購入価格: ¥861 (税込) ※1セットの値段
標準価格: ¥861 (税込)
『リムへの攻撃性の低さが特長で静粛性も高い。制動力はやや低下するが、用途によっては全く問題ないレベル』
■ リム攻撃とガサガサ音が気になってシューを交換
私はGIANT FIXER Rというシングルスピードに、105のキャリパーブレーキBR-5800を取り付けている。抜群の制動力とコントロール性で、ブレーキ操作を大いに楽しむことができた。ところが、ある日突然前輪からガサガサする音が聞こえだした。ブレーキシューをチェックしてみるとリムの破片が刺さっていた。しかも、音がした方のリムのブレーキ面は摩耗が進んでいた。破片を取り除き、ブレーキシューとリムの両方を研磨したが、翌日もガサーッという音が…
比較的柔らかいVブレーキシューS70Cでもごく稀に同じようなことが起きることもあり、KINLIN XR-300は摩耗しやすいというレビューもあるので、BR-5800のブレーキシューR55C4のリムへの攻撃性が強いとは言えない。ただ、走行中に音鳴りは不快だし、リム攻撃は精神的に良くない。そこで私はアルミ用のカートリッジタイプのブレーキシューで最もリムへの攻撃性が低いR55C+1を使うことにした。
SHIMANO R55C+1
■ リムへの攻撃性が低い「SOFT TENDRE」
R55C+1はアルミリム用のカートリッジタイプのブレーキシューで、現行モデルから数世代前のシマノのキャリパーブレーキやカンチブレーキに対応する。最大の特長はリム攻撃の低さだ。パッケージには「SOFT TENDRE」というアイコンが描かれているが、これはソフトコンパウンドが使われていることを示す。確かに触ってみるとR55C4やR55C3よりずっと柔らかいことが分かる。Vブレーキ用のS70Cと比べても柔らかい感触だ。
シマノのカタログによれば、制動力や耐久性はR55C4に劣る。特にウエット時の制動力と耐久性は、アルミ用カートリッジブレーキシューの中では最低。ただ、耐久性の低さを考慮してか、ブレーキシューは1mm厚めになっており、これが商品名の「+1」の由来になっている。
ソフトコンパウンドが採用され、リムへの攻撃性が低いのが特長
■ 大きくてシューホルダーにはまらない!
まず、BR-5800からR55C4を引き抜くのは簡単だ。固定ボルトをプラスドライバーで外し、手でブレーキシューを引き抜くだけだ。ところだ、BR-5800のブレーキシューにR55C+1を挿入しようとしても、硬くて途中までしかはまらない。手が痛くなるほど強い力で押し込んでも全然ダメ。本当にBR-5800に対応しているのかカタログで確認したくらいだ。当然、左右間違えていないかもしっかりチェックした。
石鹸水をつけてから押し込んでも途中までしかはまらなかったので、止むを得ずブレーキシューを耐水ペーパーで削ってから挿入することにした。私はシューホルダーにスムーズに挿入できるようになるまで削ったが、これでもR55C4の方まだ簡単に挿入できる。写真は残っていないが、R55C+1の取り付け部はR55C4よりもやや大きめ。少々削ったくらいでは全く問題ない。
シューを削って取り付けても全く問題ない。固定ボルトは六角穴付きボルトが付属
■ 非常に高い静粛性
R55C+1を取り付けたBR-5800は快適そのもの。ブレーキシューとリムを擦る音がほとんど聞こえず、自転車の走行だけに集中することができる。シマノのカタログでは静粛性★★★★☆となっているが、個人的には★★★★★といった感じ。VブレーキシューS70Cと同等かそれ以上の静粛性だと感じた。
■ ソフトコンパウンドが効いたリム攻撃の低さ
