購入価格 ¥250000
馬鹿野郎!
「この自転車は週末用」とか「通勤用にはもったいない」とか、お前らはそれで自転車を大切にしているつもりなんだろうな!!
自転車愛ってのはなぁ!「雨に濡らすなんてかわいそう」とか「毎日フキフキする」とかそういうもんじゃないんだよ!!
とはいえ、雨が予想されるときや通勤時などに濡れたり汚れたりすることを嫌って一番好きな自転車に乗るのを躊躇したり、小さな傷に一喜一憂したりする気持ちはわからないわけじゃないんだ。
どうやらこの流れは、その体験談を話さなければならないようだな・・・
あれはある春の朝のことだ。
週末用に LOOK 586 UD を購入したので、今までの週末用であった RNC7 は通勤用にすることにしたのだった。
正直、この美しいRNC7を通勤用にするには葛藤もあった。
通勤用にする以上、不意の雨に降られることは避けられないし、比較的安全とはいえ職場の駐輪場に長時間止めっぱなしという状況になる。
一応、屋根はあるとはいえ、紫外線やホコリによる劣化、汚れも馬鹿にはならないだろう。
しかし俺が愛してやまないRNC7の乗り味―――それは軽量カーボンとも高剛性アルミとも違った―――が、RNC7を乗られることのない床の間自転車にすることを拒んだ。
俺「ガハハハハハ!自転車は乗ってナンボ!!体はひとつ、命には限りがあるんだから、乗れるときに好きな自転車に乗るぜ!!」
デヤァァァーーー!
人々の目もまだ覚めやらぬ春の朝の街並みに俺の気合がこだまする。
その日も俺は三瀬豆腐屋TT遠回り通勤を経て職場に到着し、愛車のRNC7を駐輪場の柱に立て掛けると額の汗をぬぐった。
ズズズ・・・
不吉な音がして振り返ると、RNC7がトップチューブを柱にこすりつけながら地面に崩れ落ちる瞬間だった。
ガシャーーーン!
俺「ア・・・ア・・・ア・・・」
俺はこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、しばらくはただ、莫迦のように大きな口を開あいたまま、眼ばかり動かしていた。
トップチューブには見るも無残な傷が―――
愛車を自らの手で傷物にしてしまった俺は自責の念のあまり意識朦朧となった。
そして遠のいてゆく意識の片隅に、いつの日か恋愛相談にのってくれたおじいちゃんの幻影が浮かんでいた。
俺「じぃじー、『わたしと自転車どっちが大事?』って怒り気味に聞かれたんだけど、
どう答えたらいいの?」
おじいちゃん「つよし、『この人となら幸せになれる』は欲、『この人となら不幸になっても一緒にいられる』は愛、じゃよ」
俺は悟った。
美しいものへの愛というのは、美しくなくなってしまったら愛せないのと表裏一体なのであり、それは決して真実の愛ではない。
確かに俺はRNC7の外見の美しさを愛していたが、それだけではない。
日常で使い倒すうちには、これからも傷は増えるだろう。
それでも大切に乗り続けていくことが、本当の自転車愛なのだと。
----------------------------要点をまとめます----------------------------
【剛性について ~LOOK 586 UDとの乗り比べを経ての雑感~ 】
剛性はやはり低いです。
それはアンカーのパンフレットにも載っていて、わかっていたこと。
改めて「こんなにやわらかかったっけ?」
と思うシチュエーションは、平地で下ハンダンシングで全力で加速するような場面。
それと下り。
しなりを感じるというのもそうなんですが、何と言うか自転車全体がよく動く印象です。
下ハンダンシング加速で40km/hを超えるあたりから特にそれは顕著で、
不安定さ、不安感を感じるほどです。
いつの間にか、LOOK 586 UD のガッシリした安定感に慣れてしまっていたから、より顕著に感じるのだと思います。
あと、この不安定感はハンドルも影響しているでしょう。
RNC7完成車についてくる26mm径のハンドルはオーバーサイズを見慣れた目には頼りなく見えます。
参考資料:左の写真がRNC7、右の写真がLOOK 586 UDのハンドルまわり
剛性が低い。
しかし私にとってそれをデメリットとして感じるのは非常に限られた場面ですし、
そもそも時速40km/hなんて単独で維持できるのはほんの数十秒です。
マイペースでのぼるのであればヒルクライムでもそう大きなハンデではありません。
