってながらやってしまいました。 「前回は盗んでから出品、今回は出品してから盗んだわけだが」売ってみたらどうなるかと? 「保管場所が無いというのは、物理的なのか犯罪発覚をおそれたということなのか」そうです 「被害弁償手段に誰かに援助受けないのか?」自分で働いた方が…「現に被害受けている人がいるというのに」 「援助は」頼んでいない 「今後しないための方策は」経済的にしっかりする、、公的援助を受けたりする 「どうやってコントロールするの?」病気を治し、経済的にしっかりする 「盗んだのは病気のせいなの?」病気ではない 「他に盗んだりしてない?」ないです 「本当に無い?」ないです
左陪席の男性裁判官 「うつ病、アルコール依存なのに出品落札後盗み出すのは?」アルコールで気分を大きくして盗む 「シートが半分かかっているのに高価な自転車とわかったのは?」見えているパーツの部分で価値がわかった。 「普通見ないけど」目に留まった。 「物色では?」物色ではない 「譲渡証明書は」偽造した
右陪席の女性裁判官 「盗まないように何を」自転車を見ないように 「でも見てるわけですね」… 「保釈中の生活はどうだったのか」継続していた仕事もあった 「弁護士がついていたのに」相談しなかった。債務整理はしていた。
裁判長 「「ほっとした」というのは」盗んだ後です。 「時価を争ったのは、誰の考え?」弁護人と相談して。売れた金額が時価だと思うので。 「自転車は盗まれたことは」ある。 「「ほっとした」のは葛藤しなくて済むから?」そうです 「盗んではいけないと葛藤しながら生きているんですか?ずっと前から、生まれたときからですか?」… 「ネットオークションで出品内容について質問するなというのはキツい言い方と思うのだが」出品物についてよくわかっていないので。 「保釈金は誰が」知人に 「家族には」弁護人から連絡しているかと 「家族への思いは犯行を引き止める方向に働かなかったのか」目先の損得で。無施錠でずっと置いてあったのでつい。 「もうやらない自信は」経済的に立ち直りたい
「うつ病とか酒のせいとか言ってるけど、自分のここが悪かったとか、そういう話を聞きたかったんだけど。 あなたと同じように生活が苦しい人がみんな盗みをするの」…
弁護人の証拠説明 被告人の反省文 母、姉3人弟1人の上申書 芸能事務所の解除通知
検察官の証拠説明 警察の調書 当初は否認していたものの、犯行を認める
検察官の論告 事実には争い無し 情状面について3つの問題点を指摘 「常習的」前科があるのに犯行を行っていること 写真撮影だけでは犯行をしているとは思われないし、 落札後に盗むことで保管リスクを回避するなど巧妙かつ悪質であり、 素人には考えつかない犯行である 「重大な被害額」被害額が合計で50万円以上であり、追起訴分の被害者は落札代金を落札者に返還することで盗品を取り戻しているが、 先に起訴した分は未だ盗品が返還されていない 「再犯の虞れ」前の裁判での反省がなされるべきところ、より巧妙化してエスカレートしている。 保釈中、判決後3カ月内の犯行である。
求刑 先に起訴したものについて2年6月の実刑、後で起訴したものについて6月の実刑
弁護人の最終弁論 本人も反省しており、罪の意識を自覚している。 盗品も返還されている物もあるし、返還されていない物についても所在がわかっている。 家族や友人の援助で社会復帰を果たしたい。 芸能事務所から解雇されるなど社会的制裁も受けており寛大な判決を求める。
被告人の最終陳述 沢山の方々にご迷惑をかけた。自転車の持ち主、オークションでの落札者、芸能事務所、マスコミ各社などなど。 芸人であるから芸を盗んでおけば良かった。 一刻も早く謝罪し被害者に弁償したい。
裁判長は結審する旨を告げ、判決言い渡しを11月26日13時15分と指定。 一同礼。15時閉廷。 裁判官が退廷し、制服警官が被告人に手錠を掛け、腰縄に繋いだ上、退廷。
評 価→☆☆☆☆☆ 先に起訴されたものが執行猶予判決後の犯行だっただけでなく、 追起訴された余罪が「保釈中」の犯行だったとは。 ダンス講師としてそれなりの収入があったのに、サイドビジネスの失敗から歯車が狂い始め… 自転車が返還されていないのはマズいなぁ。どうなるんだろう。 「芸を盗んでおけば…」というのは、笑う所だったのでしょうか。
※判決公判は仕事で行けません。
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