約4ヶ月使用したが、KINLIN XR-300との相性は良好で、リムの破片の噛み込みや極端なリムの摩耗は見られない。柔らかめのブレーキシューの効果は相当に高いと感じた。ちなみに、リムへの攻撃性が高いと感じたブレーキシューは、Vブレーキ用のM70CT4だ。使用開始直後からロード用のリムDT SWISS RR585をガサーッという大きな音と共にガンガン削り、ブレーキシューにはリムの銀色の粉が多く付着した。もし、キャリパーブレーキでこのようなことを感じたら、R55C+1を使ってみるのもいいかもしれない。
ゴムのような柔らかさがリムに優しい (左)
BR-T780付属のM70CT4ではこんな感じになる。参考まで (右)
■ 制動力とコントロール性は低下
だが、高い静粛性とリム攻撃の低さの反面、制動力はR55C4に劣る。R55C4はブレーキシューをリムに軽く当てればすぐに減速したが、R55C+1で同じようにブレーキをかけると、制動距離が長くて最初はびっくりする。体感的には10%以上の制動力の低下。ただ、ある程度しっかり握れば、R55C4と同様に止まれる。しっかり握っても止まれないTektroのキャリパーブレーキとはこれでも大きく違う。
R55C4はブレーキシューが硬く、リムにカツンと当たるようなフィーリングだった。一方、R55C+1はクニュッとしたブレーキシューの変形が伝わるフィーリング。ブレーキシューが柔らかく変形する分、繊細なスピードコントロールがR55C4に劣ると感じた。制動力が低くなればコントロールしやすくなるという話を聞いたことがあるが、少なくともR55C+1ではそのようなことは感じられない。
ただ、制動力やコントロール性の低さはR55C4と比較した場合であって、R55C+1を取り付けたBR-5800単体で評価すれば、キャリパーの高い剛性と相まって、十分に高い制動力だと言える。だから、私は今でもR55C+1を使い続けている。
BR-5800の制動力の高さはR55C4にも大きく依存する。キャリパーの剛性が高いので、R55C+1でも制動力は十分
■ 意外にカスが出にくい
約4ヶ月の使用では耐久性に関して十分に評価することはできないが、意外にもブレーキシューのカスが出ないのが印象的だ。もっと激しく汚れることを覚悟していたのだが、R55C4やR55C3と比べても自転車が汚れにくいように感じた。特にR55C3とは大きな差があるように思える。R55C3は固めのブレーキシューだが、脆くてポロポロと砕け散り、フロントフォークやキャリパーの裏がすぐに汚くなった。一方、R55C+1は柔らかいがあまり脆くはなく、自転車がそれほど汚れないので助かる。思ったほどガンガン削れず、しかも1mm厚い使用なので、これなら長持ちししそうだ。
パッケージに付いていた粉なが不安を感じさせたが、よごれにくくてひと安心だ (左)
約65km走行後。意外にきれいな状態が続く (右)
■ 雨天時の制動力・耐久性は期待できそうにない
激しい雨の中では使ったことがなく、雨天走行はほぼ未検証。スペック上雨天の制動力・耐久性はR55C3を下回り、実際にR55C3が雨天で極端に制動力が低下し、ブレーキシューが黒い汁になって溶けることを考えると、R55C+1も雨天時の性能には期待できそうにない。私は晴天時にしか自転車に乗らないので、この点はあまり気にしていない。
■ 個人的には大当たりのブレーキシュー
シューホルダーに硬くてはめにくいという点を除けば、R55C+1は素晴らしいブレーキシューだ。レースにはより高い制動力とコントロール性が必要かもしれないが、私のような街乗りには十分すぎるほど。高い静粛性は走行中のストレスにならないし、リムへの攻撃性が低いのが嬉しい。これなら走りを楽しみつつ、オーダーしたトラックホイールを長持ちさせることができそうだ。車種や用途によっては、R55C+1は良い選択になるはず。街乗りがメインで晴天時にしか自転車に乗らない私には大当たりのブレーキシューだった。
価格評価→★★★★★ (リーズナブルな価格)
評 価→★★★★★ (はめにくくてもこの評価。静かで快適な走行。十分な制動力)
<オプション>
年 式→ ー
カタログ重量→ ー