購入価格 ¥350(アプリのみの価格、iPhoneは含まず)
iPhoneのGPS機能を利用して、移動した行程を追跡・記録するアプリケーションである。ウォーキング・ランニング・サイクリングなど(「乗馬」とか「飛行」なんて設定も用意されている)のアクティビティにおいて距離・速度・消費カロリーなどがリアルタイムで計算され、記録後は地図上に経路を表示したり、速度や標高の推移をグラフ表示したりできる。複数の記録を保持できる上、データをMac/PCに取り込んで活用することも可能。計測・記録にはデータ通信を使わないので、3G携帯が使えないような山奥でも使用できる。
アプリケーションとしての一般的なレビューはネット上に多数あるのでそちらを参照していただくとして、ガジェット好きサイクリストの立場から見た感想を。
■距離・速度の計測
計測はGPS信号によるものであるためそれなりの誤差があり、停車しているのに速度がゼロにならなかったり100km/hというようなとんでもない数値を瞬間的に示したりすることも多い。また、速度は一瞬あるいは数秒前の数値となるため、サイコンの代用とするには精度が足りない。足元の地面に対する車輪の転がりを直接計測すれば済むものを、わざわざ大回りして衛星経由で計ろうというのだから誤差が大きくなるのは止むを得ないのだが。
■行程の追跡記録(トラッキング)
誤差の問題に加え、場所によってGPS信号強度が不足したりアプリがエラー終了してしまったりして計測が途切れることもあり、安定性に欠ける。特にロングライドの後でトラッキングが途切れているのに気づいた時のガッカリ感は大きい。しかし、トラッキング結果をMac/PCに取り込んで分析できたり、少し手間はかかるもののGoogleEarth上に表示できたりするなど、ハイエンドのGPS専用機でしかできない機能を提供しているのは高く評価できる。
サイクリストとして速度と並んで有用であろう標高のログについては、ほとんど平坦なところを走ったのに標高差が何十mも記録されたりして、これまで試用した範囲では残念ながら速度や距離よりもさらに精度が低くて実用に耐えないと言わざるを得ない。ただし、まだ試行していないものの、標高差の大きいルートでは誤差も比率としては小さくなって意外と使えるかもしれない(ヒルクライムはつらいので、こっそり車で試してみるつもり)。
■バッテリー消費問題
元々バッテリー消耗が問題となることが多いiPhoneにあって、電力喰いのGPS機能を使い続けることになるため、長時間の使用には不向きである。しかし、その気になれば外付けバッテリーをつないで使用することはできる。
マウントを用意してiPhoneをハンドルバー上に固定すればサイコン風の使い方が可能になるが(マウントについては改めてレビューしたい)、走りながらリアルタイムで情報を見る必要がなく記録だけを目的するのであれば、iPhoneをスリープにした状態でバッグ等に入れても計測・記録は継続するため、バッテリー消耗を抑えることができる。
■総括
いろいろ問題点や不満を挙げてきたが、そのほとんどはiPhoneのハード仕様の限界によるものであり、アプリそのものとしては利用者の意見を取り入れて日々進化していることもあって非常によくできていると言える。精度の問題から本格的なトレーニングには不向きだが、趣味で乗るサイクリストならば「なんちゃってサイコン+GPSロガー」として十分楽しめると思う。体重を元に消費カロリー計算もしてくれるので、ハンガーノック予防にも使えるかもしれない(筆者はそこまでハードな走りはできないが)。
先日ちょうどiPhone OS 3.0が開発者向けに公開されソフト・ハード開発規約が緩和されることになったので、速度やケイデンス・心拍数などの外部センサーをBluetoothで使えるようになって、精度を向上したり機能を拡張したりできるようになればいいのになあ、などと妄想がふくらむ。
ここではiTrailについてレビューしてきたが、iPhoneはサイクリストにもっと評価されていいツールだと思う。標準でGPS地図が搭載されているので、iTrailをインストールして外付けバッテリーを持って走れば、GPS地図+簡易サイコン+GPSロガー+カロリー計算機+電話の五徳マルチツールだ。もちろん、これ以外のアプリにも役立つものは多く、ピンポイントで1時間ごとの天気予報を見られるアプリや本格的なナビアプリなど、さまざまなツールを自分なりに組み立てていけばサイクリストの強力な助けになるだろう。
■訂正
上記レビューで「Phoneをスリープにした状態でバッグ等に入れても計測・記録は継続する」と書いたがこれは誤り。スリープにしている間は時間の計測のみ続いていて、GPSによるポイントおよび速度の記録は中断される。スリープから復帰すると再開されるが、地図上はスリープしている間は直線で結んだように描画される。全行程の距離もその分ショートカットされた記録となる。
iTrailには画面ロック機能があり、さらに画面輝度の調節も行う事ができるので、これを使うことによりバッテリー消耗を幾分は抑えることができる。
以上、お詫びして訂正する。
価格評価→★★★★★(どんなサイコンでもこの10倍はする)
評 価→★★★★☆(精度がもっとよければ。。。)
バージョン→1.7.1
カタログ重量→iPhone本体135g(アプリをどれだけ入れても重量は増えない)