購入価格: ¥822 (税込) ※エーゼット楽天市場店で購入
標準価格: ¥822 (税込)
『注油直後はまさにAZチェーンルブ最高峰の性能。ただし、短・中距離レース用なので持続性はやや低め。短所は臭いがきついこと』
■ AZチェーンルブ最高峰 "チェーンルブ BANK Blc-007"
AZのケミカルは低価格・高品質で、割とマメにメンテナンスする私にはとてもありがたい。現在、AZは自転車用のケミカルも出しているが、チェーンオイルにはなかなか手を出せずにいた。当時使っていたチェーンオイルに概ね満足していたからだ。信頼して使っているものを変えるのはちょっと勇気が必要だったが、AZのチェーンオイルにしたのは大正解。超極圧・水置換スプレーもロードレースSPも想像をはるかに超える高性能なものだった。こうなると気になるのが、AZチェーンルブ最高峰を謳うBANK Blc-007の存在。更なる高性能を期待して購入してみた。
AZ チェーンルブ BANK Blc-007 15ml (左)
比較対象のAZ チェーンルブ ロードレースSP Blc-004、CKM-001 超極圧・水置換スプレー(右)
■ 50%以上の特殊添加剤・極圧剤。ベースオイルはエステルではない
AZ チェーンルブ BANK Blc-007(以下BANK)は、商品名からも分かるように、主に競輪選手用をターゲットにしたチェーンオイルだ。容器には「競輪/タイムトライアル/決戦」と書かれており、AZチェーンルブ一覧表には短・中距離レースとも書かれている。最大の特徴は特殊添加剤を極圧剤を50%以上も含有していることで、競技者の強い踏み込みに対応しているようだ。また、雨天のレースにも対応するように耐水性を持たせている。
メーカーに問い合わせたところ、超極圧・水置換スプレーもロードレースSPとは異なり、ベースオイルはエステルではないとのことだった。BANKを使用するにあたって、ベースオイルの差が性能にどう影響するかは気になるところだった。
特殊添加剤と極圧剤を50%以上配合
■ 15mlは精密に注油できる極細ノズル付き容器入り
BANKは5ml、15ml、50mlの3種類がラインナップされている。5mlはお試し用、50mlはロードレースSPなどのチェーンオイルと同じ容器だが、15mlのみ極細ノズル付き容器に入っている。私がBANKを購入した理由は好奇心だけでなく、極細ノズル付き容器を手に入れるためでもあった。
極細ノズル付き容器なら、チェーンの可動部に繊細な注油が可能だ。オイルの量を微調整しやすく、チェーンの可動部に必要な一滴を直感的に押し出せる。チェーンの可動部に一滴ずつ注油するのは大変そうなイメージがあったが、作業にかかる時間は少ないしストレスもたまらない。現在、この容器は"狭所用オイラー 15ml 極細針ノズル付"という商品名で単品で販売されているので、容器のためにBANKを買う必要はない。
オイル自体の粘度はそれほど高くない。わずかにトロリとしているようにも感じるが、どちらかといえばサラサラしていて、チェーンの可動部に素早く浸透する。超極圧・水置換スプレーのようにシャバシャバしてはおらず、ロードレースSPよりはサラッとした感じだ。オイル自体も注油しやすいものだと思う。
(参考) [その他] AZ 狭所用オイラー 15ml 極細針ノズル付:
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=12763&forum=82 15mlは精密な注油を可能にする極細ノズル付き容器付き(左)
一滴ずつチェーンの可動部に注油可能。オイルの粘度はそれほど高くなく、可動部に素早く浸透する(右)
■ 動きの軽さ、潤滑性、静粛性のどれもレベルが高い
注油後、走り出すとすぐにBANKの良さは分かる。チェーンの動きがとても軽いのに、粘度の効いた滑らかさも持ち合わせ、しかも音鳴りがほとんどしないのだ。チェーンの動きを軽くすると潤滑していないような感じになり音鳴りがしやすくなりそうなイメージだが、このオイルは滑らかさや音鳴りが生じないギリギリの点を見極めて、粘度を高めているように感じた。ちょうど、超極圧・水置換スプレーの軽さのまま、ロードレースSPの高級感のある踏み心地を残しておいたような感じだ。また、ある程度の粘度はオイルの飛び散りにくさにも貢献しているようだ。
また、極圧剤と特殊添加剤が効いているのか、加速時や登坂で急に踏み込んでも、ギアとチェーンが軋むような感じや音鳴りはほとんど感じられない。ただ、極圧剤がBANKより少ないであろう超極圧・水置換スプレーやロードレースSPでもこれは同様だった。
シングルスピードのGIANT FIXER Rのフリーギアと固定ギアの両方で使用
■ 多段変速でも問題なく使える
シングルスピード(フリーギア・固定ギア)だけでなく、クロスバイク(3×10段変速)でもBANKを試した。動きの軽さ、潤滑性、静粛性はシングルスピードとほぼ同様で、チェーンが斜めになった状態でも特に問題はなく、多段変速のスポーツバイクでもBANKの高性能を満喫することができる。ただ、チェーンに注油しただけでは、変速動作への影響は大きくない模様。ギアにチェーンが滑らかに乗り上げるようになったとか、変速ショックが小さくなったといったことはあまり感じなかった。
クロスバイク GIANT SEEK R3にも使用
■ 急な雨にも対応する耐水性