初心者である。
体重が軽い。
急加速、急制動をあまりしない。
下りやコーナーを攻めない。
マイペースの上りが好き。
身体に痛いところがある。
時間を競わない。
今乗っている自転車で、やわい、力が逃げる、という感覚がない。わからない。
これらの要素が多く当てはまる人ほど、剛性の低さがデメリットになりにくいだけでなく、メリットを長い時間享受できると思います。
冬場の私が、まさにこれです。
積雪のため、あまり山に行くことができない。
そのため、平地でのLSD(もしくはそのちょっと上の強度)が走行時間のほとんどを占める。
その練習タイムがちょっと縮もうが、どうでもよい。
また、寒さにこわばった体には、ちょっと剛性が低いくらいの方がありがたいし、けがも減るでしょう。
ゆえに、12月半ばに練習コースの山が積雪したのをもって、私は LOOK 586 UD を封印し、RNC7に乗ることにしました。
デメリットよりもメリットの方が大きいからです。
【重量について ~ 軽い自転車ほど乗り手を選ぶ ~ 】
ある激坂での出来事ですが、初めて上る坂でLOOK 586 UD で足をついてしまいました。
脚力はまだ余裕があったのですが、前輪が持ち上がりそうになり落車の危険を感じて足をついた、という状況でした。
思うところがあり、それを試してみたくて、後日 RNC7 で再チャレンジ。
さらに後日R500を履きフラットペダル化した GIOS AIRONE でも挑戦し、重い自転車のほうが安定して脚力を推進力につなげやすいことを確認しました。
とくに鉄フォークを入れた GIOS AIRONE の安定感は白眉で、ケイデンスは落ちてもじっくりとペダルに力を入れ続けることができる安定感が心強いことこの上なしでした。
しかし、お気に入りの軽量カーボンバイクである LOOK 586 UD が激坂で遅れを取ることにまだ納得がいかなかった私は、何度かの試行錯誤の末、なんとか LOOK 586 UD での登頂にも成功、その速度は重い自転車たちよりも「速かった」。
つまり、速度という面から登坂性能を見れば LOOK 586 UD に軍配が上がったわけで、要は私のテクニックの不足です。
もう少し具体的に言うと、軽い自転車ほど、前輪に加重するのが難しかった。
重量が軽いほど、重心を前に移動しなければならず、すると後輪の加重が抜け、ペダリングトルクに抜けが生じやすくなる。
重心移動のテクニックと、きれいにペダルを回す技術を高いレベルで要求されているのを感じました。
それは軽量な自転車が激坂以外でも私の気付かないところで気付かないうちに何らかのテクニックを要している可能性と、
またはその「何らかのテクニック」が私に不足しているがために、知らないうちにいくばくかの非効率を被っている可能性を示唆しています。
LOOK 586 UD にすっかり慣れた今でも、私は平地、強風下の走りではRNC7のほうが走りやすく感じるのですが、その理由はこのあたりにあるのではないかと思っています。
【総評】
どうやら重量・低剛性の自転車は「やわい」「重い」「レースで使えない」と言って切り捨てられない魅力をいまだ持っているな・・・と、自転車の奥深さに思いをはせる今日この頃です。
「Q1.RNC7ってレースで使える?」
高速コーナー、アタック、スプリントのあるレースには向いていません。
ヒルクライムレースなら可。でもそれは「アラが目立たない」という話であって、レース機材として積極的に選ぶものじゃないです。
「Q2.RNC7のいいところって何?」
外見。
これは冗談でも皮肉でもなく、自転車乗りにとって自分の愛車に惚れこむ事ができるのは重要な性能です。
「気に入っていれば走行距離が伸びる」と考えれば、長い目で見ると最重要性能かも。
逆に言えば、外見が気に入らないなら別の選択肢はたくさんあると思います。
走行性能で言えば、レース機材として不利な要素を持つ鉄を素材に使いながら、
走行性能をあまり犠牲にしていないこと。
犠牲にしている部分が、私にとってはあまり体感できない部分であること。
その犠牲と引き換えに、乗り心地がよく疲れにくいこと。
「Q3.もし時間を巻き戻せるとして、またRNC7を買う?」
買います。
価格評価→★★★☆☆
評 価→★★★★☆
年 式→2009
実測重量 10kg(ペダルあり、サドルバッグあり、ボトルあり)