基本的に私は雨天時に自転車に乗らないが、BANKを試している時に一度だけ雨天したことがある。往復20kmの折り返し地点で雨が降ってきたのだが、思ったほどチェーンがシャリシャリと音がすることもなく、ほぼ普通に走行することができた。帰宅後にチェーンを触ってみると、若干オイルが流れたものの、表面にはちゃんと油分が残っていた。これはオイルの粘度のおかげだろう。長距離・長時間を雨天走行するなら他のオイルのほうが良さそうだが、短距離・短時間の走行や急な雨には十分対応できると思う。
雨天にも対応。少なくとも短距離・短時間の走行なら大丈夫
■ 余分なオイルを拭き取れば、チェーンが汚れにくくなる
BANKは汚れにくいオイルで、チェーンをきれいに保ちたい人に向いていると思う。超極圧・水置換スプレーのように黒い汚れが滲み出てくることも少ないし、ロードレースSPのように砂埃が付着したりすることも少ない。ただ、極細ノズル付き容器がチェーンの可動部に少量を注油しやすいとはいえ、余分なオイルはしっかり拭き取らなければ汚れてしまう。以前、このオイルを多量に塗布してから、風の強い日に川の土手を走ったら、チェーンに砂埃が少し付着してしまった。BANKは少量でもしっかり潤滑するので、多めに塗布するメリットはあまりないようだ。
40km走行後。少量注油した上で余分なオイルをしっかり拭き取れば、その後もそれほど汚れない
■ 短所は走行後に臭いが強くなること
BANKの最も気になる点は臭いのきつさで、古いミシンのモーターから出る金属が焼き付いたような臭いによく似ている。注油直後ならあまり臭わないが、注油してから走ると臭いがきつくなり、自転車を部屋に入れると臭いが室内に充満する。KURE Made For Speed チェーンルブ セミウェットとほぼ同じ臭いで、走行後に臭いが強くなるのも共通している。
BANKの極圧剤や特殊添加剤の成分は不明だが、KUREのオイルには有機モリブデン、ボロン、液化チタンが配合されている。BANKにもこれらのうちのどれかが配合されている可能性があり、走行中に極圧剤が反応するとこういう臭いになるのかもしれない。この臭いは部屋にいると分かりにくいが、部屋に入ってきたときには気になる。
KURE Made For Speed チェーンルブ セミウェットと同じ臭いがする
BANKにも同じ添加剤が使われているのかもしれない
■ やはり短・中距離レース用。長期潤滑にはやや不向きか
超極圧・水置換スプレーやロードレースSPは250~300kmくらい潤滑性が持続するが、BANKは150~200kmくらいになると、チェーンに音鳴りが生じ、坂をダンシングで登る際にはギアの軋むような音がするようになる。特に厚歯のギアと厚歯のチェーンの組み合わせでは、音鳴りや軋みが早い段階で現れやすいような気がするが、これはギアとチェーンの接触面積が関係しているかもしれない。
AZはこのオイルを短・中距離レース用として販売しているので、元々耐久性にはあまり期待していなかったが、実際に使ってみてもやはり長距離・長時間の走行には向いていないような気がした。潤滑性能だけなら問題ないのかもしれないが、音鳴りや軋みが生じるのは気持ちがいいものではない。ここでは耐久性というか、注油直後の音鳴りを含めた性能の持続性といった方がいいのかもしれない。
このオイルの性能を維持するコツは、まめに注油することだ。マイクロファイバークロスやキッチンペーパーでチェーンの汚れを拭き取り、オイルを継ぎ足すことで快適な走行が続けられる。ただし、注油して走る度に部屋に臭いが充満することを覚えておく必要がある。また、ロングライドにはおそらく不向きのはず。100km程度ならともかく、それ以上の長距離には、長距離レース用と銘打ったロードレースSPの方が向いているはずだ。
ロードレースSPは長距離レースにも対応
■ 高性能を気軽に試せるオイルとしては悪くない
AZ チェーンルブ BANK Blc-007は、チェーンの動きの軽さ、潤滑性、静粛性、防汚性、耐水性のどれもが高いレベルのチェーンオイルだ。ただし、これらが持続するのは短・中距離に限られる。普段使いには割と頻繁に注油する必要があるし、おそらくロングライドには向かないはずだ。BANKの弱点は走行後に臭いが強くなることで、レースやイベントに使うならともかく、普段使いにはこの点が気になってしまう。つまり、BANKは決戦用としては、AZチェーンルブ最高峰なのだと思う。
BANKの走行のフィーリングのまま普段使いにも対応できる高性能かつ多機能なオイルにするには、性能の持続性や低臭性が必要になるはずだ。水置換性があれば尚良い。AZのラインナップでは、超極圧・水置換スプレーがこのような感じに近いが、もう少し粘度が高ければもっと滑らかな動きになりそうだ。ロードレースSPは抜群の潤滑性と静粛性だが動きが重たい。超極圧・水置換スプレーでも十分満足だが、BANKの注油直後の状態が長持ちするようなオイルをAZから出して欲しいところだ。
シングルスピードやクロスバイクのような街乗りメインの自転車に使うなら、持続性、低臭性、水置換性もある超極圧・水置換スプレーの方が使いやすい。動きは重ためだがロードレースSPも良いオイルだ。私の中でBANKは高性能を気軽に楽しみたいときに使うオイルになっている。気分転換に使うオイルとしては決して悪くはない。
価格評価→★★★★★(15mlしか入っていないが、一回に使う量は少ない)
評 価→★★★★☆(臭いの強さで減点。走行中のフィーリングは理想的)
<オプション>
年 式→ -
カタログ重量→ -